05:飽きてきた
「暇だったら、フリーバトルで対戦してみないー?」
VR空間内で鵜冠からのチャットの声が耳に入る。
ここ数日、将棋アイドルクリッカーをやっていたものの
何かこう・・・・・・飽きてしまった。
詰め将棋は最初の頃に少しやった程度。
メインのゲーム部は基本放置で育つ。
もしかして俺、このゲームに必要無いんじゃないか?
そんな考えが頭をよぎりつつ、2日程ゲームを起動していなかった。
「正直飽き気味なのだけど、詰将棋も難しいし」
「自分で勧めといて悪いとは思ってるけどー
かなりプレイヤーを選ぶゲームだねー」
「と言うことは、クソゲーでござるか?」
「貴殿、このゲームをクソゲーと愚弄するか
ならば成敗してくれよう!しぃばぁし~待たれよー」
よくある時代劇風の小芝居の後
「あ、ちょっとそっちの空間に行くねー」
素の口調に戻る
「30秒後に右から登場するよー」
何故右?
そう思っていると、右側から光と黒い煙が見え始める。
あのエフェクト、何日か前に見たトラックじゃないか?
前回は近かったからこそ感じた眩しさだったが
遠いにも関わらず、より眩しく感じる。
「もしかして香車のアップグレードで出てくるトラック?眩しいって」
「チッ」
ちいさな舌打ちの音が聞こえたあと、
ヘッドライトの光が若干弱まり、眩しさは収まる。
しばらくするとトラクターヘッドは、少し離れた位置に横向きに停車する。
香の文字が描かれた運転席のドアが開き
やや高い運転席より飛び降りる人影。
鵜冠のVRアバターは、割と小柄で長い黒髪が特徴だ
その長い髪が大きく広がり、着地と共にゆっくりと収束してゆく。
髪を整えるため軽く頭を振った後、
右手を高く上げ人差し指と中指を伸ばし天を指さす
大きく息を吸い込み
「すべてを貫く螺旋の軌跡は、遠くへ誘う永遠の」
背後の足元から大量の矢印のようなモノが絡み合いながら上昇していく
そして高く上げた腕は徐々に前へ降ろされ
頭より若干高い位置に来た背後の矢印の先端はその腕に連動するように向きを変えていく
「戻ること無き道を示して、ただただ前へ進むのみ」
指は正面を指し静止
そのタイミングに合わせるかの様に
絡み合い螺旋の様な矢印が前方に放たれてゆく
放たれた矢は彗星の様に尾を引き
尾は桜の花びらに形を変えながら
その場所を通過したことを示すかのように道を作ってゆく
「すべてを貫く螺旋の香車、クサカンムリ参上!」
ウインクをしつつ肘をあげ横向きになったピースサインは頬に当てられ、その指の間には香車の駒が挟まれている。
3秒程でそのポーズも解き、腰に手を当てて
何か色々やり切ったような、満足げな顔をしつつ
「どう?」
今の一連の流れの感想を聞いてきた。
いわゆるドヤ顔で。
視線を後ろにあるトラックにやりながら
「反応に困る・・・」
反応に困る、言うまでもなく困る。
「何かしらのキャラクターの決め台詞的なものならば
VRで直接見れて嬉しい気もするけど
中身も知ってるリアルフレンドだし
アバターかわいいけど、男なの知ってるし」
鵜冠は、基本的に「かわいい」のベクトルを追う男の子である。
「確かにかわいいとは思うが、何かのキャラなの?
はい、ウカンムリウカンムリ
と言った感想でいいのか?」
「なんだよ、その感想はーひどいなー」
鵜冠も大した感想は期待していなかったようで
俺の言葉を受けた後、振り返りトラックの方へ戻っていった。
トラックについてはさっきから気になっていたので俺も付いていく。
「ところで、香車のアップグレードのトラックだよね?」
「そうだよー」
「もしかして課金アイテム?」
「いやーランカー戦のご褒美みたいなものだねー」
「ほー、これはすごいな」
使えるVR空間は限られるだろうけど、かなり迫力がある。
そして語り始める鵜冠
「鍛えた香車でひたすら殴り合いみたいな勝負だったけどー
一度仕掛けたら、相手が折れるまでやらないとこっちがやられちゃうので
所々で勝てる自信が無くなりそうだったよー」
「そういえばランカー戦って鍛えた駒使えるの?
