私にも王子様が現れました【後編】~メルダシア視点~
お姉様が乱入してきた翌日、父親でもある陛下がお姉様を連れて謝罪に来たが、マレリアが追い返してくれた。
「万が一またメルダシア様に危害を加えられたら大変ですからね」
そう言ってにっこり笑っていた。その日から、私はネロを連れて中庭を散歩する様になった。時折物凄い形相で睨んでいるお兄様やお姉様と会う事もあったが、護衛騎士様やマレリアたちメイドが居てくれるので、特に何かして来る事はない。
そんな日々が数日続いた。
優しい騎士様やマレリアたちメイドにすっかり懐いたネロ。よく尻尾を振って飛びついている。
私もメイドや騎士様達がいる生活にも少しずつ慣れてきた。今日は朝からずっと読書をしている。足元では、メイドたちに散歩に連れて行って貰ったネロが、眠っていた。
その時だった。
「メルダシア、ネロ、遅くなってすまなかった!さあ、アイランド王国に帰ろう」
そう言って部屋に入ってきたのは、グレイソン様だ。アイランド王国に帰ってから、まだ数日しかたっていない。まさかこんなに早く戻ってきて下さるなんて!
嬉しくてグレイソン様に抱き着いた。久しぶりに感じる、グレイソン様の温もり。やっぱりこの温もりが一番落ち着くわ。
そう思っていたのだが、ネロが自分も抱っこして欲しいと吠えたので、私から離れてネロを抱きかかえるグレイソン様。
ネロは女の子。きっと美しくて優しいグレイソン様が大好きなのだろう。身近に最強のライバルがいたなんてね。そう思ったら、自然と笑みがこぼれた。
「それじゃあ、早速行こう」
ネロを抱っこしたグレイソン様に手を引かれ、王宮の門へと向かう。門では陛下や王妃様、さらにお兄様やお姉様たちも待っていた。正直、会いたくない面子が揃っている。グレイソン様が挨拶をして、そのまま馬車に乗り込もうとしたのだが…
なぜかお姉様の1人が、グレイソン様にしがみつき、自分を妻にして欲しいと訴えた。そう、先日私の部屋に乗り込んで来たお姉様だ。
どうしよう…
グレイソン様、どう答えるのかしら!一瞬不安になったものの
「申し訳ないが、君みたいに化粧が濃くてオバケみたいな女性、苦手なんだよね。香水の匂いもきついし、ネロも嫌がっているから離れてくれるかな。はっきり言って、迷惑なんだよ!国王陛下、これは一体どういうつもりですか?私はメルダシアを欲しいと言ったのですが?こんな事をされるのでしたら、こちらも考えないといけませんね」
そうはっきりと言ってくれたグレイソン様。さすがのお父様もこれには大慌て。お姉様を怒鳴りつけている。
それにしても“化粧が濃くてオバケみたいな女性”だなんて、グレイソン様ったら!
笑ってはいけないと思っても、つい笑いが込み上げてくるのを必死にこらえた。最後にトラブルは起きたものの、なんとか馬車に乗り込み、そのまま船に乗ってアイランド王国へと向かった。
初めて乗る船はとても快適で、ほとんど揺れる事が無かった。グレイソン様と食事をした後は、各自部屋へと向かった。そう言えば、ネロが居ないわ。心配になって部屋の外に出ると、グレイソン様の部屋に嬉しそうに入って行くネロの姿が…
ネロったら、1人だけグレイソン様と一緒に寝るつもりなのね。羨ましいわ!仕方ない、今日は1人で寝よう。そう思い、早めにベッドに入った。
明日はいよいよグレイソン様のご両親に会うのね。一応歓迎はして頂いている様だけれど、本当に私の様な人間を受け入れてくれるかしら?
