ACT3
『卒業後は都内の画廊で働くことにしたわ』
友達への返信にそう書き込むと、返信ボタンを押す前にわたしは考えた。
断ち切れるだろうか?
描きたいという欲求も。
「画廊?」
加奈子が横からパソコン画面を覗いて顔をしかめた。
「絵かかへんの?」
「売るようなものは描けないからね」
すると加奈子は真顔でいった。
「人がなんと言おうと、うちはあんたの絵好きや。でとったら買う」
わたしは笑った。
「高いわよ」
「もちろん値切る」
加奈子はそういってわたしにウインクして見せた。
お気に入りの教授を見つけて走っていく加奈子の後ろ姿をみながら、少し羨ましく感じる。
才能にかまけている加奈子ではない。
努力をおこたらない姿勢と、それを感じさせないバイタリティもちゃんとあるのだ。
才能がなくても、はなからかなわなかったのだ。
ふと、あの三池で見た少年はどうなっただろうと考えた。
遺体が遺族の元へ返ったからといって幽霊が現れなくなるというのは希である。
なぜかはわからないが。
未練というものかもしれない。
あるいは残像。
幽霊という名の。
わたしの中の恐怖は、彼をまた見るのではという恐怖ではない。
いつか―――またどこかで彼のような幽霊を見てしまうのではという恐怖だ。
それはこれからもずっと、癒えない傷のように付きまとうのだろう。
そしてわたしは脅え続ける。
真実を見るという恐怖に。
<おわり>




