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生と死のグラデーション

もうそろそろって言うなら出会いたいものだ

どうせかなわないことだろうけど


いつかきっとなんて言うならきっとそうなのだろう

これも叶うなんてのはありえないんだろうけど


_______________


「ん……なんだ?」

 梅雨入りの頃の早朝というものは、たとえ雨が降っていなくてもなんとなく居心地が悪く、嫌な空気がまとわりついてくる。

「……」

 そしてその一端は、僕の腕に体を密着させて眠っている人のせいでもある。

 時刻を確認すると、朝の八時になる頃。

 ゴールデンウィーク中だから決して遅い時間ではなく、むしろもっと寝ていてもいいんじゃないかと思う時間ですらある……

 しかし一度目が冷めてしまうと、また寝るのもそれはそれで億劫だ。

「起きるかー。」

 総独り言を言って南海くんから腕をそっと引き抜いた僕は、ダイニングへと続く扉を開けた。

 いつもの日常が詰まっている、一番生活感のある場所、のはずだった。

「……あれ?」

 感覚で分かる程度の、全貌が掴めない不思議な感覚。

「んー……?」

 かすかに香る花の香。

 なんだろう、南海くんがどこかで芳香剤でも買ってきたのだろうか。

「まあ……後で聞けばいいか。」

 とりあえずコーヒーメーカーのスイッチを入れて、ザラザラと音を立ててコーヒー豆をセットした。

「……」

 ガラガラという音が、部屋の中を細かく駆け巡っている、

 爽やかな香りを引き連れて……

「ふう。」

 少しだけ心が落ち着いてきた僕は、スマホでこの時期のお出かけスポットなるものを検索してみた。

 すると思った以上にたくさんの候補が出てきて、ファミリー、恋人、友人なんてタグまで付いていることに、少し驚いてしまった。

「これは……どこにいけばいいんだ?」

 別に義務なんてことはないのに、なんだか心のどこかで今しかないって思う自分がいるのだ。

 それもこれも、あの人達が三ヶ月間なんていう不穏な言い方をしてきたからなのだろうけど。

 意味があるとかないとか、そういうのは置いておいて……

 ピーッという音を聞いて我に返った僕は、マグカップにコーヒーを注いで椅子に座った。

「証明って、どうしたらいいんだ?」

 多様性だのなんだの、確かに僕が言い続けていたことではあるが、結局それを客観的に証明させようってなると、なにが正しいのだろうか。

 LGBとTQは分けて考えないといけない。

 それは僕の独りよがりではなくて、決して相容れる関係のものでない故に、誰かに説明する際に障壁にしかならないからだ。

 正直に言うと、この問題は歴史と比較して相応の根拠や理解が得られているとは思えない。

 それは主に環境的な意味合いで。

 医学的根拠ができればすべて解決するなんていうのは、大きな間違いだ。

 それこそLGBTQの人を、一定人数を満たす企業は採用しなければいけない、なんて努力義務ができたらもう世も末だと思う。

 この人、ちょっと能力足りてないけどマイノリティだから……なんて理由で一人分の採用枠が埋まってしまうのは、どう考えてもおかしい。

 それじゃあ僕が言ってきたことはなにか。

 マジョリティを総意とする風潮と、マイノリティがしばし特異だと誤解される風潮をどうにかできないものかというだけのことだ。

 そもそもなんで大切な決め事に限って多数決なのだろう。

 それは時間が限られている授業内で決める手段としての多数決っていうものを、真っ向から否定する気はない。

 ただ、決をとるときに手を挙げなかった人や反対の意見を唱えた人に対する当たりが強すぎるんだ。

「ゲイは黙ってろ。なんてことも言われたっけ。」

 この記憶はまだ新しい方で、数か月前くらいの出来事だったと記憶している。

 ……大前提、僕はゲイじゃない。

 しかしほとんどの人にとって、マイノリティはマイノリティでしかなく、それ以上のことは無いのだ。

 それではこの問題に光をさすことはできないのか?

 個人的には、無いことは無いはずだと思っている。

 僕は人生というものを、白と黒が重なり合うグラデーションで例えることがある。

 白が生きること、黒が死ぬことだ。

 それは見た目や考え方からは想像もつかないくらい、常に隣り合っている。

 そしてそれが重なったグレーのグラデーションの中にいることが、生きているという考え方だ。

 だから誰しも、100%生きていると実感する日なんて無い。

 どこかしらで黒い部分……死に近い部分に置かれる感覚や感情を持っている。

 だからこそ明日また頑張ろうという気持ちになるし、その根拠や原動力になるのだ。

 今日は頑張れたなと思える日は、生きている方向に%が割り振られるし、なにか失敗してしまったり嫌なことがあった日は、死んでいる方向に多くの%が持っていかれる。

「グラデーションか。」

 マイノリティは母数が少ないから、どうしても個人の意見として処理されやすいし、群像の意見としてのグラデーションに欠けてしまう。

 でもそれだったら……

「どうしようもなくね?」

 なんて考えることだってある。

 自分たちがマイノリティで社会生活で不便な思いを被っている、という主張ならできる。

 しかしそれはマジョリティが主語であることが前提であって、マジョリティが存在しているからこそ定義できるのがマイノリティだから、どう考えてもマイノリティの主張には限界がある。

「むしろマジョリティが存在している理由ってこれに尽きるんじゃないか?」

 なんてことも考えたり。

「声を上げれば上げるだけ主語としての主張になりかねないし、そもそも女性っぽい男性や男性っぽい女性もいる中で、細分化されすぎているハイコントラストな世界では好き嫌いもハッキリ分かれる……」

 ……

 そもそもマイノリティとマジョリティって、グラデーションの要領で考えられるものなのだろうか?

 無理難題だとしても、進展させるなら鍵はここにあるのかもしれない。

「あー。久しぶりだな、この感覚。」

 本当に、ほんの少しだけスッキリした気がする。

 そしてまた新しい荒れ地を、開拓しながら進んでいくことになるんだ。


「生きててよかった。」


 僕は自然と、こんなことを口ずさんでいた……


きっと相容れることは、そう容易いことではないだろう。

理性では分かっていても本能が拒絶してしまったり、本能で受け入れても理性では違うことを思っていたり。マジョリティとマイノリティの問題だけではなく、きっと人生はこういう悩みや課題で溢れているのだろう……


(次回投稿予定:4月3日22時)

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