第51話「これが俺の、いや、私の作りたい世界だ。」
整わぬなら。
整えてみせよう、ホトトギス。
次に繋がる、エンディングです!
まだまだ、没入!
光が、晴れた。
トゥオネラ国の闇は、消えていた。
百年間、湖の底に沈んでいた不快の城。その最下層に——今、青い空が、差し込んでいた。
「……終わったんやなあ」
テルメが、空を見上げながら呟いた。
トントは、翔太を抱きしめたまま、頷いた。
オーユバーラが——応えるように、輝いた。
雲の上に浮かぶ、天空の整い城。百年ぶりに、その全てが、目覚めていた。
世界に——「整い」が、戻ってきた。
———
数日後。
アルカナ魔法学校の大広間に、三国の代表が集まった。
アルカナ。トゥリ。ラハティ。
議題は、二つ。
オーユバーラを、どう世界に開放するか。
そして——サイマ湖に現れた、トゥオネラ国を、どう扱うか。
「あの城は、危険です」
ラハティの代表が、言った。
「ストレッシの負の力が、まだ残っている。封印して、冷やし続けるべきでは」
「トゥリ国が、管理を引き受けましょう」
フリギアの父——トゥリの公爵が、申し出た。
「我が国の氷と水の魔法なら、負のエネルギーを冷やし、制御できる」
「責任者は——レンに」
レンが、頷いた。
「わかりました。私が、管理します」
会議は、そう決まりかけた。
しかし——
「待ってくれ」
トントが、口を開いた。
全員が、振り返った。
———
「封印して、冷やし続ける——そんな事、続かないだろ」
トントは、立ち上がった。
「あの城を、ずっと監視して、ずっと抑え込む。
それは、新しいストレスを生む。負の連鎖だ」
「じゃあ、どうしろと」レンが聞いた。
トントは、笑った。
「リノベーションだ」
「……リノベーション?」
「あの城を——皆で遊べる場所に、作り変える」
広間が、ざわついた。
「考えてみてくれ。あの城は、地下50階まである。
深く、複雑で、入り組んでいる。下に行くほど——スリルがある」
トントの目が、輝いた。
「ダンジョンにする。でも——普通のダンジョンじゃない。逆だ」
「逆?」
「エーアイの地下エレベーターで、冒険者を一気に最下層——地下50階まで運ぶ。そこから、魔物を倒しながら、上へ、上へと這い上がっていく。最強の魔物は——地下1階。ゴールだ
この城は、階段や通路が神経の様に網の目になっている。良い意味で迷路になっている。
飽きる事はない」
「そして、この前の戦いの際に、気づいたんだが。
あの城の地下。貴重な鉱石が色々ある。。 あとは、魔素を餌として
見たことのない魔物、植物などが沸いており、我々の生活の為になる素材の宝庫になる。」
「下から、這い上がる。普通のダンジョンとは、逆をいく
それに加えて、素材集め。」
レンが、目を見開いた。
「……面白い」
「だろ?」
トントは、続けた。
「人生も、同じだ。どん底まで落ちて——そこから、一歩ずつ、這い上がる。最後に、頂上で——報われる」
「全くわからんかったわ」テルメが言う。
「俺もっすよ」ザウルが続く。
「要するに——下から登る、ワクワクの冒険施設だ」
「最初からそう言えよ!!」
———
「それだけじゃない」
トントは、さらに続けた。
「地下のダンジョンと——地上のオーユバーラを、エレベーターで繋ぐ」
「地下では、汗を流す。魔物と戦い、資源を掘り、体を動かす。ストレス発散の場所だ」
「そして——天空のオーユバーラで、整う」
トントは、天井を見上げた。
雲の上の、整い城を、思い描くように。
「働いて、整う。緊張して、緩和する。汗を流して——癒される」
「人間は、ストレスを抱え込み、そして整える。その繰り返しで、生きている。交感神経と、副交感神経の交錯。労働と、休息」
「地下で働き、地上で整う。エレベーター一本で、それが繋がる」
トントは、レンを見た。
「これが——俺の作りたかった、世界だ」
レンが、静かに——微笑んだ。
「……負の場所を、楽しい場所に」
「ああ」
トントは、頷いた。
「楽しむを、愉しむ。俺がやりたいことなんだよ」
翔太の孤独から生まれた、ストレスの城。
それが——皆の笑顔が集まる、整いの城に、生まれ変わる。
これ以上の、弔いはなかった。
「やりましょう」
レンが、言った。
「私が、責任を持って——あの城を、生まれ変わらせます」
———
計画は、動き出した。
アルカナ国が主導し、オーユバーラを世界に開放する。
役割が、決まっていった。
テルメは——ヴァンハ・テラの元で、修行を始めた。
「ウチが、オーユバーラのオーナーになるんやろ?
