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『帝国魔導特務録』  作者: 夜櫻 雅織
~ヴォルカ特務官と神代の怨嗟~

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第29話

 ……良し。


「……じゃあ、呼ぶから。」

「その前に。」

「……?」

「……儀式の事、もう少し詳しく話せ。今からお前は儀式の工程として何をして、その結果何が起きて、どういう風になる?」


 元々は全部自分で済ませる予定が、ノア達が半ば食い込むように。決して無視など許さないと言わんばかりにどんどん踏み込んできたのもあり、1時間程度かかる予定が。魔力の大半を使う予定が、まるで魔力も使わず。まるで30分も掛からずに準備が済んでしまった。


 ……夜、間に合わないと思ったのに。


 それだけでも凄い事なのに、未だ彼らは首を突っ込むらしい。イリスが楽な分、彼らの方が疲れているはずなのに。……そこまでする道理なんて、何処にもないはずなのに。


「……そこの魔法陣の真ん中で、私が血を流す。」

「初手からやばいのよね。」

「……誰の血でも良いなら喜んで代わるのに。」

「……………………おう、それで?」

「直ぐ、この装置が起動して、地上で暴れてる神様の魂が……ここに引っ張られる。」

「引っ張られる? あんな大きいのが?」

「……イリス嬢、それじゃあ分からん。どう引っ張られるんや?」

「……物理的に? 引っ張られて……多分、抵抗して階段ズタズタにされる。」

「……ほんまに引っ張られるみたいやな。」

「で、その後は?」

「この装置……魂だけ通すから、そのまま呑み込まれる。」

「……まぁ、言いたい事はあるがとりあえず分かった。次は?」

「次は……。」


 そっと、洋服越しに首へ触れて……あれが。セヴェリウスに渡された笛が、そこにない。

 神様なんて物を呼び出す為の装置に、神様を殺す為の装置。それについては一切疑わないイリスだが、ああもアルドリックとセヴェリウスに言われたのもあって……流石に、その約束を違えるつもりはなかったらしい。


 何で……!!


「……!!?」

「イリス?」

「どうかしたの? 探し物?」

「ふ、笛、セヴェリウスから貰った笛、何処に」

「ここです。」

「…………返して。」

「イリス先輩、貴方はこの笛を吹くという行為にどれだけの何の力が持っていかれるか、把握されてますか?」

「知らない、でも少なくとも魔力は持ってかれない。意識朦朧としてたって、笛ぐらい吹ける。……返して。」

「なら、俺が吹いても大丈夫だと思います。一応、《黎閃(アイゼンバーン)》でシュタール主任にも確認しました。」

「……リックが?」

「はい。……なのでイリス先輩、別にイリス先輩が全部背負わなくたって良いんですよ。」


 ……。


「……なら、とりあえず分かった。」

「その後は?」

「…………分かんない。私、その笛……よく分かってないから。」

「成程な。なら聞き方を変える。元々はどういう予定だ?」

「私が持ってきた空母の燃料……全部、水銀に変えといたからそれを……流して溺死させる予定だった。でも、量足らなくて……どうしようと思ってたら、笛吹けって言われた。」

「じゃあ一番の謎はこの笛って事だね。責任重大だよ、ノア。」

「……俺、流石にここから水銀が出てくるとは思えないんですけど。」

「出たらむしろ怖いわよ。」

「……出すというよりは、何かを呼び出すもんなんとちゃうか?」

「セヴェリウス、水銀の神様って言ってた。」

「水銀の神様ぁ?」

「……僕、あんまり人型知的生命体の分かってまだまだ殆ど分かってないけど、そんなにぽんぽん神様出てきて胡散臭くならないの?」

「エリクス、元々神ってのは曖昧なんだよ。特に人型知的生命体の神はな。」

「へぇ……。娯楽なんだね。」

「……まぁ、割と。」

「そこ、夢のない話しない!」

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