表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/17

Life is like a merody

いつものごとくサブタイトルは本編とは全く関係ありません。Key作品関連が多いのはやっぱり好きだからかな…。いろんなとこに目移りしても結局Keyに戻るんですよ。そういうもんです人生は。


――――――――――――――


定刻。

指定場所にて。


――――――――――――――


カツーン、カツーン……。僕は背中に迫る人の気配に振り返った。


「時間通り、かな?」


「そうですのう。理事長」


僕が歪に笑いかけると、似たようなモノが返ってきて不愉快になった。

嗚呼、こんなにも笑みというのは醜悪になるんだね。ある種の感慨にも似た感情を抱きながら、僕は差し出された手を見る。


「では、それを……」


「待って。それより生徒(ミハルちゃん)の居場所を教えるのが先じゃない?」


一応、聞いておこう。返事は分かってるけど。


「金が先じゃな」


「あっそ」


予想が外れなくて残念だ。

ぽいっ、とアタッシュケースを投げると、不意を突かれたのか、真田は目を見開きながら受け取る。

重さはかなりあるはずだが、落とさないところが何とも滑稽だった。


「こうも素直だと逆にあやしいのう……」


「さぁ、早く教えて。ミハルちゃんが居る場所を」


そう急かすと、


「まぁ待て、焦るな。中身を確認してだな……。ふむ。偽物ではないようじゃな」


どうやら真田は納得した様子らしい。

ニコリと、食えない笑みを浮かべると、おもむろに紙を取り出した。


「これは?」


僕が問うと、


「その地図の印の場所に生徒は寝かせてある。サーバーの支配も一時間後まで儂に何も起こらなければ解除しよう」


二つ折りの薄い紙。その紙を受け取って僕は、後ろ手に持った携帯に即座に位置座標を入力、送信する。


(頑張ってね水無月さん)


と、念じながら。


その作業の間に、


「では儂は行くからの。後始末は財団が勝手にやってくれるじゃろうからな。二度と会うことはあるまいよ」


そう言い放ち、真田は僕に背中を向けた。


――さあて。


ここからが作戦だ。主賓の登場だよ。


 


パシャっ!



その瞬間、鋭い光が僕らを包んだ。


「!」「何じゃ!?」


それは――おそらくカメラのフラッシュの光。場に緊張が走る!そして目の前に現れたのは!!





「こ、この学園で悪事を働くなんて、オ、……くっ、ア、アタイが許さんぜよ!」





おおっ。


そこには、ひとりでプ○キュアなシズクちゃん(初代ブラック)が皆の心をハートキャッチしていたのでありました。


…………。


もうこの時点で胸が一杯マックスハートです。

指示通り顔に目元の隠れる仮面を着けてくれてたけれど。……うーん。


「……何かの?このふざけた(やから)は。理事長の差し金かな?」


「いいや違うよ~?僕の知り合いにあんな真似が出来る人はいないし」


真田に、誰なのか気づかれた様子が無いのが幸いだった。

しかしここでシズクちゃんに、『思い付きで言ったら本当にやってくれたよ』って言ったら多分ガチで心臓貫手(ハートキャッチ)されるのでお口にチャック。


(ここはあくまでシラを切る!さあシズクちゃんももう一押しを!)


って意味を込めて目くばせすると、怒りからか羞恥から来る震えでプルプルしていた肩がスクッと定まった。「綾波……後でコロス……」という恐ろしい呟きも聞こえたけど気にしない!


「そ、そうぜよ!おまんら両方がアタイの敵たい!――この悪徳教師と、自己中変態大馬鹿アホクレイジーオタゲーマー理事長め!!」


おいおい。


僕だけ物凄い言われようだった。

しまいには泣くよ?僕の心は二酸化ケイ素98%と2%のガ○タリウム合金で出来てるんだからね!?

フレームだけになっても動けるようなそんなスペックはないんだからね!?


……話が逸れた。僕は前を向いて、戦場に向き直る。


「悪徳教師?何か勘違いをしとるなぁ。儂は――」


真田は探っているようだ。今の言葉に裏付けがあるのか、当てずっぽうなのか。

それに対する答えは明確だった。


「シラを切っても無駄だ……、いや無駄ぜよ!」


バン!と一枚の紙を取り出すシズクちゃん、もといキュ○ブラック。

――ここが一番の見せどころだからねシズクちゃん!あ、龍馬風な口調も僕の指示です。


「この収支報告書。これが全ての証拠ぜよ!」



――その瞬間、僕は見逃さなかった。

真田のあの柔和に造った顔が、酷く崩れるのを。



「これはどういうことかの?理事長。あの紙は」


取り繕うことなく怒りの表情を浮かべた真田がそこにいる。対して僕がすることといえば変わらない。


「一枚だけじゃなかったみたいだね。まぁコピーは常識でしょ?」


不敵に笑うこと――たとえ不確定要素(ふあん)が頭をよぎっても。だってそれが僕の“戦い方”だから。


「そうか、それが答えか?」


「答え?さあて、なんのことかな」


「サーバーも生徒も惜しくないようじゃのっ!」


っ!自棄を起こすか!?

一瞬、ひやりとしたものが背中をよぎる!


「待つぜよ!アタイの敵はおまんら両方と言っただろうが!」


シズクちゃんが珍しく声を荒げる。しかしその静止は真田には届かない。


「知れたこと!こうなった以上何枚その紙があるかわからん!この交渉はその紙が抹消されていたからこそ成り立つものじゃ。ならば……!」


懐から何かを取り出そうとする真田。


ここは――カードを切る!



