わからないから……心をはむ
「ねえさま……。 もう……いけません」
「だめ?」
「ダメ」
「もう少しこのまま。 会えない時間の分まで……」
「はいはい。 どっちが甘えん坊ですかぁ?」
「15年分だからね」
「よしよし」
「姉様、ではまた」
「うん、また……。 ありがとう」
姉様の部屋を出る時はいつも寂しくなる。
彼女はいつも泣いてしまうから。
それでも幸せの方が多いのかな?
わかんないや。
このセカイでも放課後の学校が物悲しいのは変わらない。
つい偶然の出会いを求めて廊下を歩いて講義室を覗いてしまう。
この頭のモヤモヤを吹き飛ばしてくれるような素敵な出会いを求めて。
でも都合よくそんな物はあるわけがなく、ホールを抜け、庭園の道が終わり、校門にたどり着く。
「ユフィ様」
「タキナぁ……」
もう遅いのに、いつからそこにいたんだろう。
タキナのばか。
ボクのばか。
また視界がぼやけて、そのまま彼女の胸に飛び込む。
いつだって彼女は優しくて、おせっかいで、愛をくれる。
「……ありがとう」
「はい」
帰りの道を言葉なく歩く。
手は繋がないけど隣にぴったりと寄り添って。
誰にも会いたくない。
彼女をさっと抱きかかえて、壁をこえて、窓から部屋に入る。
「きて」
彼女をおろして、ベッドに座り腿をポンポンする。
「ユフィ……私……重いですから……」
「きて」
「はい」
顔にかかる髪がくすぐったい。
重たいわけがない。
彼女は小柄で、華奢で、魅力的。
髪を撫でると彼女が頭をあずけてくれる。
ふわっと良い匂いがしてうっとりする。
目を閉じて、全身で彼女を感じて。
撫でながら、上手くもない鼻歌で愛の歌を鳴らす。
君への想いを、全部伝えられるかな?
君の想いに、ボクは応えられるかな?
君をちゃんと愛せてるかな?
「嫌いになった?」
「なりませんよ。 怒りますか?」
「そっか。 良かった。 怒る訳ないよ」
「なんで膨れてたの?」
「勝手に拗ねてしまって申し訳ありませんでした。 でも、答えは自分で考えて下さい」
「そっか。 わかった」
「私は一晩どころかほぼ一目惚れだったかもしれません。 ユフィは素敵な女性です。 ずっと一緒に過ごしてきたなら好きにならないはずがありません。」
「タキナ」
「初めて出会った夜。 ミネルバ様に命じられて、私も遂にそんな仕事をする時が来たんだって覚悟しました。 実は私の勘違いだったんです。 ミネルバ様がそんな仕事を命じるはずが無いのに……。 そんな私にユフィは優しくて。 強い人なのにどこか儚くて……。 でも、ユフィに付いて、初めてがこの方で良かった。 だから、この方が良いって。 この方に貰ってもらえたら嬉しいなって……。 出会えて良かったです。 私は幸せです」
「ボクもタキナに出会えて良かった。 タキナが好き。 大好き。 きっと愛してる。 でも怖い。 傍にいても、抱き合っても、唇を重ねても……怖いんだよ。 どうしたらいいかわからないんだよ。 考えても考えてもわからないんだよ」
彼女がボクを抱きしめて耳をはむ。
そして舌でゆっくりなぶる。
「んっ……」
ボクを見つめる瞳は深く優しい。
「その答えはタキナにはわかりません。 考えてもわかりません。 だから今は……自分の想いをぶつけます。 ただ、私のしたい事をします」
「うん……」
互いに頬を撫で唇を重ねる。
優しく……、激しく……。
想いをぶつけるように……。




