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好きな人の恋人役になったらいつの間にか囚われていました  作者: Karamimi
本編

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48/88

卒業式の前日は自宅で過ごします

「アンネリカ様、アンネリカ様」


誰かに名前を呼ばれる声が聞こえる。

まだ眠いわ。寝かせて…


「アンネリカ様、伯爵家に到着いたしましたよ」


伯爵家?そうだわ、馬車で家に向かっている途中に、どうやら眠ってしまった様だ。一気に目が覚め、急いで起き上がる。


「申し訳ございません。眠ってしまいました」


「大丈夫ですよ。今日は色々とありましたからね。相当お疲れだったのでしょう」


御者にエスコートされ、馬車から降りた。なんだが頭が少しボーっとする。


「それでは私はこれで」


「わざわざ送っていただき、ありがとうございました」


御者にお礼を言った後、玄関へと向かい、扉を開ける。


「アンネリカ、お帰りなさい。怪我はない?あなたが誘拐されたと聞いたときは、心臓が止まるかと思ったわ」


家に入るなり凄い勢いでお母様に抱きしめられた。後ろにはホッとした顔のお兄様と、眠そうな顔のお父様もいる。


「心配を掛けてごめんなさい。ディラン様が助けてくれたから大丈夫よ」


お母様に安心してもらえるよう、出来るだけ平然を装い笑顔を作る。


「思ったより元気そうじゃないか!怪我もなさそうだし良かったよ。もし重大な怪我でもしたら、隣国の大富豪に嫁がせられなくなるかもしれないもんな。よかった、よかった。さあ、俺はもう寝る。おやすみ」


部屋に戻ろうとするお父様の首根っこを掴むお母様!


「ちょっとあなた!それでも父親なの?アンネリカを何だと思っているの!こんな時に隣国のデブオヤジの事を持ちだすなんて!もう我慢できないわ!離縁しましょう!あなたと離縁すれば、デブオヤジの元にアンネリカを嫁がせなくて済むわ。やっぱり、隣国のデブオヤジの元に嫁がせるという話が出た時に、離縁しておけばよかったわ!さあ、アンネリカ、こんな家出て行きましょう!今から荷物をまとめるわよ」



「お、おい。ちょっと待ってくれ」


焦るお父様をガン無視して、私の手を掴んで部屋に向かおうとするお母様。



「お母様、待って!私は残り少ない時間を4人で過ごしたいわ。確かにお父様の発言は目に余るところもあるけれど、悪い人じゃないのはお母様も知っているでしょう?ちょっと正直すぎるだけなのよ。それに、お兄様はどうするの?今必死に伯爵家を立て直そうとしているお兄様を見捨てて、私は出て行くなんて出来なわ!」



「アンネリカ…あなたって子は…」


目に涙を浮かべ、私を抱きしめるお母様。


「アンネリカ、俺の事まで心配してくれてありがとう。優しい妹を持って、俺は幸せだよ」


お母様と私を包み込むように抱きしめるお兄様。さすがにマズいと思ったのか、お父様が俯いている。


「とにかく、私は大丈夫よ。お母様、あんなお父様だけれど、見捨てないであげて。お願い!」


私のお願いに、困り顔のお母様。


「わかったわ。本当にどうしようもない人だけれど、一応あなた達の父親だものね。これ以上悪さしない様、しっかり見張っておくわ」


「ありがとう、お母様」


あのお父様だから、きっとお母様もこれから大変ね。でもお兄様もいるし、きっと大丈夫よね。


「さあ、アンネリカ。もう部屋に戻って寝なさい。さすがに明日は学院をお休みした方がいいわね」


時計を見ると、既に夜中の2時を回っていた。確かに、明日学院へ行くのは無理そうだ。



「そうね、そうするわ。皆待っていてくれてありがとう。おやすみなさい」


3人に挨拶をし、自室に戻り急いで湯あみをする。それにしても、今日は本当に疲れた。ベッドに入ると、すぐに眠ってしまった。




翌日

目が覚めたのはお昼だ。どうやらかなり疲れていたようで、朝ごはんも食べずにぐっすり眠っていたらしい。


急いで起き上がり、お昼ご飯を食べた。本当なら、今日はディラン様と過ごす最後の日だったはずなのに…


自室に戻りぼんやりとしていると、イザベラが訪ねて来た。



「アンネリカ、昨日急にいなくなるからびっくりしたわ。はいこれ、あなたが昨日忘れていった鞄よ。それにしても、一体何があったの?」


そうか、イザベラは昨日の事件を知らないのね。もしかしたら、内密に処理をするのかもしれない。


とりあえず、昨日あった事をイザベラに話した。もちろん、カサンドラ様の事もだ。


「信じられないわ。性格が悪いとは思っていたけれど、まさかアンネリカを売り飛ばそうとするなんて…」


さすがのイザベラも、固まってしまった。


「とにかく、この事はディラン様には言わないでおこうと思っているの。それに、明日にはディラン様とカサンドラ様は駆け落ちをなさる日でしょう。だから、これ以上は被害が無いと思うの」