「全部無くす気?真田、キミの家族のように」


「――っ!!」「……なに?」


空気が、止まった。



真田のシワのある目元は大きく見開かれ、その驚きを大いにたたえていた。



「それを……知られておるとは思いませんでしたなあ」


――だが、その“揺らぎ”も一瞬で直ぐに造られた顔に変わる。そこに僕は、何か暗い、“意地”のようなものを感じた。


学園(うち)に対しての個人情報はだいぶ改ざんしたみたいだけど、外からつつけば結構分かるさ」


「……ほっほ、そうかそうか。それは迂闊でしたなぁ」


おどけたような、そんな軽い口調の真田。老人の鎧は思ったより固い。ここはもう一つ――


「離婚の原因は仕事で家庭を顧みない姿勢による不満。……あの金は慰謝料にほとんど使ったようだし。悪かったね。遊んで使ったみたいな言い方して」


ニコリ、と笑みを足すことも忘れずに。視線を切らさずに畳み掛ける。

手持ちカード二枚目。ここで少しでも真田を揺るがしたい所なんだけど……。


「それが今、何か関係あるのかの?」


んー、駄目か。


「いーや。家庭を壊す男ってのはどいつも気にくわない野郎だと思っただけだよ」


でもこのカードはだいぶ真田を落ち着かせるには役立ったのかな?言葉を交わして多少は冷静になったのか、さっきのような自棄を起こしそうな気配は消えていた。


「…………」


そのかわり真田の表情は消えて、後は“睨みあい”だった。

――位置を確認すると、僕がいて、その前に真田。そして真田を挟むようにシズクちゃん。

人数と体力的にこちらが圧倒的に有利だけど、


“まだ”、……水無月さんからの連絡を待たないと。






そんな算段を働かせていた矢先、事態が動く。


「!うわっ!?」

「なっ!?」


いきなりだった。真田が猛然とキュアブラッ○に突進したのは!!



「あっ!?」


(まばた)きする程度の時間にそれは起こった。


なんかストファイのインドのお方を思い出すような動き。

「いやいやそれはないでしょ!」と、思わずツッコミたくなる光景。


ビリィィィィ!!


そんな音が響いて、そして次の瞬間には。


シズクちゃんの手に残ったのは紙片の端で、真田は紙の大部分を手にしていた。



「っ!真田ぁっ!」


「年寄りだからと甘くみられても困るのう」


その動きはケースの重さを感じさせないような俊敏さで、不意を完全に突かれた僕は見過ごすより他になかった。



“僕は”、だけど。



「っ!!くっそおおおお!!」


シズクちゃん、もといキ○アブラックの振り上げた足が、


バチンっっっ!

真田の、ケースを持つ手を直撃する!!


(つう)っ!」「綾波!ケースをっ!」


おお!流石、主役の活躍っぽい!


「そして僕は地味に奪取」


ケースをがっちり掴んで少し距離を取る。某愛染様と違えば間合いも意味を為すよね。


「よし!いいぞ綾波!」


シズクちゃんもこちら側に下がって完全に2対1のフォーメーションになる。


「……まったく。最初の三つ巴を装う計画、ガン無視なのね」


「もう状況が違うからそれは良いだろ?」


目元の仮面を捨てるシズクちゃん。


「それよりさっきのは何だ?『僕の知り合いにあんな格好が出来るやつはいない』、だったか?……よっぽど死に急ぎたいようだな」


「ちょ、待って!?シズクちゃん今はそれを蒸し返す時じゃ……ああもう目が据わってらっしゃる!?」


あれこんなところで絶体絶命!?朽ち果てるの?己の身を呪えばいいんですかハマーン様!?


「痴話喧嘩はそのくらいにしてもらえるかの?」


この時ばかりは真田に感謝?だった。


「ほら真田センセも怒ってるから離してくだされ~」


「あ、ああ。だが後で覚えておけよ」


手をボキボキ鳴らしてたけど、何とかシズクちゃんは離れてくれた。


寿命が延びたーっ。

なんて言ってられるのは一瞬だけだった。


「……(たばか)りおって。儂が本気で何もしないだろうとタカをくくっておるのだろう?馬鹿にするでない!」


パッと、真田が取り出したのは何やら古風な押しボタンで。


「これを押せばサーバーも、データも終わりだからな」


…………。

んー、あんまりも安直過ぎて逆に新鮮かもしれない。この学園には典型的悪役(テンプレートヒール)育成の土壌でもあるのかな?


「貴様がそれを押すはずがない。それは貴様の身を保証する唯一の武器なのだろう?だったら――」


「ああそうよな。だが裏を返せば“交渉”にはコレ一つで十分というわけよのう?」


この口振り。まるでほかに何か別の仕掛けがあるかのような言葉。……まさかとは思いたいけど。



「真田、お前ミハルちゃんに何か仕掛けたな?」


「ほっ。儂の合図で作動する仕掛けをちょっとな」


真田の手にはいつの間にか、ボタンとは別に携帯電話が握られていた。


「儂の電話一つで、あの子には一生残るような傷がつくだろうな」


ふむ……そうか。単純な悪役に見えて喰えないトコはちゃんと喰えない、ってことね。


「貴様……!いい加減にしろ!?どこまで生徒を裏切る気だ!!」


シズクちゃんの激しい怒鳴り声。

それは――


「ほっ。そうやって激昂されても困るからのう、言わなかったのだがな」


――真田には届かない。

ラストバトルようやく開始です。更新が滞っていたのは単純に忘れてた…、とかじゃなくてえと、いろいろ忙しかったからです。本当です。

次話もすぐに更新したいと思ってますのでお待ちを。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