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異世界工学 ー最強兵器の作り方ー  作者: Ciaz
本編

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1/4

死、そして転生

2145年、3月9日の深夜。


 カタカタカタ……と、中根(なかね) (れい)しかいないオフィスにキーボードの音が響く。

 窓に映る空には、不穏な分厚い雲が街全体を覆っている。

 真っ暗なフロアの中、モニターの光だけが彼の顔を照らしていた。


 株式会社Nロボット 開発部。

 新型人工知能搭載人型兵器――その中核となるフレーム設計を任されているのが、零だ。

 本来なら複数人で分担するはずの工程。

――だが今、その全てを零ひとりが抱えていた。

「……あと、少し……」

 乾いた声が、自分に言い聞かせるように漏れる。 目は充血し、焦点もどこか合っていない。机の端には、空のエナジードリンクが何本も転がっていた。


 指は止まらない。震えているのに、キーボードを打ち付ける速度は異常に速い。

――ただ、認められたい。その一心だった。


 モニターに表示されているのは、人体に似た骨格構造の3Dモデル。

 関節部に負荷シミュレーションの結果が赤く灯っている。

 零はキーボードを叩き、数値を微調整する。

「トルクを逃がす……いや、違う。構造で受けるほうが……」

 彼の仕事は“設計”。機体そのものの構造、素材、可動、耐久……

――すべてを組み上げる土台だ。人工知能は専門外。それは別のチームに任されている。だが。

「……また仕様変更かよ」

 画面の端に表示された社内メッセージ。

 送信者は――直属の上司の名前。

『AI側の挙動が変わった。可動域を拡張してくれ』

 零は一瞬だけ目を閉じた。

「……それ、最初に言えよ」

 小さく吐き捨てる。だが、誰も聞いていない。

 設計はすでに終盤。ここからの変更は、全体の再計算を意味する。

……だが零は文句を言わない。言えない。


 カタカタカタ……。再びキーボードの音が響く。気づけば、時間は午前2時を回っていた。


――零はエナドリを手に取り、口に運ぶ。

……ぬるい。いつ買ったかも覚えていない。

 デスクの端には、積み重なった設計図と、赤字で修正されたプリントアウト。

 その一枚に、見覚えのあるサインがある。

――上司の名前だ。……その横に、小さく印字された文字。


『最終設計責任者』


 零はそれをしばらく見つめた。自分が作ったものなのに。ゼロから組み上げた、画期的な発明。


 だが――名前は、そこにはない。

「……別にいい」

 誰に言うでもなく呟く。

「結果が出れば、評価される」

 そう信じているからこそ、ここまでやってきた。


 数時間後。モニターには、完成した設計データが表示されていた。

――フレーム、動力、制御インターフェース。全てが無駄なく繋がり、理論上、最高効率を叩き出す構造。


「……できた」

 小さく、息を吐く。達成感――というより、ようやく終わった、という感覚に近い。

 その瞬間だった……


 ズキッ、と。胸の奥に、鈍い痛みが走る。

「……っ!」

 一瞬だけ顔をしかめるが、すぐに姿勢を戻す。

「……大丈夫だ」

――独り言のように呟く。慣れている。ここ数日、いや、数週間。似たような違和感は何度もあった。


 零はマウスを動かし、データを保存する。保存先のフォルダ名を確認し、アップロードの準備をする。

「……これで、終わりだ」

 カーソルが“送信”ボタンの上で止まる。

……これで、認められる。これで……全部報われる。



――そのはずだった。

 画面の光が、わずかに揺らぐ。

 零の視界が、にじむ。

「……あれ」

 マウスを持つ手に、力が入らない。カチ、とクリック音だけが、やけに大きく零の頭に響いた。


――それは、彼が最後に世界へ残した“成果”だった。そのまま、腕が机に落ちた。

……ドンッ、と鈍い音。椅子がわずかに軋む。

 モニターには、送信完了の表示。その白い光だけが、静かに零の顔を照らしていた。


――モニターに映る自分の顔が、ひどく他人のように見えた。

「まだ……しご……と……」

 声にならない声が、喉の奥で途切れる。椅子から、ゆっくりと身体が崩れ落ちる。

 床に倒れ込む音が、やけに乾いて響いた。

「ごめん……母さん……」

 病室のベッドに横たわる母の顔が、走馬灯のように零の頭の中に浮かぶ。

 点滴の音。

 消毒液の匂い。

 無機質な白い天井。

 震える母の手。


 医師の言葉――

「原因は、あの病気……”エクリプス”です」


「俺が頑張って働いて、母さんの病気を治してやる!」

