ディラン様そっくりな赤ちゃんが産まれました
私の妊娠が分かって以降、ディラン様の過保護が再発してしまった。ただ、お義母様・お母様・王妃様・イザベラ・さらにメイドたちまでもが、私を閉じ込めようとするディラン様を根気強く説得してくれたお陰で、比較的平和な生活を送っている。
それでもやっぱり心配なディラン様によって、ディラン様が仕事で留守の間は通信機を持たされている。さらに部屋から出る時はメイドに通信型の映像器具を持たせて、常に私の行動を把握できる様にする徹底ぶりだ。もちろん、私の部屋にも映像型の器具が取り付けられている。
少しでも私がおかしな行動をすると、すぐに通信機で連絡が入り、ディラン様から注意を受けるのだ。
最初はずっと見られているのが嫌だったが、段々と慣れて来た。それに屋敷内と庭までなら特に行動制限はされていない為、比較的自由に過ごせるのも有難い。
ちなみにディラン様は、私の妊娠が分かってから1ヶ月間、私の側にずっといてくれた。さすがに王太子殿下が押しかけて来て、ディラン様を連れて行ってしまってからは、週に3回だけ王宮で仕事をする生活に変わったのだが…
公爵家で仕事をする時は、なぜか私の部屋に机を置いてそこで仕事をしている事が多いのだ。
「アンネリカが側に居ると、仕事がはかどるからね」
そう言って、私を監視しつつ仕事をしている。もちろん、私の散歩の時間には一緒に付いて来る。どう見ても、仕事がはかどっている様には見えないのだが…
そんな生活を送っているうちに、気づけば臨月を迎えていた。臨月に入ってからは、いつ産まれても対応できるように、ずっと私の部屋で仕事をしている。と言うより、食事なども全て私の部屋で行なうのだ。唯一寝る時だけ、夫婦の寝室に移動する。
そのため臨月に入ってからは、ずっとディラン様と一緒にいる状況が続いている。
ただやはり仕事が上手く回らないのか、王太子殿下が定期的に公爵家に訪ねてきている。ちなみにメルダシア様も最近妊娠が分かったとの事で、王太子殿下も出来るだけ王宮に居たいらしく、いつもディラン様に文句を言っているが、無視している様だ。
「ディラン様、まだ産れそうにありませんので、王宮でお仕事をされた方がよろしいのでは?」
そう伝えたのだが、
「もし俺が留守の間に、アンネリカが産気づいたらどうするんだ!とにかく俺の仕事の事は、心配しなくてもいい!そもそも、これは全部王太子の仕事なんだ。それを俺が手伝ってやっているだけなんだよ!本当にあいつは、人に仕事を押し付ける天才なんだよ」
そう言って、私のいう事などまるで聞いてくれない。まあディラン様がそう言うのであれば、私がこれ以上口出しする事は出来ないのだが。
今日もディラン様が仕事をしている横で、大人しく本を読んでいると、あら?何だがお腹が痛い気がする。でも、しばらくすると落ち着いて行った。気のせいだったのかしら?
その後も何度も痛みが来ては治まっていく。もしかして、これは?でもまだ間隔も長いし、痛みも強くない。この時点でディラン様に話しても、きっと大騒ぎするだけよね。しばらく様子を見ましょう。
結局しばらく様子を見ているうちに、夜になってしまった。段々痛みが強くなり、間隔も短くなってきた。さすがにこれはマズいわね。
ほら、また痛みが来た。それも今回はかなり強い。痛みでうずくまっていると、ディラン様が飛んできた。
「アンネリカ、どうしたんだい?お腹が痛いのかい?おい、誰かいないか?」
ディラン様の声を聞きつけたメイドが飛んできた。
「アンネリカが苦しんでいる。早く医者を呼べ!」
ディラン様がすぐにメイドに指示を出した。その時、スーッと痛みが消えた。
「アンネリカ、大丈夫か?」
「ええ、大丈夫ですわ。どうやら陣痛が来ている様です」
「それは本当か?もうすぐこの子に会えるのか!楽しみだな」
私のお腹をさすり、嬉しそうに微笑むディラン様。
しばらくすると先生がやって来た。初産という事で、多分産れるのは早くて明け方だろうとの事。
その後、一気に痛みが強くなった。痛みでもがき苦しむ私を見て、ディラン様が真っ青な顔をしてウロウロしている。はっきり言って目障りだ!
「若旦那様、若奥様の手でも握って差し上げては?」
見かねたメイドがディラン様にそう伝える。すると、大急ぎで私の手を握るディラン様。正直、痛すぎてそれどころではない。
そして先生の言った通り、明け方元気な赤ちゃんを出産したのだった。
「おめでとうございます、元気な女の赤ちゃんですよ」
私の隣に寝かされた産まれたばかりの赤ちゃん。金髪の髪に青い瞳をしている。顔もディラン様によく似ている気がする。うん、完全にディラン様似の様だ。
「アンネリカ、よく頑張ったね。それにしても、俺にそっくりな気がするのだが…」
苦笑いしながら、産まれたばかりの子供を抱っこするディラン様。
「本当に、ディラン様にそっくりですね。きっと物凄く美人になりますよ。将来が楽しみだわ。それで、この子の名前はどうするおつもりですか?」
「そうだね、名前はアリスにしようと思っているんだが、どうかな?」
「アリス、素敵な名前ですわ」
その時だった。
「アンネリカちゃん、無事子供が産まれたのですって」
やって来たのは義両親だ。どうやら報告を聞いて、駆け付けてくれたらしい。
「父上、母上、今産まれたばかりなのですよ?アンネリカも疲れているんだ!少しは考えて行動して下さい!」
すかさず抗議の声を上げるディラン様。
「私は大丈夫です。それよりも、アリスを抱っこしてあげてください」
「ごめんなさいね、アンネリカちゃん。どうしても早く会いたくて来ちゃった。この子、アリスと言うのね。それにしても、ディランにそっくりね」
お義母様がアリスを嬉しそうに抱っこしている。
「私にも抱かせてくれ。確かにディランの産まれた頃にそっくりだ。でも、女の子なんだよね」
そう言ってクスクス笑いながら、お義父様も抱っこしていた。そう言えば、お義父様がこんなにも穏やかな表情をしているのって、初めてみたわ。
しばらくアリスを抱っこした後は、足早に帰って行ったお義父様とお義母様。
どうやら私に気を使ってくれている様だ。そこまで気を使ってもらわなくても大丈夫なのだが…
「やっと親子3人になったね。本当にうちの両親が図々しくてごめんね、アンネリカ」
「いいえ、私は全然構いませんわ」
「アンネリカ、元気な赤ちゃんを産んでくれて本当にありがとう。これからしばらく大変になるだろうが、俺も1ヶ月は休みを貰っているから、2人で頑張って育てて行こうね」
ディラン様、1ヶ月も休みを貰ったのね…
でも、こうやって一番に家族の事を考えてくれるディラン様は、私にとって最高の旦那様だ。ディラン様、これからも親子3人仲良く暮らしましょうね。




