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不思議なプレゼント

数週間休載してしまい申し訳ございませんでした。

持病のジストニアが悪化してしまったためでしたが、薬を調整して落ち着いたので本日よりまた再開いたします。


泣かないで 大丈夫だから泣かないで

辛いけど僕がいるから だから泣かないで

君のために慣れるように 僕が頑張るから

だからお願いだ 泣かないでくれ


泣かないで 泣かないでくれ お願いだから

君が生きる未来は もっとかがやくはずだから

だから泣かないで 泣かないでくれよ 僕が隣りにいるから

君の前を照らすから えがおのみらいまで


______________


「えっとこれは……?」

「まあまあ。私からのプレゼントだお。」

「だおじゃねーよ、可愛子ぶるな。」

 今日は金曜日の放課後。

 放課後の学校なんてものに何の縁もなかった僕は、さっさと帰ろうと身支度をしていた時、クラスメイトから「委員長が呼んでる」と言われて、校舎裏にある小さな裏庭にきた。

 そこに待っていた委員長は、普段のはつらつとした表情ではなく、頬を赤らめてうつむきがちで……一体何なのだろうかなんて思っていたら、プレゼントを手渡されたものだから驚かないほうがおかしい。

「急にどうしたの?別に誕生日とかそんなんでもないし……」

「たまたま咲真くんに似合うペンダント見つけちゃって。買っちゃったっ。」

「買っちゃったっ、じゃねーよなんだよペンダントって!」

 慌てて開けた包み紙の中には、ガラスの筒の中に何かの砂が入った、どちらかと言うと女性向けのようなペンダントだった。

「ありがとう、といえばありがとうなんだけど……、いいの?」

「うん。できればずっと身につけていてほしいかな。」

「え、学校でも?」

「……うん。」

 それは流石に……

 匂わせが、とかそういうことではなく、委員長の言っている意図が全くわからなかった。

 学校でこそ僕と話をしてくれる委員長だけど、その本心では委員長だからという義務感が、要所要所で垣間見えることがある。

 だからこんな分かりやすい変化なんてすぐにバレてしまう。

 それでもいいのだろうか……

「私もつけとくから、おそろい!」

「はあ!?」

 ここまでくると、本当にわけがわからない。

「……受け取れないよ。」

「えー、なんで?」

「なんでって……そこまでしてもらう理由もないし、申し訳なさすぎるから。」

 「んー。」と言って何かを考えている委員長。

 この筒に入っているのがなんの砂なのか分からないけど……僕や委員長にとって共通の意味があるものだとしても、これでは委員長が被る犠牲が大きすぎる。

「このことはクラスの皆が知ってるから、つけてもらわないと私が困るんだよね。」

「はあ、なんで!?」

 クラスの皆が知っている?

 もうなにもかも分からなくなってきた。

「……せめて委員長個人の理由だけでも聞かせてくれないの?」

「今はちょっと。近いうちに分かると思う、かな。」

 近いうち、か。

 なんだか最近よく耳にしたり感じたりすることのような気がする。

「夏前までにはっ!」

「夏前……あれ、校長たちが言ってたあれのこと?あれだったらもうやる気してないよ。ゴールがあやふやだし僕個人でどうにかなる問題じゃないもん。南海くんがいる手前ゲイに関する知識はつけるようにしてるけど、いざ行動するなら僕だけの知識と力じゃ無理、力不足だよ。」

「そうだよね……」

 勝手に黄昏れようとしている風のない空を見つめた委員長。

 別に僕としては、もらいたくないというわけではないのだ。

 本当だったら喜んで受け取りたい。

 誰かからプレゼントをもらうのって、本当に何年ぶりかわからないくらいだから。

「この中に入ってる砂って、どこか有名な場所の砂とか?」

「あー…うん!私がこの間出かけたときに、綺麗な砂だなーって思って入れてきたの。」

「は!え!?手作り?」

 「そんなものじゃない。」

 委員長はそう言ったが僕としては気が気じゃない。

 既製品だったらこういうお土産は比較的メジャーかもしれないが、自分で砂を入れたペンダントとなると、まるで意味がわからない。

「むー。受け取ってよー。」

 頬を膨らます委員長。

 しかし……。

「分かったよ。学校のときにつけてればいいの?」

「できれば、ずっと身につけてほしいかな……でも現実的じゃないから学校にいる間だけでいいよ。」

 ……

 サラッととんでもないことを言った気がする委員長も、受け取ってほしいプレゼントなのだとしたら、てっきりいつものようなハイテンションになるって想像してもおかしくない、気がするけれど。

 まあでも……クラスメイトが委員長の事情を知っているなら、僕がこれを少なくとも学校にいる間身に着けていれば、いいのかもしれない。

「特級呪物とかそういうたぐいでも無さそうだし、いいよ。」

「う!うん!……ど、どーぞ。」

「……いやちょっとやめてよ?マジで持ってて大丈夫なものなんだよね?」

「うん……うん………」

「え?」

 なにか言葉に詰まっていると思ったら、目から大粒の涙を流してしまった。

「わ、分かった受け取るから!ね?頼むから泣くのだけは勘弁してくれ…」

 女性の涙というのは、こちらに非がなくともなんでここまで心臓に悪いのだろうか。

 「ごめんね、本当に……ごめんね!」という言葉を言い残して、少しだけくしゃくしゃに潰れた箱を僕に手渡して走り去ってしまった。


 ……


「なんなんだこれ。」

 例えるなら、絶対に吹き飛ばされないようなつむじ風が、十分以上も渦を巻き続けていたような、そんな不思議さ。

 手元に残ったものは小さくて不思議なプレゼント。

「別に……、変なものでもなさそうなんだけどな。」

 そう、なにもないものだったら身につけることくらい別にいいのだ。

 なにも僕の方からのお願いではない、委員長の意思なのだから。

「綺麗な砂だな……」

 どこかで自分で入れてきたなんて変な前情報がなければ、どこぞやの観光地で買ってきたなんて言われても疑わないような、そんな砂だった。

 南海くんになんて言おう?

 彼も結構敏感な人だから、拒否反応をおこすかもしれないな。

「まあ、でも……」

 そう遠くない未来に結論が待っているのだったら、別にいい。

 そう思った僕は、なるべく梱包を崩さずにバッグの中にしまって帰路についた。


目的のわからないプレゼントほど、怖いものはない……


(次回投稿予定日:5月1日22時)

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