表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖女なんて勘弁願います!  作者: 皿うどん
16/16

エピローグ

「では本日の聖女学を始める。名無しの聖女様の予習はしてきたか?」


 教室で教壇に立つ教師が、並んで座った生徒たちを見回した。


「名無しの聖女様は最後の聖女様であり、一番伝記が多い方でもある。みんな、思いつくことを言ってみろ」


 顔を見合わせた生徒たちは、我先にと手を挙げて発言を始めた。


「私たちに、考えることや工夫することを教えました」

「ニセ聖女を追い出した!」

「おいしい料理をたくさん教えてくれたって、ママが言ってた」

「いろんな分野が発展したって」


 教師は満足そうに頷き、軽く手を叩いた。教室が徐々に静まっていく。


「名無しの聖女様は、最後まで自身の名を親しい者にしか教えなかった。夫となった方は南の国の第三王子で、王子は最初に聖女様に正体を隠して近づいたため、聖女様がそれを知ったときには大変お怒りになられた」

「ものすごいお空になったって」

「そうだ。空はこの世のすべての色を混ぜたような不気味なものになり、風が止まり海から波の音も聞こえず、無音になった。いつもお優しい聖女様の静かなお怒りが伝わってくるものだった」


 教師は目を閉じた。いまはおじいちゃんと呼ばれる歳になったが、幼少の日見たあの空はいつでも思い出せる。それほどのインパクトだった。


「聖女様のお許しを受けた第三王子は、本来の名を捨て、聖女様に告げたデリクという名を正式に名乗った。聖女様はデリク様に愛され、結婚なさった。どこの国にも属さず、船で三国を平等に回られた。これも初めてのことで、聖女様の柔軟さがよくわかる話となっている」

「せんせー、聖女様はせんもんてき?なことはよく知らなかったって聞きました」

「そうだ。名無しの聖女様以前は、なにかひとつのことに大変お詳しい聖女様が来ておられた。名無しの聖女様は様々なことを教えてくださったが、詳しいことはよく知らなかった。我々は結果までの工程を研究し、模倣するばかりの停滞から脱した」


 教師は壁にかけられた時計に目をやって、開いた教科書のページをもう一度確認した。


「女神様は、聖女様に幸福であるようにと祝福を与え、聖女様は幸せに暮らしたそうだ。では教科書58ページを開いて。聖女様の軌跡を最初から勉強するぞ」



これにて完結です。デリクの本名を考えていたんですが、出すところがありませんでした…。

最後までお付き合いありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 名無しの聖女がもたらした知識なら義母でもその息子でも与える事ができたと思うんですが本当に贅沢だけでなにもしなかったという事でしょうか?
[良い点] 話の設定が斬新で良かったです。 [一言] 面白かったです。 偽聖女が 前世の義母だとはビックリでした。 それに元夫のザコ感が半端なくて笑えました。 最後の授業風景での終わり方は目新しく…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