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『帝国魔導特務録』  作者: 夜櫻 雅織
~ヴォルカ特務官と違法種族転化~

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第14話

 ……。


「……アルヴェルト。」

「はい。どうされました?」

「…………良いよ、前歩いて。」

「え、良いんですか? じゃあ……前、失礼しますね。」

「……ん。」


 背後から、前に移動するノア。やはりノアは前に立つと突然気配が薄くなる。これも……自信のなさの表れなのだろうか。人の後ろに立っている時はまだ分かり易いのに、前に立つと突然気配が薄くなるのは……まるで、自分の背中は他人に見せられる物じゃないから何処かへ消えてしまいたいと、そう言っているようにも聴こえる。

 それを証明するように、目の前のノアの気配はかなり薄い。ノア自身も前に集中しているのか、イリスを護る為に少しでも早く脅威を見つけ出そうとしているのか、脅威を掴まんとする気配の霧散の仕方はかなりの手練れが。これがアマチュアに出来るような物ではない。


 ぴ


「……ヨハン。」

≪……? おう、ここに居るけど……どうした。何か元気ないな、大丈夫か? 気持ち悪い物……って言ってもイリスって結構グロイの大丈夫だもんな。あの意外と使える奴が余計な事したのか? 悪い、今……イリスが居る場所が見えてなくてさ。そこ、監視カメラないから……。≫

「……ヨハンは、自分を天才だと思う?」

≪何だよ、藪から棒に……。……別に、かな。≫

「別に……?」

≪うん、別に。何と言うか、天才って言っても上には上が居る訳だし。ほら、エリクスみたいにでたらめ生物も居ればさ。≫

「……ぅん。」

≪主任みたいなぶっ飛んだ奴も居る訳だろ?≫

「……ぅん。」

≪だから……何と言うか、あんまり天才って意識すると疲れる気はする。まぁ別にイリスがそう思われたいんだったらそうするけど、俺は上には上が居るって知ってるし、俺は俺でおかしいのも知ってるし。≫

「ぅん。」

≪いや、そこは否定しろよ。……まぁけど、何だろな。結局は、群れるのが苦手でかつぶっ飛んでる奴を天才って言うんだと思う。≫

「群れるのが苦手で……ぶっ飛んでる奴。」

≪そ。でも、結局それってさ。本当に独りが好きなんじゃなくて、自分と普通に……特に気負わず、油断して会話出来る奴が居ないって……理解者が居ないって諦めてるだけで、本当は群れたいんだよ。実際、俺だってそうだったし。元々は1人で居るの方が気楽だったけどさ、特務官になって……お前らに会って。今じゃああれだけ不気味がってたこの“黑棺(ブラックボックス)”が俺の家だ。ないと困るし、しょ~じき急になくなったりでもしたら発狂すると思う。色々大事なもんも置いてあるし、ここ以上に設備整ってて色々楽な所もねぇし。≫

「……権力に妨害されない。」

≪まぁ、俺ら的にはそこが一番強ぇよな。……それで言うなら、多分自分の邪魔を一切されない環境ってのが天才が伸びる場所で、反対に常に邪魔されて苦しんできた奴は天才になり易いんだと思う。それぐらい努力しないと、本当に欲しい物が手に入らないから死ぬ気で努力する。結果、気付いたら何かを極めてて、別に欲しくないけどそいつにしかない武器が手に入る。それを、才能と呼ぶ。……決してそれを努力って認めない。もしそれを努力だって認めてしまったら、自分で自分に同情して、自分で自分を慰めてるような……そんな、惨めな奴に成り下がったような気がして辛くなる。だから、少なくとも俺は自分自身が持ってるこれを……努力だとは思わない。俺は、何かに選ばれたんだ。きっとそう。何かに同情されたんじゃない、よく分からない上に何処から見てんのかも分からなければ、そもそもとして存在してるのかも分かんねぇ神様とやらに同情された訳でもない。……これは、何かの条件下で俺が勝ち取った物なんだ。……俺は、自分の才能に関してはそう思う。≫

「……それが、ヨハンの才能と努力の定義?」

≪そ。これが俺の才能と努力の定義。……俺はどうしようもなくここが心地良くて、毎日が楽しくて仕方ないのさ。お前らと一緒に居るのが楽しくて、何にも邪魔されないこの自由な環境が何かの罠だとしてもそこに溺れていたいのさ。≫

「…………才能に選ばれるって、何なんだろう。」

≪…………さぁ、何なんだろうな。そればっかりは俺も分かんね。でもきっと、存在している限りは必ず説明が就けられる事だ。……ただ、今じゃないだけで。≫

「……。」

≪少なくとも、そう思う方がまだ救われてる気がするだろ?≫

「……そう、だね。多分……きっとそうだ。」


 まだ、何か重い物が心の中に溜まっている気がする。それでもそれを吐き出すのは何か違って、そしてそれを呑み込むのも何か違う。……きっと、これはまだ呑み込む為に噛み砕けていないという事なんだろう。そして、決して手放してはならないと何か直感的な物が感じ取っている物なんだろう。

 そうでなければ。……そう思わなければ何かを失うような気がして、敢えてここでこの話題の事は……忘れる事にした。

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