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エピローグ 仲間とのいつもの朝

室内に朝陽がカーテン越しに入ってきた。

一番に意識を取り戻したのは、雄二だった。

倒れている悟と晋一の乱暴に揺すって起こした。


「おい、起きろ」


晋一が跳び起きる。

悟は茫然としている。


「悠希は?!」


「いねぇ……」


沈痛な声。


「そんな……」


悟はすくっと立ち上がった。

手早く身なりを整えると部屋を出ようとした。


「お、おい、悟。お前どこに?」


雄二が慌てて止める。


「探すんだよ。二日間、何事も無かったんだから、間に合うかもしれないだろ」


「おう、そうだよな。ちょっと待て、俺も行くわ」


「お前たち···なら、先ずはあの住職のところに行くぞ」


「うん」


三人はエレベーターで降りた。

フロントを横切ったとき、雄二の目にラウンジにいる祐希の姿が映った。


「祐希···?」


「えっ?何を···」


悟が言葉を失った。

ラウンジの窓際に座り、朝食を摂る祐希を見た途端、へなへなとその場に座り込んだ。


「あの野郎···」


光るものを隠すように雄二は顔を背けた。

晋一がその肩を叩いた。

そんな三人に気づいた祐希が


「おはよう。三人で何処か行くのか?今日、帰る予定だったよな?」


「行くのかって···お前は···」


呆れたような雄二の傍を悟が小走り抜けた。

悟が祐希に抱きつく。


「えっ?悟?」


「祐希···今日のお昼代は···祐希持ちだからね」


掠れた声で告げる。


「えっ?何で?」


「そうだな」


晋一が同調した。


「あっ、俺、河豚のヤツな」


雄二がいう。


「僕もそれにする」


「いいな。三人分、よろしくな」


「はあっ?理由が分からないんですが···」


不満げな祐希に三人が笑う。


「いいんだよ、それで」


「あっ、俺も朝めし食べよっと」


雄二が向いに座った。

悟と晋一も座り、モーニングセットを頼んだ。

窶れてはいるが、以前の祐希だった。

祐希以外の三人は、仲間と取るいつもの朝だと感じた。

コーヒーを飲み、わいわいと雑談に花を咲かせる。


「さぁて、帰り支度するか」




新下関駅から新幹線に乗り込む。

雄二と晋一は"ふくめし"と"ふく寿し"の駅弁を持っている。

もちろん、祐希の奢りだ。

祐希はぶつぶつと文句を言っているが、三人は揃って目を合わせて笑うだけだった。

四人は指定の席に座った。


「祐希、その足元の荷物、邪魔じゃないか?」


「全然···それに、側に置いときたいんだ」


「何が入ってるんだよ、それ?」


「楽器だよ」


祐希は綺麗すぎる笑みを浮かべて答えた。

新幹線が加速する。

帰京後のレポートについて、ああでもない、こうでもないと晋一と悟が話している。

その横で雄二は寝ていた。

窓ガラスに映る祐希の目は暗く淀んでいた。


ビィィィンーー


祐希たけがその琵琶の音を聞いた。

誰にも気づかれないほど僅かに笑う。


ビィィィンーー


祐希の手が、小さく、撥を弾くように動いたのを三人は気が付かなかった。


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