――そう、母に約束したはずなのに。


 広いオフィスに、再び静寂が戻る。

 その静寂を切り裂くように……飛行機の、空気が震え、空を覆いつくすような重いエンジン音がオフィスに響く。


 それは零の幻聴なのか、それとも――




――中根 零、28歳会社員。2145年 3月10日午前3時27分。過労により――誰にも看取られず、オフィスでその生涯を終えた……




――どれほどの時間が経っただろう。目が覚めた。

 見慣れぬ綺麗な天井。

 高く伸びる柱。

 色ガラスから差し込む光。

 零は見慣れぬ教会らしき建物の中にいた。

――さっきまであったはずの胸の痛みがどこにもない。


「あれ……俺……ここはどこだ……?」

 その時、見知らぬ銀髪碧眼の女性の声が耳に届く。年齢は……おそらく高校生ほどであろう。

「アルト様ッ!? 大丈夫ですか……?」


 アルト……? そんな人俺は知らない。俺は中根 零のはずだ。

……でも、妙に聞きなじみがある。

――そして妙に建物が大きい。いや、俺が小さくなったのか……?

 反射的に自分の手を見る。どこか幼い手。


「スキル授与の儀式が完了しましたよ。5歳の誕生日、心からお祝い申し上げますわ。」

 零の横に立っていた聖職衣を着たいかにもな女性が優しく微笑んだ。


――ん? 5歳……?俺をアルトと呼んだ人物はとても5歳には見えない。

……ということは、消去法的に俺が5歳の誕生日を迎えたということか?


「スキルは生成と収納……」

 女性が続ける。

――スキル……?その名の通り、”能力”という意味だろうか。

「少々専門的なもののようですが…使いこなせれば、かなり応用は効きそうです。鑑定能力が内包されているようなので、当たりの部類でしょう。」


「アルト様ぁ!」銀髪の女性が、満面の笑顔で言う。

「当たりの部類……らしいですよ?」

「よかったですねぇっ!」

――間の抜けた声が教会に響く。声の主は……先ほどの銀髪の女性だ。

「へ……? なんのことですか?」

――あれ? 声が妙に高い。気のせいか……?

「……というか、あなたは誰なんです?」

 銀髪の女性が、ぽかんと口を開いたまま固まる。

――突然、怒りとも悲しみともつかない表情でわめいた。

「ひどいです!ひどいのですよアルト様ぁっ!」

「この私、アリス・クルーガーを覚えてないんですかぁっ!? 私だって正式なカーレット家の専属メイドなんですよ!?」

「アルト様が生まれた時から、ずぅーっとアルト様のお世話をしていましたのに!」

……なるほど、この人はアリス・クルーガーと言うのか。

――そして俺は、カーレット家の、アルトという人間らしい。

――俺の、アルト・カーレットとしての新しい人生は、もうすでに始まっていたようだ……

最後まで読んでいただき、ほんっとうにありがとうございます!

 Re:ゼロの第一話を見てからというもの、無性に小説を書いてみたくなったので...試しに設定書いてアドバイスもらいつつ執筆してみました。初めての小説執筆なので、どこか違和感を感じる箇所があるかもしれませんが...楽しんでいただけたなら幸いです。日付などにもこだわって書いたので、数周してみるとより面白く感じるかもしれません。設定など、わからない点も多くあったと思いますが、温かい目で見守っていただけると幸いです。一話でどのくらい情報の開示を行うか、かなり悩んだりもしました。

 筆者自身、異世界転生ものといえばあのスライムに転生する超有名作品しかきちんと読んでいないので、かなり影響を受けているかなと感じております...

 ところで、アリス・クルーガーについて、気になった方も多くいると思います。クルーガー家...そうですね、あの有名なフレディさんです。クルーガー家はホラー映画のハッピーセットみたいな家族構成になってるので、この後のストーリーにご期待ください。更新は、なるべく一週間は空けずに書いていきたいところです...文章量、かなり短い気もしますが...これから頑張って増やしていきたいですね。

 《注意⚠️:転生後は三人称視点からいきなり一人称視点に変わるので注意です。》

 長くなりましたが、『異世界工業 ー最強兵器の作り方ー』第一話を最後まで読んでいただき、誠にありがとうございました!気に入っていただけましたら、この後のストーリーも読んでいただけると嬉しいです!!!

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― 新着の感想 ―
こんばんわ! 感想失礼します。 相当悩まれて作られたことが文からわかります。 リゼロに影響を受けたとのことですが私も、葬送のフリーレンを見て書きたいと思いました。 お互い連載がんばろ!
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