メルダシア様は可愛らしいお方です
「メルダシア、そんなにくっ付いてどうしたんだい?ディランも夫人も怖くないよ」
怯えながら王太子殿下にくっ付くメルダシア様。
「申し訳ございません」
そう言って深々と頭を下げた。
「すまない、メルダシアは王宮内でメイド以下の生活を強いられていた為、どうしても貴族や王族が怖いみたいでね」
少し困った様子の王太子殿下。
「その様ですね。それじゃあ、俺たちがここに居ても迷惑でしょうから、帰ります。アンネリカ、行くよ」
「えっ…あ…ディラン様…」
戸惑う私を無視し、腕を引っ張られて立ち上がらされた。
「ディラン、ちょっと待って!そうだ、ディラン。君が怖いんだよ!悪いが夫人とメルダシアを、2人きりにしてもらえないかい?」
王太子殿下。さすがに怯えるメルダシア様と私を2人きりにするなんて、横暴ではございませんか?メルダシア様も明らかに不安そうな顔をしていますよ!とは言えないので、心の中で呟いておいた。
「ふざけるな!アンネリカから離れろだって!俺も同席すると言う条件で、今回アンネリカを連れて来たんだ!そんな話ならなおさら帰る!」
王太子殿下に怒鳴りつけるディラン様。その瞬間、明らかに怯え、王太子殿下にギューッと抱き着くメルダシア様。
「ディラン、落ち着いてくれ!メルダシアが怯えている」
王太子殿下がディラン様を必死になだめようとするが、怒りに身を任せ、私を連れて帰ろうとするディラン様。これはまずいわね。
「ディラン様、少し落ち着いてください。どうやらメルダシア様は男性の怒鳴り声に、かなりの恐怖を感じるようです。それから…一度メルダシア様とお話をしたいのですが、よろしいでしょうか?」
恐る恐るディラン様に確認した。
「アンネリカ、俺から離れてあの女と2人で話したいというのかい?」
明らかに機嫌が悪いディラン様。
怖い…
でも!
「ディラン様から離れたい訳ではありません。ただ…メルダシア様とお話をしてみたいと思ったのです」
まっすぐディラン様を見つめて、はっきりと答えた。
「は~、アンネリカは本当に優しいね。分かったよ。でも、俺はこの部屋から出るつもりはないからね!」
「はい、大丈夫です。ありがとうございます」
ディラン様から許可が下りたので、ゆっくりとメルダシア様の方に歩みを進め、彼女の前でしゃがみ込んだ。
正直この体制は辛いが、怯えさせない為にも下から見つめた方がいいと考えたのだ。
「メルダシア様、少し私とお話をしませんか?」
私の言葉に、ゆっくりと王太子殿下から離れたメルダシア様。
まずは自分の事を知ってもらう事が大切と思い、メルダシア様に実はつい最近までとても貧乏で、実家では掃除も食事の準備も着替えも全て自分で行っていた事。借金を返済する為、隣国の大富豪の元へ嫁ぐ予定だったが、ディラン様に助けられた事などをゆっくり説明した。
公爵令息夫人の思わぬ過去に、目を丸くして聞いていたメルダシア様。時折口を押えて、明らかに驚いている時もあった。一通り話終えた私は、少し体勢を整え、再びメルダシア様を見つめた。
「次はメルダシア様について教えていただけますか?」
一瞬戸惑ったものの意を決したのか、ぽつりぽつりと話し始めたメルダシア様。メイドが産んだ子として育てられた彼女は、異母兄弟からはもちろん、他の貴族からもひどい扱いを受けていたらしい。
さらに母親は身分が低いからという理由で、王妃含め側室からも執拗に嫌がらせをされていたそうだ。嫌がらせで心身ともに病んでしまったメルダシア様の母親は、彼女が8歳の時に亡くなったとの事。もちろん、父親でもある国王は見て見ぬふりをし、彼女にもろくに会いに来なかったようだ。
兄弟姉妹から酷いイジメを受けながら、細々と暮らしていたところに、今回王太子殿下との結婚が決まりここに来たとの事。
何て過酷な環境で生きていたのだろう…
そう思ったら、自然と涙が流れていた。ディラン様もさすがにびっくりしたのか、口を開けて固まっている。王太子殿下も辛そうだ。
「メルダシア様、お辛い話をさせてしまい申し訳ございません」
そう言うと、彼女を優しく抱きしめた。多分後でディラン様に怒られるだろう。でも、今はそんな事を考えられない。とにかく、この女性を抱きしめたいと思ったのだ。しばらく抱きしめた後、再びメルダシア様の方を向き直した。
「メルダシア様、ここにはあなた様をイジメる者はおりませんので、安心してください。私も出来る限り、あなた様の力になりますわ。と言っても、元々貧乏令嬢なので、特に貴族らしいことはあまり出来ませんが」
私の言葉に一瞬大きく目を見開いたメルダシア様。でも次の瞬間、なぜか泣き出してしまった。
「えっ!どうされましたか?申し訳ございません、私…」
私、何かメルダシア様を傷つける事を言ってしまったかしら?そう思い、アタフタしていると、メルダシア様が口を開いた。
「ごめんなさい。今まで私の周りには、こんな風に私の味方になってくれる人がいませんでしたので、嬉しくて…アンネリカ様、こんな私ですが、どうかよろしくお願いします」
そう言うと、嬉しそうに笑ったメルダシア様。
やっぱりこの人、とっても可愛いわ!
