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*新たなる旅立ち

「俺の後ろにいてくれ」

 白銀はナナンたちにそう言うとふらつきながらゆっくりと立ち上がる。

「!」

 アルシオは驚いて近づこうとしたが──どういう訳か動けなくなった。

「……! まさか私の術を……?」

 アルシオの隣に立った白銀はもう1つの魔法円の中心に渦巻くエネルギーを見つめながら口を開く。

「ジィさん。トレーニングの時に言ってたよな……俺の力は本来は回復の力だと。そしてバランスを保つ力だと」

「そうじゃ……」

 目を一度閉じて白銀は小さく笑う。次に目を開いたときそれは輝くような鮮やかな緑だった。

「力の発動!? だめじゃ! おぬしにはまだ……」

「追い返さないとだろ?」

 言った白銀に言葉が出ない。

「くっ……リャムカ! 同調じゃ!」

「誰にですか?」

「わしに力を送り込め!」

 リャムカはその言葉にナナンの肩に手を添えた。

「少しでも……シルヴィの負担を和らげないと」

 両手を白銀の背中に向ける。

「シルヴィ!」

 ディランの声に白銀は目だけを彼に向けた。

「!」

 白銀の目と、ちらりと見えたその口元の笑みにディランはキッと目をつりあげて白銀に駆け寄る。

「! ディラン」

 慌てるナナンにニコリと笑った。

「大丈夫」

 そう言って白銀の肩に手を置き白銀はそれにぼそりとつぶやく。

「……ありがとう」

「お前らしくないな、それ」

「!」

 そんな2人のやりとりの背後にナナンは別の意識も見て取った。それは暖かくやさしい意識の結晶体。

「……そうか、だからシルヴィは」

「はっはぁ! 無駄だと言うのに。今更このエネルギーを押し返すだって?」

 アルシオは余裕の笑みを浮かべてまるで余興を楽しむように白銀たちを眺めた。

「うっ……」

 ますます増大していくエネルギー。白銀は思わず小さく声を上げる。

 使う相手によってあの優しかったマナ・グロウブの力がこんな邪悪なモノになるなんて……それに驚きながらも白銀は渦巻くエネルギーを見据えた。

「支えていてくれ!」

「当然!」

 渦巻いていたエネルギーが徐々に何かを形作っていく。

 それは──3対のコウモリの翼を持つ人型。尋常ではないその美しい容姿が白銀を誘うように見つめた。

 まだ完全に目覚めた訳ではないルシファーは荒れ狂うエネルギーの中、少しずつ白銀に近づいてくる。

「お前など必要無い……元の場所に還れ」

 白銀が言い放った刹那──

「!?」

 まばゆい光が部屋を包んだ。その輝きの中……白銀に微笑む女性。

「さすがねシルヴィ……」

「……ライナ」

 白銀の頬にキスをしてライナは遠ざかる。


 光が収まった時、エネルギーの渦もルシファーも消えていた。

「ばっ……馬鹿な!!」

 あれだけのエネルギーを抑えたというのか!?

 力を使い果たした白銀は片膝をつき肩で息をする。アルシオは凄い形相で白銀を睨み付けると力強く右手を白銀に向けた。

「よくも……」

「おっと」

「!? がっあっ!」

 リャムカの声と共にアルシオは全身に電流が流れたような衝撃を受けた。

「わしらの事を忘れんでいただきたい」

 ナナンがしれっと応える。その手はアルシオの足に触れていた。

「きっ……きさまら」

「……」

 そんな光景に白銀は目を丸くした。

「は……ははは」

 自然と笑いがこみ上げる。


「こいつどうする?」

 ディランが縛り上げたアルシオを見て問いかける。

「力を奪って解放すればいいじゃろ。マナ・グロウブも無くなったのじゃし」

「や、やめてくれ……力を奪われたら生きていけない」

 今までの威勢はどこへやら、力なく懇願した。

「まあ頑張れ」

 白銀はにこりと笑ってアルシオの肩にポンと手を置いた。


「でもシルヴィの天使姿も見たかったな~」

「言ってろ」

 アルシオを解放して小型艇に向かいながら会話を交わす。

「!」

 その目の前に現れた権天使の3人に身構えるナナン。

「返事を聞かせてもらおう」

 権天使の1人が白銀を見つめた。

「……」

 白銀の言葉を一同は固唾を呑んで見守った。

 そんな彼は、フ……と笑みをこぼすと権天使たちに発する。

「ここは最高だ。悪いが他をあたってくれ」

「シルヴィ!」

「……そうか」

 喜ぶディランたちを見つめて権天使はつぶやくように応えた。

「君たちの邪魔をしてすまなかったな」

 言いながら消えていく。


「あ、そういえばさ~」

 ディランが思い出したように発した。

「実は俺もあいつらに勧誘されてたんだよね」

「! 天界にか!?」

 ナナンがギョッとした。

「なんか魂がどうのこうのって。丁重にお断りしたけど」

 あっはっはっ……と気楽に笑う。

「どういう事なんだ?」

「彼の魂は純粋なんじゃ。それに目を付けたんじゃろう」

 問いかけた白銀を一瞥しナナンはへらへらと笑っているディランの背中を見やり応えた。

「きゃっほーぅ! おいらは自由だー」

 エイルクはエイルクではしゃぎまわっている。

「……」

 少年の言葉から察するに白銀についてくるつもりなのだろう。それが見て取れて彼は一瞬、呆然とした。

「……もしかしてお前らも」

 ナナンとリャムカに目を向ける。

「当然じゃ」

「うむ」

「マジかよ……」

 前途多難の一行に白銀は深い溜息を吐き出した。



END

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