……だから仕方ない
「好き」
「私も大好きです」
タキナと想いを確かめ合っても不安は拭えない。
むしろ大きくなる一方かもしれない。
幸せなのに……。
満たされてるのに……。
無理矢理納得させてないか……?
行為でごまかしてやしないか……? って。
………………
いつまでもサボってばかりもいられない。
学校へ行ってアレクシアとアイシャにベタベタされて、エレノアの小言に付き合い、実技講義を生徒兼教師として受け、姉様とお茶をして、姉様に甘える? 甘えさせる? 日常に戻る。
ただ……座学講義と予定がない時間は図書室に入り浸るようになる。
アイシャが付いてこようとするけど、頬に口づけすると機嫌よく離れるのでまあ良しとしする。
「兄さまぁー、どの本がオススメですかぁ?」
「先ずは、神話、歴史なんかはどうだ? 本は良い。 読めば読むだけ力になる。 後はそれをどう活かすかだがな」
「兄さまぁー。 おじゃまじゃないですかぁ?」
「妹が邪魔な訳が無い。 気にするな」
「兄さまぁー。 お昼にしましょー。 兄さまぁー……。 兄さまぁー……。 兄さまぁー……」
兄様は素敵。
元々、人気イラストレーターの作画で世界一の美形を作ったキャラなのだ、格好よくない訳が無い。
図書室にいる姿は本を片手に、もの静かで凛としてて絵になる。
だが、他の生徒が話しかけてもまったく相手にされず、呼び出すどころかラブレターを受け取る事もない。
会いに行っても相手にされないと思ってた。
ユフィーリアでなければ話す事もできなかったはず。
兄様は優しい。
本を読む邪魔をしなければ何も言わないし、何をしても怒る事はない。
話し方は粗雑だけど飾ってなくて居心地がいい。
ぶっちゃけもとからすごく好みなんだよ……。
ふふふっ、甘えるぞぉー。
甘えて甘えて甘えまくるぞぉー。
ずっと本を読み漁って疲れたら兄様を部屋に連れて行ってベッドに転がし、枕にして横になる。
心地よくてすぐ目が閉じてしまう。
その私をシーズが枕にして転がるけど別に嫌じゃない。
そしてシーズが時折兄様に蹴飛ばされるのは面白い。
「ケラケラケラケラ」
「お前、その笑い方は淑女としてどうなんだ?」
「兄さまの前だからいーのー」
「お前が良くても、パートナーや保護者の恥になる。 人前では慎め」
「兄さま好きー。 よしよししてぇー」
「兄さまぁー。なでなでしてぇー」
兄様に抱きつくと眉間に皺を作りながらも頭をガシガシしてくれる。
もう少し優しくしてくれても良いと思うけど嫌じゃない。
最推しアイドルが一緒にいてくれるってヤバい。
ボクの心の隙間を埋めるのは黒いサラリーマンじゃなくて兄様だっ。
私は兄様が好きだ。
出会う前から好きだったんだから仕方がない……。




