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32、魔王が黄昏れました。

最早誰も見てないよ!!とは思いながらも投稿。初期稿とは全然展開が違ってしまった……、いや、バトルとかホントに無理です。



「ああ!!もう………魔王様ったらいったい何処に居るの?」



果てしなく続く人(魔族)の波を眺めて

ラーサはウンザリといった様子で眺めた。


「まさかいきなり逸れるなんて思ってもみませんでしたね……」


ファーもゲッソリとした顔でつられて思わず溜息をつく。

魔王部下&勇者一行は今現在、疎らに散らばる祭の群衆の中を右へ左へと流れながら魔王の姿を目下捜索中である。


___

……雑談しながら歩いている最中ふと一瞬、目を離した隙に魔王がいなくなったのが一時間程前の事だ


つい数十秒前まで隣に居たのに、まさか話している間のほんの僅かな一瞬の間で見失うとは思ってもみなかった彼等だが

しかし、まさか魔王が道に迷うなんてあるわけないよな…と、迷ったとしてもまさか宛てもなく歩き回るなんて馬鹿な事をするとは夢にも思わず

直ぐに戻って来るだろうとタカを括り、来た道を少し戻った所で周りを見渡しながら魔王が現れるのを悠々と待っていたわけだ………………



……それから待つこと30分…幾ら待てど暮らせど全くもって一向に戻ってくる気配が無い

おかしいと思い直ぐさま魔力を探ってみれば魔王の反応がこの近辺に存在しない事が発覚する


流石に鈍い彼等もそろそろ気づき始めた、

もしかして魔王……迷子なんじゃね?


_____


そして今に至る



「ったく、人を散々コケにしておいて自分は迷子かよ」


開口早々あまりお上品とは言い難い言葉遣いのクレア……相当イラついている


「……クレア……口が悪い」


「でも、お兄様!!アイツのせいでロクに祭を楽しめやしないんですよ!!」


何と言うか……

来る前はあまり乗り気ではないような事を言っていたのにしっかり遊ぶ気満々だったらしい。


「あー……」


「なら………私だけで捜して後から合流しましょうか?」


気を使ったファーが提案するが


「いえ、私も捜しますよ」


意外にも一緒に捜すと言うクレア


「あまり気を使わ無くても……」


「あのボケナスには会って一言言わないと気が済まないので……ふふふ」


「………」


そういうことかと押し黙る一行

クレアの背景にはゴウゴウと火が上がっている、今クレアの頭の中では“もし見つかったらどんな罵声を浴びかけてやろうか”と様々な思考を巡らせているのだろう。

文句を言い、黒い笑みを浮かべながらもその顔はとても楽しそうだ

何だかんだ言って仲の良い魔王と勇者(妹)、本人が聞いたら即座に“それはない!!”と全力で否定するだろうが……


________



「っかしいなー、ここいらに居るはずなんスけど……」


更に歩き回る事40分

漸く魔王の魔力の反応の強いポイントを見付けた彼等だが相変わらずその姿を見付けられずにいた。


「これだけの人が居るとやっぱり正確な場所の特定は無理ですしね…」


魔力の探知は臭いをかぎ分けるようなものだ、これだけの人が居ると人の波に流されて


「ここからは手分けして捜すしか無いみたい……」


やはりこうなるかと


「んじゃファーとクレアちゃんは此処で待ってなよ勇者っちとラーサの三人でこの辺り捜しておくからさ」


マンティが言うとクレアが若干不満げに顔を膨らませたが勇者が彼女を宥め、結局三人で手分けして魔王を捜す事になった。



「…………」


しかし、捜せど捜せど魔王は見つからない


気配はあれど姿は無し、近くに居ることは判っても一向に姿を確認することは出来ない、一体何処へと消えたのか……


ふと勇者は空を見上げた……


_____



「………魔王」


高台に座り込み一人黄昏れている魔王に

勇者は声をかけた。


「ん、ああ勇者じゃないか」


隣には食いかけの串焼きが放置されていた。


「………何やってる?」


「いや、別に何も」


ふと言葉を止めて………


「……オレは、こんな所に居て良いんだろうかってね」


魔王は独白を始めた。


「魔王は……本来城を一歩たりとも出てはいけないはずなんだ………それなのに公務ほっぽり出してこんな所に居ていい訳無い……」


魔王は魔界の守護神であり最後で最強の砦だ、魔王がそれを放り出す事は本来許されてはならない。



「それに、魔王が呑気に祭を楽しむなんざ……場違いにも程があるだろ」


一人になってナイーブになったのだろう、自嘲気味にそんな事を言った。


「…………別に、そんな事は無い」


は、と魔王が顔を見上げると

ひょいと串焼きをつまみ上げながら勇者は続けた。


「……何かを楽しむのに場違いとかそんなのは関係ない、……ちがうか?」


柄にも無く口が達者な勇者に

魔王は一瞬鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をしていたが


「……ふふ、それもそうだな」


晴れやかな顔でそう答えた。


______



「ゴルァ!!!お兄様から離れやがれ!!このアンポンタン!!」


絶叫と共に現れたのは勇者妹クレアちゃんである、どうこの場所を嗅ぎ付けたのか

勇者の隣に座る魔王に怒りの形相で蹴りをかまそうとしていた。


「うわ?!」


とっさに近くに居た勇者を引っつかみ盾にしてしまう魔王


「……へ?」


「「あ」」


バゴン!!という爆音と共に吹っ飛んで行く勇者、そして勢いを殺し切れずに巻き込まれる魔王


「お、お兄様!!!???」


ドボン、と大きな水しぶきを上げて

魔王と勇者は二人仲良く落下地点の噴水に飛び込んでいった。


「……っ痛ー…いきなり何すんだあの女は、思わず勇者を盾に使っちまったじゃないか……」


「……きゅー…」


魔王を見付けただけなのに随分と災難な勇者、………だが本当の災難はこれからであった。


「ん?」


魔王の胸の上に銀色の物体

何かと考えを巡らせるが、その正体に気が付き顔が徐々に赤くなっていく魔王


年齢不詳の魔王だが今の見た目は二十歳前の少女とそう変わらない、その見た目の年齢に対しては随分と小振りな……しかし、しっかりと存在する二つの女性の象徴

それに顔を埋める勇者


「うう…なうなななにゃ、うみゃあああああ!!!!」


「……んぁ?」


バボッ!!!


意識を完全に回復する間もなく、何が起きたか状況を掴む暇すら与えられず意味不明な言語を発する魔王に至近距離で全力のアッパーカットを喰らわせられ自動車が正面衝突したような音を立てて吹っ飛ぶ勇者……

そして更には……


「お、お兄様の……」


勇者が魔王の胸に顔を埋める様をまざまざと見てしまったクレアが顔を真っ赤にしながら複数の魔法陣を展開


「不潔ぅっ!!!!!」


既に瀕死の勇者に止めを刺すよう容赦無く無数の光の刃が向かっていった………。



_____



その日、魔王&勇者妹の見事な連携技により勇者は祭の空を舞った。





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