アイランド王国でメルダシアとの生活が始まった~グレイソン視点~
「メルダシア、アイランド王国に着くのは明日の朝だよ。さあ、中に入って夕ご飯を食べよう」
「はい、それにしてもこの船。あまり揺れないのですね」
「ああ、極力揺れない様に設計されているからね。でも、もし気持ち悪くなったら遠慮せずに行ってね。薬も準備してあるから」
「はい、ありがとうございます。グレイソン様」
万が一メルダシアが船酔いしたら可哀そうだ。しっかり見ておかないと。
2人で食事を食べ、今日は早めに休む事にした。
本当はメルダシアと同じ部屋が良かったのだが、婚前前に同じ部屋はいけません!と執事に言われ、仕方なく別々の部屋で眠る事にした。
せっかくメルダシアを手に入れたのに、別々で寝るなんて…そう思っていると
「キャンキャン」
ガリガリ
ドアの外からネロの鳴き声と、ドアをひっかく音が聞こえた。
ドアを開けると、ネロが飛びついて来た。
「何だお前、僕と一緒に寝たいのか?」
そう言って抱っこすると、嬉しそうに顔を舐めて来る。そのままベッドの中にネロを入れると、丸まって大人しくなった。
こいつは本当に賢いな。ネロを撫でながら、僕も眠りに付いた。
翌朝
う~ん、なんかくすぐったいな。
そう思い、ゆっくり目を開けると、ネロが僕の顔を舐めていた。
「ネロ、おはよう。なんだ、お腹がすいたのか?」
「キャンキャンキャン」
僕の問いかけに吠えて返事をするネロ。しっぽを振って飛び回っているので、どうやら遊んで欲しい様だ。
しばらくネロと遊んでいると
コンコン
「殿下、そろそろアイランド王国に到着いたします。急いで朝食をお召し上がりください。メルダシア様も食堂でお待ちですよ」
「わかった、すぐに行くよ」
急いで身支度を整え、食堂へと向かった。ちなみにネロは、執事に尻尾を振って飛びついていた。どうやら僕の執事の事も気に入っている様で、よく抱っこをせがんでいる。
「メルダシア、おはよう。待たせちゃったかな。ごめんね」
「グレイソン様、おはようございます。私も今来たところですよ」
そう言ってにっこり微笑むメルダシア。朝から癒される!2人で朝食を急いで食べ、船から降りた。
「殿下、ネロ様は私が連れて行きますので、メルダシア様とお2人で馬車にお乗りください」
ネロを抱っこした執事に馬車へと案内された。一見、僕達を2人きりにしてやろうと言う執事の優しさにも見える。でも実際は、ネロが可愛くて仕方ないのだろう。あいつ、ネロにメロメロだもんな。
「メルダシア、長旅で疲れただろう。もうすぐ王宮だよ!そうそう、申し訳ないけれど、父上と母上に会ってもらえるかな。あいつら、君が来るのを首を長くして待っているんだよ」
特に母上の喜び様は半端ない。下手をすると、門の前で待っているかもしれない。そんな僕の予想は、見事的中した。
「メルダシア、あそこで待っているのが僕の母上で王妃だよ。本当にあの人は、何を考えているのだか…」
王宮が見えてきた時、案の定門の前で母上が待っていた。こっちに向かって手を振っている。
「メルダシア、面倒なのが居るが仕方ない。降りようか」
メルダシアの手を取り、馬車から降りた。
「あなたがメルダシアちゃんね。本当に可愛らしい子ね。グレイソンが惚れるのも無理はないわ。さあ、疲れたでしょう?王宮の中に入りましょう」
メルダシアが降りて来た瞬間、母上が飛んできて、さっさとメルダシアを王宮内へと連れて行こうとしている。
「母上、勝手にメルダシアを連れて行かないで下さい」
母上からメルダシアを取り戻し、すかさず腕の中に閉じ込めた。
「あらあら、随分とメルダシアちゃんに執着しているのね!全く、誰に似たのだか…」
そう言って苦笑いをしている母上。3人で客間へと向かった。
客間には国王でもある父上が待っていた。
「やあ、待っていたよ。君がメルダシア王女だね。初めまして、私はグレイソンの父、アイランド王国の国王だ。これからよろしく頼むよ」
にっこり笑った父上。