この間使えないって言ってなかったっけ?」
「ん?んん?と言うことは何か言い間違えたー?」
首をかしげながらも、そんなことを言った覚えは無いなーとアピールする。
何日か前の会話ログを掘り起こしたが、特にそんな部分は無く
「あぁ、すまん。使えないのはランカースキルの方か」
「そう、前回話したのは多分それー!
けど、ランカー戦では一部というか鍛えた駒の大半が使えないから
認識として間違いでは無いかもー」
「じゃぁ改めて称号ランカー戦についての簡単な説明だけど」
1:参加できるのは1種類の称号戦のみ
2:駒の名前を冠する称号の強者を決める戦いなので
ベーススキルとなる王のアップグレードを除くと
歩兵戦なら歩兵のアップグレードのみ
香車戦なら香車のアップグレードのみ
桂馬戦なら桂馬のアップグレードのみといった具合に
それ以外の駒のアップグレードスキルは基本持ち込み不可
3:勝者にはランカースキルが与えらえる。
「と言ったところかな
どのランカー戦にしても、相当鍛えないと戦闘にすらならないから
現状では考える必要無いかもー」
「あぁ、そうだフリーバトルー、それやりにきたんだったー」
本来の目的を思い出す鵜冠。
「リード、将棋アイドルクリッカー、VRミニマムオブジェクト
ログイン、クサカンムリ アンド」
「ログイン 3846リーフ」
二人の間に、将棋盤か出現する。
クサカンムリは、鵜冠のプレイヤーネーム
3846リーフは、俺、三ノ葉志朗のプレイヤーネーム。
「オープン、フリーバトル」
と、鵜冠の指示で将棋盤にはフリーバトルの表記と共に、お互いの駒がすでに並んでいた。
当たり前のように配置してあるが、駒の数が明らかに違う。
「勝てる気がしねぇ、ってか無理ゲーだろ」
こちらは言うまでもなく、普通の駒の配置。
対して鵜冠の配置は、駒は4段に渡って置かれ
2枚の金と王の前3x3の範囲に香車が置かれている。
「クソゲーと思った事を後悔させてあげようー、全軍突撃っ!」
最初から勝てる見込みは無く、
将棋からほど遠い、あまりの滅茶苦茶さにゲラゲラ笑いながらも
「確かにお互い頭のおかしいスキル盛り盛りで戦えばバカゲーとして楽しいのかもしれないが
積み上げたプレイ時間に差がある場合はゲームとして成立しないな。
対CPUならアリだと思うけど、なんで対人戦を実装したんだかわからねぇ」
「だよねー
元々はソロで無双する将棋ゲーだったらしいんだけどー
何故か対人戦を実装しちゃってねー
一部ランカースキルのせいで、修正アップデート含むメンテを入れられなくなったらしくてね。
バランス調整があまりされてないから、撃ちっぱなしごり押し必勝ゲームになってる」
やや飽き気味ではあったけど、くだらない話をしながらやるゲームは楽しいものだ。
とは言え、このゲームをやるモチベーションと言うか、
ゲームとして見た場合、どこかで飽きるジャンルなんだよな。
それにしても、メンテが出来ないってどういう状況だよ・・・
キャラの口調や設定は何も考えてなかったので、自分でもよくわからないです。
いずれ書き直す事があったとして、その頃にはちゃんとキャラが固まってるといいなぁ。
っていうかさー、リアルだと一人称が全員「俺」とか「私」だったりしないー?
そう思ってたのに、自分で書いてみると誰が話してるのかわからなくなるので、滅茶苦茶ストレス溜まるんですけどー?
そのせいで口調をある程度作らなきゃいけなかったり、難しいものですねぇ。
次は問題のランカースキルのお話かも。




