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無能と追放された俺、実は全スキル所持の最強でした ~気づいてないけど周りが勝手に国を作ってくる~  作者: 南蛇井


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第35話 接続

「……ここ、ですか」


低く落ち着いた声が、村に響いた。


朝。


仮拠点となったこの場所に、一台の荷車が止まる。


その傍らに立つのは――


マルクだった。


「お久しぶりです」


リリアが一歩前に出る。


「どうしてここに?」


「ええ、少し気になる話を聞きまして」


マルクは穏やかに微笑む。


その視線は、すでに村全体を捉えていた。


「“荒廃していた村が、一日で機能を取り戻した”」


「そんな話が流れていましてね」


「……早すぎるのよ、その広まり」


カレンが小さく呟く。


「情報は早い方が価値になりますので」


マルクは肩をすくめる。


「まあ、見れば納得です」


ゆっくりと歩き出す。


井戸を覗き、畑を確認し、建物を見上げる。


「……なるほど」


短く呟く。


だが、その目は明らかに変わっていた。


「何がですか?」


ミアが気になって聞く。


「価値です」


マルクは即答した。


「ここは、“ただの村”ではありません」


「……」


カレンが少しだけ警戒する。


「まず、水源が安定している」


「土地も回復している」


「そして――」


一瞬だけ、レインを見る。


「外的要因が、完全に排除されている」


「……」


誰も否定しない。


「この三つが揃う場所は、そう多くありません」


マルクは静かに言う。


「つまり?」


カレンが腕を組む。


「拠点として、非常に優秀です」


その一言で、空気が少し変わる。


「やっぱりそうですよね!」


ミアが嬉しそうに言う。


「はい」


マルクは頷く。


「むしろ、想像以上です」


「でも、まだ仮拠点ですし」


リリアが現実的に言う。


「継続運用するかは検討中で――」


「いえ」


マルクは首を振った。


「ここ、拠点にしませんか?」


静かだが、はっきりとした提案。


「……は?」


カレンが聞き返す。


「本格的な拠点化を提案します」


マルクは続ける。


「流通の拠点としても、非常に優秀です」


「流通……」


リリアが反応する。


「はい」


マルクは頷く。


「すでにあなた方の素材は、高い価値を持っています」


「それをここで集約し、管理し、流す」


「……」


リリアが考え込む。


「中継地点としても機能しますし」


「新たな人材も呼び込める」


「何より――」


「“あなた方の基盤”になります」


その言葉は、重かった。


「基盤……」


ミアが小さく繰り返す。


「ええ」


マルクは微笑む。


「拠点があることで、活動の幅は大きく広がります」


「……」


カレンは腕を組んだまま、黙っている。


(確かに、悪くない)


そう思っている自分がいる。


「デメリットは?」


短く聞く。


「初期投資と、人手です」


マルクは即答する。


「ですが、それは――」


「解決可能です」


「……」


カレンがレインを見る。


「どうします?」


「いいと思いますよ」


レインはあっさり言った。


「……軽いわね」


「使えそうですし」


本気でそれだけだった。


「私は賛成です」


リリアが頷く。


「長期的に見て、メリットが大きい」


「もちろんです!」


ミアは即答。


残るは、一人。


「……はぁ」


カレンがため息をつく。


「反対する理由がないのが一番腹立つわ」


そして。


「やるなら、ちゃんとやるわよ」


その言葉で、決まった。


「ありがとうございます」


マルクが深く頷く。


「では」


その目が、わずかに鋭くなる。


「本格的に、“回していきましょう”」

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