「アンネリカが言いたいことは分かるけれど、なんだか釈然としないわね。ねえ、アンネリカ。明日の卒業式は出られそう?」


「実は迷っているの。正直、カサンドラ様に会うのが怖くて。でも、イザベラと一緒に卒業式を迎えたいし…」


「アンネリカ、無理して来なくても大丈夫よ。もしアンネリカが明日卒業式に出られなかったら、卒業式の後、2人でお祝いをしましょう」


「ありがとう、イザベラ。とりあえず、どうするかもう少し考えてみるわ」


その後、しばらく話をした後、イザベラは帰って行った。



もし明日卒業式に出なければ、もう二度とディラン様に会う事はないだろう。でもカサンドラ様の事を考えると、どうしても参加するのが怖い。


その時だった。


コンコン

「アンネリカ、ディラン様がいらしているわ」


えっ、ディラン様が?


「わかったわ。すぐに行くわ」


そう言って立ち上がろうとした時だった。



「アンネリカ、ただいま!元気そうでよかったよ」


お母様を押しのけ部屋に入ってきたディラン様に、おもいっきり抱きしめられた。その様子を見て、苦笑いしつつもそっと部屋を出て行ったお母様。きっと2人きりにしてあげようと思ったのだろう。



「ディラン様、わざわざ来ていただき、ありがとうございます。もう向こうの処理は終わったのですか?」


「ああ、ある程度はね。だから急いで王都に戻ってきたんだ。君が心配だったから」


そう言うと、私のおでこやほっぺに口付けをし、頬ずりをするディラン様。もしかすると、ディラン様に会うのはこれが最後かもしれない。そう思うと、特に抵抗する気にはなれなった。


ディラン様の温もりを、しっかり覚えておきたい。そう思ったら、自分からディラン様にすりよっていた。


「アンネリカも寂しかったのかい?」


クスクス笑うディラン様。


「はい、寂しかったです」


正直に答える。たとえもう気持ちがバレたとしても、どうせ最後だ。そう思ったら、自然と言葉が出て来た。


「アンネリカ、なんて可愛い事を言うんだ。このまま公爵家に連れて帰りたいくらいだ」


ディラン様、この期に及んでまだ演技をするのね。でも…たとえ演技だとしても、とても嬉しいわ。



「そうそう、アンネリカ。明日なんだが、俺は少し早く学院に行かなきゃいけなくなったんだ。申し訳ないが、明日は1人で学院に行ってくれるかい?もちろん、家の馬車を迎えに出すから」


明日はディラン様は早く学院に行くのか。もしかすると、カサンドラ様との駆け落ちの準備があるのかもしれないわね。


「わかりましたわ。でも明日は父に頼んで、伯爵家の馬車を出してもらいます。最後なので、きっと出してくれるかと思います。それに、実は少し頭が痛くて。もしかすると、明日の卒業式はお休みするかもしれませんし」



「頭が痛いだって?大丈夫なのかい?」


急に慌てだすディラン様。


「大した事ないので大丈夫です」


慌てて元気アピールをする。


「そう、それならよかった。実はこの後、王太子に呼ばれていてね。もう行かなきゃいけないんだ」


「そうですか。では、お気をつけて」


王太子殿下と何の話があるのかしら?まあ、私には関係ない事よね。


「それじゃあ、また明日。今日はゆっくりお休み」


そう言うと、ディラン様の顔が近づいてきて、唇に柔らかな感触が!え?今、唇に…

途端に真っ赤な顔になるのが自分でもわかる。


「アンネリカは可愛いね。それじゃあね」


颯爽と部屋から出て行くディラン様。もしかして、からかわれたの?それとも、今まで恋人役をやったお礼?はたまた、これも演技?


何はともあれ、ディラン様と最後に会う事が出来た。これで明日の卒業式はお休みしよう。そう決めたアンネリカであった。



いつも読んで頂きありがとうございます。

本編の執筆が完了しました。

※今は番外編の執筆を始めています。


完結は今週の木曜日の予定です。

引き続き、どうぞよろしくお願いいたしますm(__)m

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