世界情勢を変える小さな種①
あのあと結局は和解と言うか有耶無耶になった。
俺とシロロは特に俺は責められる前に城に逃げ戻り、乙女達は渋々とだが、彼女達の持ち場に戻った。
まぁ、俺から彼女達へシロロが着ていたような服を贈ることを約束させられたが、一応は平常に戻ったと言える。
第一の城門内にアルバートル達が住み着いた事を除けば。
結局シロロが壊した城門は俺の魔法ですぐに修繕はしたのだが、彼らはその見張り台に自分達が住み着くと言い張り、有言実行支配しているとそういうわけだ。
恐らくどころか、見張り台にある秘密基地風の仮眠室設備が彼らの吟線に触れ、領内の小さな村にある公共の風呂施設の体験と、広場で領民全員で食べた昼食に完全に魅了されたのだろう。
彼らは絶対に追い出されるものかと頑張って居座っているのだ。
だが、彼らが失念していた、というか知り得なかったが正しいのだろうが、俺の支配領は普通に働かざる者食うべからずである。
ダグド領では農作業の出来ない年老いた者は子供の面倒を見たり、自分よりも年老いた者の看病や付き添いをしているのだ。
これは俺よりの強制と言うよりも、生贄や姥捨ての意味で捨てられた彼らが共同生活を送るうちに出来上がったシステムであるといえる。
俺は三度の飯を作ってもらえて面倒を起こさなければ、好きに領内に住んでも良いという程度の領主様なのだ。
何度も言うが、俺は街づくり育成ゲームは好きじゃない。
「困ったね。」
食事と一緒にエレノーラが書いたメモが届けられて呼び出されてみれば、エレノーラ他の領内重鎮達の騎士への不平不満を聞かされる羽目となったのだ。
彼らは農作業をしないくせに大飯ぐらいだと、エレノーラが代表となって俺に陳情してきたのである。
さて、エレノーラ達を住まわせているのは、城と繋がっているが別棟という建物だ。
繋がっているといっても俺が城の台所と洗濯室以外入らせないのだから、彼女達の建物は完全に独立していると言っても良い屋敷であり、そこにエレノーラが領内を差配するための執務室も設えられている。
呼び出された俺は、エレノーラの執務室のエレノーラが仕事する時の椅子に座らされ、エレノーラが執務机の前に立つという状態で、くどくどとエレノーラの話を聞かされることになった。
シチェーション的にはエレノーラが俺を自分よりも上司だからと差配人の椅子に座らせたと考えられるが、実際の俺には俺を逃がさないためにそこに座らせられたような気しかしない。
あぁ、目の前の応接セットのソファにこそ座りたい。
シロロは当たり前のようにソファに座って、賢いエレノーラが餌付け用に用意したケーキの類を一心不乱にもしゃもしゃと食べている。
なんて危険だ。
絶対に、そのうちに、シロロはエレノーラを城内に引き入れそうだ。
「ダグド様?お話を聞いてくださってました?もう一度最初から話しましょうか?」
俺は渋々とエレノーラを再び見返した。