「メルダシア、良かったね。これから何かあれば夫人を頼るといい。そうだ、メルダシアの話相手として、毎日王宮に来てもらうのはどうだろう?」
嬉しそうに提案する王太子殿下に対し
「却下です!アンネリカは基本的に用事が無い限り、部屋から出すつもりはありませんから。今回も仕方なく連れて来たのです」
秒殺で却下するディラン様。さらにしゃがみ込んでいる私を引き寄せ、自分の腕に閉じ込めた。
「アンネリカ、君が優しいのは分かったが、図々しい王太子に目を付けられたじゃないか!少しは自分の行動を慎むべきだ」
やっぱり怒られてしまった。謝ろうと思った時
「公爵令息様、アンネリカ様は、私の事を考えて行動して下さったのです。どうか、アンネリカ様を怒らないでください」
お願いします!と、何度も頭を下げるメルダシア様。さすがのディラン様も焦った様で
「メルダシア王女、わかったよ。とにかく頭を上げてくれ!」
そう叫んでいた。
「それじゃあ週に3回メルダシアの話し相手として、夫人には王宮に来てもらうという事でいいかな?」
すかさず話に入って来る王太子殿下。さすが、抜かりがない。
「週1回です!これ以上は増やすつもりはありません!」
おっ、ディラン様が折れたわ。
「わかったよ、じゃあ週1回よろしく頼むよ」
どうやら週1のペースで、メルダシア様とお話が出来る様だ。
「ただし、面会時間は最長2時間!護衛には必ず女性騎士を付ける事!あと、俺の立会いの下面会を行う事。これが条件だ!」
さすがディラン様。相変わらずな条件を付けて来た。
「ディラン…君って人は…」
さすがに王太子殿下もあきれ顔だ。
「嫌なら今回の話は無しで!」
「わかったよ、その条件飲むよ!」
どうやら話はまとまった様だ。
その後は4人(と言っても、主に私とメルダシア様)でたくさん話をし、王宮を後にした。色々と話してみて、どうやらメルダシア様と趣味がよく似ている事も分かった。
「今日は来てくれてありがとう。また来週も頼むよ」
「アンネリカ様、またお会いできるのを楽しみにしておりますわ」
「こちらこそ、今日はありがとうございました。私も楽しみですわ」
王太子殿下とメルダシア様に見送られ、ディラン様と一緒に馬車へと乗り込んだ。メルダシア様は馬車が見えなくなるまで手を振ってくれたので、私も窓を開けて振り返した。
「アンネリカ、今日は随分と楽しそうだったね」
私の耳元で囁くディラン様。もちろん、私はディラン様の膝の上に座っている。
あら?もしかして機嫌が悪い?
恐る恐るディラン様の方を向くと、明らかに目が笑っていないディラン様と目が合った。これはヤバい!
「ディラン様、あの…」
どうしていいかわからず、言葉に詰まってしまった。
「俺の可愛いアンネリカは、本当に色々な人に好かれるんだね。でも、君は俺のものだって事分かっている?」
「はい、分かっています」
「そう、それならよかった!そうだ、来週王宮に行く日までは、部屋から一歩も出さないからね。もちろん、メイドも付けないよ!そのつもりで」
にっこり笑ったディラン様。どうやらディラン様、メルダシア様に嫉妬してしまった様だ。
こうして1週間ではあるが、再びアンネリカの監禁生活が始まったのであった。
近くに居たら物凄く面倒くさい男、ディラン。そしてなぜか、私の作品には面倒くさい男しか出てこないです(;'∀')
面倒くさい男、ディランが今後も度々暴走しますが、温かい目で見守っていただけると嬉しいです。
今後ともよろしくお願いいたしますm(__)m




