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エピローグ「それでも日常は続く」
朝。
風が穏やかに吹いている。
義経は畑に水をやっていた。
弁慶は隣で欠伸をしている。
「平和だな」
「……そうだな」
短い返事。
だが、その“重さ”は以前とは違う。
すべてを知った上での静けさ。
そこへ、風が吹く。
レモンバーベナの香り。
義経は手を止める。
「……まだ、あるのか」
弁慶が聞く。
「なんだそれ」
義経は少しだけ笑った。
「いや……なんでもない」
ただの風。
ただの日常。
それでも——
確かに何かが“残っている”。
遠くで、ルルの気配が微かに揺れた。
だがもう、それを恐れる必要はない。
義経は空を見上げる。
「これでいい」
誰に向けるでもなく。
ただ、自分に言い聞かせるように。
世界は続く。
歪みも、観測も、その先も。
だが今は——
ただ、生きている。
それでいい。
完結