「お初にお目にかかります。メルダシア・ツゥエル・ケーリッヒと申します。不束者ではございますが、どうぞよろしくお願いいたします」
そう言うと、美しいカーテシーを決めた。王族共から冷遇されていたと聞いていたが、どうやらある程度のマナーは身に付いている様だ。
「こちらこそよろしくね、メルダシアちゃん。堅苦しい挨拶は無しにして、さあそこに座って。そう言えば、犬も一緒と聞いたけれど。どこにいるの?」
母上の言葉を聞き、僕専属の執事がネロを連れて来た。
「まあ、可愛らしい犬ね。確か名前はネロだったわよね。よろしくね、ネロ」
母上が執事からネロを奪い取った。さすがだ!ネロは尻尾を振って母上の顔をペロペロと舐めている。
「くすぐったいわ。それにしても、本当に人懐っこい子ね。可愛いわ!」
そう言ってクスクス笑う母上。
「おい、私にも抱かせてくれ」
母上からネロを受け取る父上。父上もネロに顔を舐められていた。
「本当に可愛いな!今日からお前も私たちの家族だ。そうだ!ネロには恋人がいないのかい?」
ネロを膝に抱き、椅子に座る父上。家の両親は、僕に負けず劣らず動物好きだ。ただカサンドラのせいで、ずっと王宮で動物を飼う事を禁止していた。フワの様にこれ以上犠牲者を出さない為にと。
「ネロには恋人は居ないよ。そうだ、お前にもお嫁さんを探さないとな」
父上からネロを奪い取り、抱きかかえた。
「あの…グレイソン様。ネロは女の子です」
えっ?ネロって女だったのか?メルダシアの言葉に目を丸くする。
「お前、女だったのか!ごめん、てっきり男とばかり思っていたよ。じゃあ、お婿さんを探してやらないといけないな」
「キャンキャン」
僕が男だと思っていたのが気に入らなかったのか、吠えて僕の腕から抜け出てしまった。
「グレイソンが男って言うから、ネロがすねちゃったわよ」
そう言って、ネロを抱きかかえる母上。何だかんだで、和やかな空気の中メルダシアとの対面が終わった。
「グレイソン様のご両親は、本当に素敵な人ですね」
面会が終えた後、そう言ってにっこり笑うメルダシア。
「ちょっと変わっているけれどね。さあ、ここが君の部屋だよ。ちなみに隣が僕の部屋だからね。そうそう、申し訳ないのだけれど、早速明日から王妃教育が始まるのだが、大丈夫かい?」
今まで冷遇されていたとはいえ、比較的自由に過ごしていたメルダシア。明日から王妃になる為の厳しいレッスンが始まる。もちろん僕もフォローするつもりだが、正直嫌にならないか心配なのだ。
「大丈夫ですわ。私、グレイソン様の隣に立てる様、しっかり頑張りますわ」
そう言ってにっこり微笑んだメルダシア。
そして始まったメルダシアの王妃教育。正直メルダシアが嫌な思いをしないか心配していたが、どうやらメルダシアは非常に優秀だった。
「王太子殿下、メルダシア様は本当に優秀なお方ですわ。私が一度教えた事は、全てマスターしてしまいますし。何より、学ぼうとする姿勢が素晴らしいです。こんな事は申し上げ難いのですが、以前の方と比べると、月とスッポンですわね」
以前の方って、カサンドラの事か…
さらにメイドたちからも好評で
「メルダシア様は本当に謙虚でいいわ。いつもお礼を言ってくれるしね。ネロ様も人懐っこくて可愛いし!私メルダシア様の専属メイドに立候補したのよ」
「あら、私もよ!嫌だ、ライバルが増えるじゃない」
「それにしても王太子殿下、随分と見る目があるわよね。正直、前の婚約者だったら王宮を辞めていたわ」
「私もよ。以前お茶が少しドレスにかかっただけで、扇で思いっきり叩かれたのよ」
「私なんて、踏みつけられたわ。本当にあんな女と結婚しなくて良かったわよね」
なんて話をあちこちで聞く。それにしても、カサンドラの評判は最悪だな…
本当にメルダシアの評判はかなりいい。さすが僕が選んだ婚約者だけの事はある。
ただ、気になるのが母上だ。なんとかメルダシアを連れ出そうと、ちょくちょくメルダシアの部屋にやって来る。もちろん、僕がしっかりガードしているから、今のところ接触はないが。
とにかく王宮に慣れるまでは、メルダシアは極力僕の側に置いておかないと!




