第22話 いつもの時間
「……おいしいです!」
ミアが目を輝かせながら言った。
手には串焼き。
湯気の立つ肉にかぶりついている。
「本当によく食べますね」
リリアがくすっと笑う。
「だって、こんなにちゃんとしたご飯久しぶりで……!」
ミアはもぐもぐしながら答える。
頬が少し膨らんでいる。
「普段はどうしてたの?」
カレンが聞く。
「えっと……失敗ばっかりで、依頼あんまり成功しなくて……」
「でしょうね」
即答だった。
「うぅ……」
しゅんとするミア。
だが、すぐに復活する。
「でも、今は大丈夫です!」
ちらっとレインを見る。
「いますから!」
完全に依存している。
「そういえば」
レインが串焼きを見ながら言う。
「これ、どこで買ったんですか?」
「さっきの屋台ですよ」
リリアが答える。
「評判がいいらしくて」
「なるほど」
レインは一口食べて、
「確かにおいしいですね」
と頷いた。
「……平和ね」
カレンがぽつりと呟く。
ギルドの隅の席。
昼時で少し賑やかだが、どこか落ち着いた空気。
戦闘の緊張とは無縁の時間。
「いいことじゃないですか」
リリアが微笑む。
「常に危険だと疲れますし」
「それはそうだけど……」
カレンは少しだけ言葉を濁す。
(こんなに気を抜いていいのかしら)
そんなことを思ってしまう自分に、少し驚いていた。
「次の依頼、どうします?」
レインが自然に話題を変える。
「今日は軽めでいいんじゃないですか?」
リリアが提案する。
「連戦も避けたいですし」
「賛成です!」
ミアが元気よく手を挙げる。
「私、まだ練習したいので!」
「なら決まりね」
カレンも頷く。
「中級以下で、数をこなす感じでいきましょう」
「分かりました」
掲示板の前。
四人で依頼を見ているだけなのに、妙に目立つ。
「……あれ、例のパーティだよな」
「カレンと組んでるやつ」
「あと一人増えてる……」
ひそひそ声が聞こえる。
だが、もう気にする者はいない。
「これとかどうですか?」
リリアが一枚を指差す。
「素材採取と、軽い討伐ですね」
「いいと思います」
レインが頷く。
「危なくなさそうですし」
「それでいいです!」
ミアも即賛成。
「決まりね」
カレンが依頼書を取る。
動きがスムーズだ。
森へ向かう道中。
「ねえねえ!」
ミアがまた話しかける。
「魔法、見てもらってもいいですか!?」
「いいですよ」
「やったー!」
テンションが高い。
「まずは基本からね」
リリアが横から補足する。
「無理に大きい魔法を使おうとしないこと」
「はい!」
素直な返事。
「……」
カレンはその様子を少し後ろから見ていた。
(悪くない)
自然に役割が分かれている。
前衛、中央、後方。
そして――
「レインさん、これでいいですか?」
「いいと思います」
中心にいる存在。
全体を崩さない軸。
(この形、安定してる)
認めざるを得ない。
軽い魔物が現れる。
「任せなさい」
カレンが前に出る。
一閃。
それだけで、終わる。
「お見事です」
リリアが言う。
「まあ、この程度ならね」
少しだけ得意げだ。
「じゃあ次、私やっていいですか!?」
ミアが前に出る。
「気をつけてくださいね」
リリアがフォローに入る。
「はい!」
小さな火球。
今度は、安定している。
魔物に命中。
「やった!」
「いいですね」
レインが普通に褒める。
「えへへ……」
嬉しそうに笑うミア。
「……本当に、普通に回るのね」
カレンがぽつりと呟く。
無理がない。
崩れない。
「そうですね」
リリアが頷く。
「いいバランスです」
依頼は、あっさり終わった。
危険もなく、問題もなく。
ただ淡々と、しかし心地よく。
「なんか……楽しいですね!」
ミアが笑う。
それがすべてを表していた。
「そうですね」
リリアも微笑む。
「悪くないわね」
カレンも小さく同意する。
「よかったです」
レインは、いつも通りに言った。




