↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
好きな人の恋人役になったらいつの間にか囚われていました  作者: Karamimi
本編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

46/88

ディラン様が助けに来てくれました

何かに揺られている気がする。ここはどこだろう…


ゆっくり瞼を上げると、薄暗い天井の様な物が目に入る。そして、ガタガタ体が揺れる。ボーっとする頭で必死に体を起こした。そうだ、私エフェタリア王国に売られるのだったわ。という事は、今はエフェタリア王国に向かっているところか…


よく見ると周りには私と同じく、手足を鎖で繋がれた人がたくさんいる。皆絶望的な顔をしており、誰1人として口を開く者はいない。


それにしても、どれくらいの時間が経ったのかしら?ディラン様やイザベラ、家族もきっと心配しているわよね。


どうしてこんな事になってしまったのかしら…アンドレが言った通り、ディラン様の恋人役をさっさと辞めておけば、こんな事にはならなかったのかしら…


でも、後悔はしていないわ。だってディラン様と過ごした時間は、私にとってかけがえのない時間ですもの。



ふと隣を見ると、小さな女の子が鎖に繋がれて震えていた。7~8歳と言うところだろうか。こんなに小さな子供まで売られるなんて、一体この国はどうなっているの!



「あなた、大丈夫?こんなに小さいのに、どうしてこんなところに居るの?」


私は女の子に声を掛けた。ビクッとした女の子。でも、次の瞬間私にすり寄ってきた。


「分からないの。家の前で遊んでいたら、知らない男の人に急に連れてこられて…」


そう言うと、女の子は泣き出してしまった。なんて酷い事をするのかしら。泣く女の子の背中を優しくさする。鎖が女の子の背中に当たらない様、慎重に。


「お姉ちゃんはどうしてここに居るの?これからどこに連れて行かれるの?お母さんに会いたいよう」


「私も知らない人に連れてこられたのよ。大丈夫、きっとまたお母さんに会えるわ。信じて助けが来るのを待ちましょう」


きっと助けなんて来ないだろう。でも、こんな小さな子には、あまりにも現実は残酷すぎる。たとえ嘘だとしても、今はこの子に安心してほしかったのだ。


「本当?本当にまたお母さんに会えるの?」


大きな瞳を一杯に見開いて尋ねて来るこの子に、つい私も「本当よ」と言ってしまった。こんなに辛い嘘を付いたのは初めてだ。胸が締め付けられる…


「私はルシアよ。お姉ちゃんは?」


「私はアンネリカ。よろしくね。ルシア」


何だかんだで仲良くなった女の子、ルシアはこの近くの村の子供の様だ。この子だけでも何とか助けてあげたい。でも、どうすればいいのかしら?



その時、急に馬車が止まった。一体何があったのだろうか?もしかして、目的地に着いたとか?一気に不安がよぎる。私はルシアを鎖で繋がれた腕と体の間に入れた。ルシアも私にくっ付いて来る。



耳を澄ませていると、外から声が聞こえて来た。


「おい、どうして検問所がこんなに混雑しているんだよ。これじゃあエフェタリア王国に着くのは、いつになる事やら」


どうやらエフェタリア王国に入国する為の検問所が混雑している様だ。たとえ馬車が止まっても、頑丈な鎖で両腕と両足を繋がれている為、逃げる事は出来ない。


「アンネリカお姉ちゃん」


ギューっとルシアがしがみついて来た。


「大丈夫よ、きっと大丈夫」


全く動かなくなってどれくらい時間が経っただろう。恐怖からか私から離れようとしないルシア。


すると、外が騒がしくなった。一体外では何が起こっているのかしら?不安で胸が押しつぶされそうになる。


その時だった!


「アンネリカ!アンネリカはどこだ!」


この声は、ディラン様だわ!