不安を抱えつつ、眠りに付いた。
翌朝
まだ少し早いが、目が覚めたのでそのまま起きる事にした。いよいよ今日アイランド王国に着くと思うと、どうしても落ち着かない。
部屋をウロウロしていると
コンコン
「失礼します。あら、もう起きていらしたのですね」
そう言って部屋に入ってきたのは、マレリアだ。
「ええ、なんだか緊張して、早く目が覚めてしまったの」
「そうですか。陛下も王妃様も気さくな方なので、緊張しなくても大丈夫ですよ。さあ、早速お着替えを済ませましょう」
そう言って、着替えさせてくれるマレリア。それにしても今日の服は、いつも以上にゴージャスね。宝石を散りばめた緑色のドレス。どうやらグレイソン様の瞳の色に合わせてあるようだ。
さらに髪もハーフアップに結んでもらった。
「さあ、もうすぐアイランド王国に到着いたしますから、早めに朝食を済ましてしまいましょう」
マレリアに連れられ、食堂へと向かった。まだグレイソン様は来ていないので、そのまま待機する事に。しばらく待っていると、グレイソン様がやって来た。
今日も素敵なグレイソン様。やっぱりカッコいいわ。そう思いながら、2人で食事を済ませた。そして、いよいよグレイソン様にエスコートされ、船を降りた。馬車に乗り、王都を目指す。
王都まで約3時間かかると聞いていたが、どの街もとにかく整備が行き届いている。さすが大国、アイランド王国ね。こんな立派な国の王太子様の婚約者だなんて、私に務まるのかしら?
そんな不安を抱いていると、どうやら王都に入った様だ。さらに街は発展しており、あちこちにお店が立ち並んでいる。しばらく進むと、王宮が見えて来た。いよいよね。緊張がピークを迎える。
「メルダシア、あそこで待っているのが僕の母上で王妃だよ。本当にあの人は、何を考えているのだか…」
そう言って苦笑いをしたグレイソン様。門の方を見ると、遠くから見ても分かるくらい美しい金髪の髪の女性がこちらに向かって手を振っていた。グレイソン様によく似た、女神の様に美しい女性だ。こんな美しい女性、初めて見たわ。
私達の馬車が近づくにつれて、さらに大きく手を振ってくれる王妃様。そして、馬車が門の前に着いた。
「メルダシア、面倒なのが居るが仕方ない。降りようか」
ため息を付きながらそう言ったグレイソン様にエスコートされ、ゆっくり馬車を降りた。すると、物凄い勢いで近づいて来た王妃様。
「あなたがメルダシアちゃんね。本当に可愛らしい子ね。グレイソンが惚れるのも無理はないわ。さあ、疲れたでしょう?王宮の中に入りましょう」
そう言って私の手を取り、王宮内へと歩き始めた。どうやら、グレイソン様の言っていた通り、歓迎されている様だ。よかったわ!
ただ私を勝手に連れて行こうとした王妃様が気に入らなかったグレイソン様によって、すぐに王妃様とは引き離されてしまったが…
そのまま3人で王宮内に入った。それにしても、王宮内もすごく立派だわ。あまりキョロキョロするのは失礼と思いつつも、つい見てしまう。
「ここよ、さあ入って」
王妃様に案内されゆっくり部屋に入った。そこには、グレイソン様のお父様と思われる男性が待っていた。
こちらも金色の髪のとてもカッコいい男性だ。なるほど、美男美女から生まれたグレイソン様は、当然の様に美しいと言う訳ね。
自己紹介をした後は、終始和やかな空気が流れた。途中グレイソン様がネロを男の子だと勘違いしていた事で、ネロが拗ねてしまうと言ったハプニングはあったが…
それにしても陛下も王妃様も本当に穏やかで優しい人だわ。私の事も歓迎してくれているし!
こんな事私の様な者が言うと図々しかもしれないけれど、この人たちとなら本当の家族になれる気がする。
お母様が言った通り、私にも王子様が現れたわ。これから大変な事も多いかもしれないけれど、どんな苦労もグレイソン様となら乗り越えられる気がする。
その為にも、どんな努力も惜しまないつもりよ。優しいグレイソンの家族に囲まれながら、そう決意したメルダシアであった。
メルダシア視点、少し長くなってしまいました(;'∀')
今後は、もう少しメルダシアやグレイソンのお話を書こうか、主人公でもあるアンネリカ達を書こうか、まだ考え中です。
引き続き、どうぞよろしくお願いしますm(__)m




