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imaginary after

KOTOKOさんの名曲です。前回のタイトルよりはわかる人が絶対にいると思いますが、本編の内容とは全く関係してないただの思いつきなので悪しからず。


「…………教、頭?」


あの声に聞き覚えのある水無月さんは、驚いたときに現れるお久しぶりの“あの”顔。


「あの野郎が……」


シズクちゃんは憎々しげに天井(うえ)を見つめている。


二者二様の反応をみながら僕は携帯を取りだし、ある番号へかける。


『リリリ、リリ、リリリ、リリ……』


すると、スピーカーから電子音が聞こえた。


『リリ……ピッ』


と、その音が途絶える。

……何か自分で掛けた電話が取られるところを聞くのは不思議な感覚だよね。

とか思いながら電話口を自分の耳に当てた。


『夜分遅くに申し訳ないですのぅ、理事長』


スピーカーと、電話口で微妙にズレて聞こえる言葉はそんなものだった。



「そう思うなら無駄な足掻きはしない方が良いんじゃない?真田」


『何のことやら。……なにぶん、最近物忘れが激しくてサッパリ分かりかねますなあ』


「とぼけるならもっと上手にしたら?寿命を縮めたいの?」


『おお、それは怖い。年寄りをあんまり苛めないでくだされ』


「心にも無いことを言うねぇ、古狸」


『本気で言っておるのですよ、この餓鬼』


(……ははっ)

僕は内心、笑ってしまった。この教師、前から底が読めないと思っていたら、底にこんなモノが埋まってたとは。


いつの間にか、心の中だけに留まらず口角が上がってしまっていた。




「あのやり取りでも笑ってる…!やっぱりブラックナガル復活?」

「……元から結構毒舌だからな」


二人のコメントは敢えてスルー。このまま会話を続けよう。



「で。どうする気かなー?僕にバレるまでが貴方の勝負だったはずじゃない?」


『……そう、ですな。そうなる前にカタをつけるのが理想的でしたな』


はぁ、その言い回し。やっぱり何かあるようだ。

つまらないことは“キライ”だって言ってるのに。


「虚勢は止めておいた方がいいよ」


もう黒幕としてのインパクト自体が弱いんだから。これ以上小者(こもの)フラグたててもツラいだけだし。


『ほっほっほ。これを見てもそんな言葉が吐けるかな?』




――そう、相手は『小者』。

だから一番ベタな、“そういう展開”を予想していなかったのは僕の大きなミスだった――


♪曖昧3セン……♪

ぶちっっ!!

色々ヤバイのでメールの受信音は強制介入(スペルイ○ターセプト)します。


見ると端末には写真が。


「おいおい。どこまでベタなんだよ」


そこにいたのはやっぱりな空と海と呪われし姫君(ミハルちゃん)


僕はそれを見て――


「行って」



「……何?」「え、ええ?」


眉をひそめるシズクちゃんと、明らかに狼狽する水無月さん


「教頭はたぶん職員室か放送室のどちらかに居るから。確率は7:3で職員室。別行動とらずに二人で行って」


を、

一顧だにせず、僕は指示を下す。

正確には“指示”ではなくて“お願い”だけど。


「……わかった行こう。生徒を助けるのも生徒会長(オレ)の役目だ」


おお。流石シズクちゃん、男らしい回答をありがとう。


「水無月さんは?」


「はぁ。正直意味わからないし、何がどうなってるのかもわからないし……でも私のせいでもあるんだろし……、っだああーもうっ!」


おお。何か水無月さんが大いなる宇宙意思との対話を終えた!?


「行くわ。もうやけくそよ。借り返したるわ!」


「キャラが変わってきてるけど大丈夫?」


自棄になった感もあるけど、水無月さんも了承ゲットだぜ!



「……貴様はどうするんだ?」


「んー?ちゃんと逆転の手を探す仕事はするよ?……最悪の場合、『アレ』の解放があるし」


「『アレ』?」


「あ、忘れてた。『武器』が要るときは理科室にあるから持ってって」


「まぁいい。……おい、何をしている。行くぞ?」


「え、あ、はい!」


早足で実験室から出ていくシズクちゃんの、背中を追いかけて水無月さんが部屋を出ていく。


一瞬、水無月さんがこっちを振り返った。

不安そうに揺れる瞳との刹那的な逢瀬(であい)


――微笑んで軽く手を振る。

一寸キョトンされたけど、微笑みが返ってきた――


これ死亡フラグ(→僕)?