「ディラン様、私はここです」


大きな声で叫ぶと、すぐに私のところにやって来てくれたディラン様。


「アンネリカ、遅くなってすまない。もう大丈夫だ」


ルシアを抱いている私を、そのまま抱きしめてくれた。


「ディラン様、助けに来てくれたのですね」


私もディラン様にすり寄る。


「この人誰?アンネリカお姉ちゃんの知り合い?」


私の腕の中から声を上げたのはルシアだ。


「アンネリカ、この子は誰だい?」


ディラン様もびっくりして私から離れる。


「ディラン様、この子は私と同じく、誘拐されてここに連れてこられたルシアです。ルシア、この人は私の…」


ルシアになんて説明すればいいのかしら?つい言葉に詰まってしまった。


「俺はアンネリカの恋人のディランだよ。よろしく、ルシア」


なぜかディラン様自ら自己紹介をしてくれた。



「坊ちゃま、鍵を奪い取りました。すぐにアンネリカ様を解放しましょう」


ディラン様の執事が鍵を持ってきてくれたようだ。ディラン様達によって、私たちは解放された。


「ディラン様、助けに来てくれて、本当にありがとうございます。どうしてここが分かったのですか?」


もう二度と会えないと思っていたディラン様に会えたのだ。嬉しすぎてついディラン様に思いっきり抱きついた。


「もしもの時の為に君の居場所が分かる様、特殊な機械を付けていたんだ。だから、人身売買のアジトも突き止めることが出来た」


え?そんな物を私に付けていたの?全然気づかなかったわ。


「でも、君の制服の上着に付けていたブローチ型の機械が示す場所に君が居なくて慌てたよ。とにかく、無事でよかった」


あのエメラルドがその機械だったのか。そう言えば、絶対に外してはいけないと言われていたわね。そんな機能が付いていたのね。



「ちなみに君を売り飛ばそうとした組織は、今王太子によって1人残らず捕獲されているはずだよ。君をこんな目に合わせた組織だ。徹底的に痛めつけてやろうと思っているのだが、アンネリカはどうしたい?」


明らかに悪そうな笑顔を見せるディラン様。その笑顔、物凄く怖いわ…


「私は助かったので、法律にお任せします。それよりも、売られる予定だった人たちは、これからどうするのですか?」


「もちろん、各自自宅に返すつもりだ。既に売られてしまった人たちの捜査も、これから行われる予定だ」


「そうですか!それは良かったわ。ルシア、もうすぐお母さんの元に帰れるわよ。よかったわね」


私の側に居たルシアに声を掛ける。


「うん、ありがとう、アンネリカお姉ちゃん。お姉ちゃんの言う通りだったよ。ディランお兄ちゃんも、助けてくれてありがとう」


満面の笑みでお礼を言うルシア。本当に良かったわ。


「ファイザバード公爵令息、売られかけた者たちは、私たちが責任を持って各自家に帰します。今日はもう遅いですので、どうぞご自宅にお帰り下さい。さあ、君はこっちにおいで。家に帰してあげるからね」


騎士はそう言うと、ルシアを連れて行った。


「アンネリカお姉ちゃん、ディランお兄ちゃん。またね」


手を振りながら騎士に付いて行くルシアを2人で見送る。


「さあアンネリカ、家に帰ろう。随分遠くまで来てしまったから、多分家に着くのは夜中になってしまうけれどね。もちろん、伯爵家には連絡を入れてあるから大丈夫だよ」


そう言うと、ディラン様は私を抱えて歩き始めた。いつもなら、自分で歩くと言うところだけれど、今日はなんだか甘えたい気分だ。この温もりが、物凄く心地いい…


ディラン様には、カサンドラ様の事は黙っておこう。もしも自分の大切な人が、こんな大事件に絡んでいると知ったら、きっとショックを受けるものね。


どうやら馬車の前まで来たようだが、いつもに比べると随分と質素な馬車だ。この馬車で帰るのかしら?


「アンネリカ、ごめんね。公爵家の馬車は目立つから、この馬車で来たんだ。少し狭いが我慢してくれ」


そう言うと、私を馬車に乗せたディラン様。いつもなら膝の上に座らされるか、そのまま真横に座るはずなのに、なぜか立ったままだ。


「ディラン様、座らないのですか?」


「ごめんね、まだやらなきゃいけない事があるんだ。アンネリカ1人で帰すのは物凄く不安だが、1人で帰ってくれるかい?そうそう、この上着を羽織って帰ってくれ。これがあれば、アンネリカが無事に家に着いたかわかるからね」


ディラン様が着せてくれたのは、私の制服の上着だ。しっかりエメラルドのブローチも付いている。このブローチで、私の居場所を突き止めたのね。


「わかりました。ディラン様。どうぞご無理をなさらずに」


「ありがとう。アンネリカも気を付けて」


私のおでこに口付けをすると、ディラン様は馬車から降り、そのまま扉を閉めた。ただでさえ後少ししかディラン様と一緒に居られないのに。

出来ればディラン様と一緒に帰りたかったな…


でも、公爵令息として、1人だけ帰る訳には行かないのだろう。それに私はただの恋人役、それもあと少しで終わりだ。これ以上、私に気を使う必要もないのかもしれない。


馬車に揺られながら、ディランの事を思うアンネリカであった。


アンネリカが仲良くなった女の子のルシアですが、その日のうちに無事第1騎士団によって家に帰されました。


両親も行方不明になった我が子を必死に探していたようで、泣いて感謝されたとの事です。


その姿をみた騎士団員は、その後既に売られてしまった人たちを全力で捜索し、1000人規模で解放したとのことです。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。