なら、整いの全部を、学ばなあかんからな」
ヴァンハ・テラが、静かに頷いた。
「……お前になら、任せられる」
百年間、一人で守り続けた男が——初めて、誰かに、託した。
エーアイは——スチームエレベーターを、正式に作り直した。
そして、トゥオネラ国の地下エレベーターの設計も、始めた。
「面白い構造です。下から上へ……今まで誰も、作ったことがない」
リリは——オーユバーラの厨房に立った。
「世界中から人が来るなら——最高の料理で、もてなさなきゃ」
百年分の食材庫と、世界中の食材。リリの腕は、日に日に、磨かれていった。
レンは——トゥオネラ国の管理責任者として、リノベーションの指揮を執った。
水と氷の魔法で、負のエネルギーを制御しながら。一つずつ、城を、生まれ変わらせていく。
タイカは——魔法騎士団団長として、全体の運営の責任を、引き受けた。
「そうじゃないんですよね〜、こういう大きな計画こそ、誰かが責任を取らないと。わかります?」
———
そして——ある日。
タイカが、トントの元を訪ねてきた。
「トントさん」
「なんですか」
「魔法騎士団に、入りませんか」
トントは、固まった。
「……は?」
「あなたを、魔法騎士団に招きたい。正式に」
「待ってください。私、魔力ゼロですよ?わかってます?魔法、一つも使えない」
「ええ。知ってます」
タイカが、サングラスを、外した。
「でも——あなたの力は、魔力じゃない」
「前世の知識。物事の本質を見抜く目。そして——人の心を、整える力」
「それは、どんな魔法よりも——強い」
「そうじゃないんですよね〜、魔力があれば強い、なんて。違うんですよ」
トントは、しばらく——黙っていた。
そして、小さく、笑った。
「……魔力ゼロの、魔法騎士団員か」
「前代未聞ですよ。わかります?」
「ああ。面白い」
トントは、手を、差し出した。
「やってやる」
———
オーユバーラが、世界に開放される日が、近づいていた。
しかし——一つ、問題が残っていた。
「困りましたわ」
フリギアが、ため息をついた。
「私、オーユバーラがすっかり気に入ってしまって。いつでも、入りに来たいの。でも——」
「噴石で飛んでくるのは、無理ですよね」
レンが、頷いた。
「私も、同じ。トゥオネラ国の管理で、オーユバーラとの行き来が、多くなる。でも、毎回、あんな大変な思いをして来るのは——」
エーアイのスチームエレベーターは、確かにある。
だが、それは、上下に移動する物。
問題は——そこまで、どうやって早く来るか、だった。
三国は、高い山脈で、隔てられている。
陸路では、何日もかかる。
「……湖か」
トントが、呟いた。
全員が、振り返った。
「サイマ湖。この湖は、海にも繋がっている。面積は——俺の前世の国、日本の国土と、同じくらいある」
「それが、どうしたんや?」テルメが聞く。
「三国は、山脈で隔てられている。でも——湖は、全部、繋がっている。つまり、一番の交通路は——湖だ」
トントの目が、輝いた。
「船だ。それも、でかいやつ」
「日本には、フェリーって船があった。何百人もの人と、車や貨物を、一度に運べる。あれがあれば——人も、物も、短期間で、三国を行き来できる」
「魔導船を、作るんだ」
エーアイが、目を輝かせた。
「……魔導船。面白いです。精霊の力で動かせば、煙も出さない。クリーンな船になります」
「やろう」
トントは、笑った。
「エーアイ、一緒に開発するぞ」
———
その夜。
トントは、一人、オーユバーラの外気浴スペースに、座っていた。
雲の上。
眼下には、サイマ湖が、月明かりに光っていた。
風が、優しく、吹いていた。
「……不思議なもんだな」
トントは、呟いた。
脳外科医だった、三杉整。
慢心して、一人の少年を、救えなかった男。
家族を失い、後悔を抱えて、生きてきた男。
それが——この世界に、転生した。
魔力ゼロの、ちっぽけな存在として。
でも——
今、ここにいる。
仲間がいる。
救えなかったはずの翔太を、取り戻した。
世界に、整いを、取り戻した。
「……もう、逃げない」
トントは、立ち上がった。
月明かりの中で。
「異世界に転生したんだ。だったら——とことん、やってやる」
「これから俺は——いや」
トントは、空を見上げた。
「私は。前世の知識を、全部使って。この世界を、豊かにする」
「そして——楽しめる世界に。とことん——愉しめる世界に、してやる」
風が、答えた。
オーユバーラの、整いの風が。
新しい物語の、始まりを告げるように。
———
了——第一部「異世界サウナ夢想!!??」完結
物語は、第二部へ続く——
最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。
エンディングです。
が、まだまだ続きます!
そして。
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次回もぜひお楽しみに。