ガラガラ…ピシャン。

そうして扉が閉まって暫くして。


「行った、かな?」


それを確認した後、携帯を取り出す。

ミュートにしてあった回線を復帰させると、

……僕の戦場に帰ってくる。


『……ほっほ。随分と長考でしたな。頭の切れる理事長らしくもない』


「真田。僕にはそれで何をしたいのかサッパリ伝わって来てないよ?」


『おお、そうでしたな。まだ“要求”を何も言っとらんかった』


すまんのう、と真田は本当にそう思っているかのようなトーンで言った。


「要求……?」


『“(かね)”ですよ』


「……ちっ」


思わず舌打ちの一つはしたくなるセリフだろう、これは。


「あれだけの金を使い込んでおいて随分と貧乏なんだねぇー。借金でもあるの?」


『今すぐ金庫からかき集めれば三桁はすぐにいくだろう。高望みはせんから安心せい』


「ふーん、じゃあなに。そのはした金持って高跳びでもする気、ってとこか」


『……餓鬼は黙って言うことを聞いておれ』


お?ようやく苛立ちを見せてきたっぽい?僕はさらに攻めに出た。


「老い先短い身で高跳びしてもねぇ。フィリピン辺りで女囲う気?それとも中南米とか?」


『口を塞いでサッさと働いたらどうかね?年寄りをそう待たせるものではないさ』


「ふうん、確かに。あんまりシニアの人と女子高生の図ってあんまり気持ちの良い絵面じゃなさそうだしね」


『……ふざけておるのか?』


「いーや全然。だって僕の大切な生徒に危害が及びそうなのに、一体全体どうしてそれを喜べるかな?」


『ほっ、これは意外だのう。まさか理事長からそんな言葉が聞けるとは!自己中心の(かがみ)だと聞いておったのにの』


「……さぁ。ここで“理事長(本当はまだ副)”なんて肩書き背負ってる分くらいは責任感を持ってるんだよ。テメエと違ってね」


『…………』


「あーあ。もう警察(ほんしょく)呼んだ方が早いかな?どう思う?」


『……ほっほ。ならばその間にここのサーバーを完全に落とさせてもらうぞ?』


「確かにそれは大変な脅しだこと」


全く。それ関係で昼間に騒動があったばかりなのに…。嗚呼、今日は確かに“厄日”だよ九十九(つくも)さん。

これもまた別の話だけど。


『交渉の余地はないぞ?やる気が無いなら……』


「おーい、そう急かさないでよ。あとどうしても解せないことがあるんだけど?」


『……なにかね?』


「真田センセイだったら、僕を脅してお金を出させなくても職員室の金庫とかなら開けられるじゃん。なのに何で?」


『ほっほっほ!』


そう聞くと、すぐにしわがれた笑いが返ってきた。


『それこそ白々しい!……知っておるのだろう?“理事長室の金庫の鍵”を?』


「…………」


あー…、そういうこと。“アレ”を開けろって、そういうことか。


『あれだけは儂も分からなくてな。恐らく数十年で相当貯まっておるだろう?』


「…………」


『だんまりかの?なら、儂にも手段というものがの……』


現金(キャッシュ)で3000万。それで満足?」



さあ……、どうだ。乗るのか?乗らないのか?


『ほっ、ほっ!それはまた太っ腹な采配よなあ!』


よし、乗った!後はもう一押し、か。


「カネを受け取ったらとっと失せて貰う」


『言われなくてもそうするさ。おお、それとあの資料だがな』


「資料……?ああ、あれか」


『データは全て移して物理的に破壊させて貰ったからの。儂を刑事的に訴訟することは不可能じゃからな』


「…………?」


あれ?


『印刷されて保存されていたものも焼かせて貰った』


あれあれ?あの紙、シズクちゃん持ってなかった?

……頭の中でシナリオを構築する。


――切るカードを一つゲット、か――


僕はニヤリと笑って、上を見上げた。


「……そう。じゃあ何分待てる?20分あれば準備は……」


『10分後に玄関。でなければサーバーは停止。そして変な動きを見せれば……出来ればやりたくないのじゃが、あの子の顔に一生残る傷がつくかのう』


「……ちっ。2、3分の遅刻は見逃してねー?」


『ほっほ。せいぜい頑張ることじゃな』


ぶち、と電話が切れた。


思考の切り換えのために息を浅く吐く。

その次の瞬間には、もう別な相手に電話をかける。

……そのコール音が聞こえる間にも、実験室を出て理事長室に向かって足を動かしている。

小脇には電話中にいじってようやくフリーズから脱した電子端末を抱え、真田の移動ルートを考える。

さらにマルチタスクで指示メールの作成、送信っ……と。


何処かの落とし神モード的なノリで廊下を進んでおります、綾波です。


「プルルルルル……プルルルっ、ピッ!」


お、電話はようやく繋がった。


「……ふぁい。こちら、あや……ふぁあああ……!!あれ……何だっけ……寝たい?」


「そうか。今から僕が言う仕事をしてくれたらいくらでも寝て良いぞ。……っていうかお前、そっちはそろそろ朝だろ」


「……カエデは良く寝て、もっとナイスバデーになるんだもん」


「知るか。あー、お前が駄目なら高遠(たかとう)にやらせてくれ。ただのデータの確認だから」


「最初からそっちにかけなよ」


「僕がアイツを嫌いなのは知ってるだろう?」


「はふん。じゃー、なんぷんでやらせればいいのー?ふふふ?」


「途中で寝るなよ?10分、と言いたいところだが5分で頼む。内容は……」


そんな風に、僕が着々と話を回していたそんな頃。実働部隊二人はというと……

テストが終わって二週間ほどお休みなので集中更新中。

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