10,境目
お久しぶりです
いつもと変わらぬ日常の中、
"それ"は
着々と俺たちの日常に浸透し始めた。
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「どうだった?」
そう問われた瑠璃色の瞳は、暗闇を一瞥するとふるりと首を振った。
「ダメだな。・・・少しずつ、兆候が出始めている。」
深く、息を吸いこんで、ゆっくりと吐き出す。一度閉じた瞼を再び持ち上げて言葉をつないだ。
「少しでもはやく、知らせる必要があるな。もう、我々だけの問題ではなくなってきている。」
その言葉に一瞬考える。
「・・・集めるのか?」
「いや、それはまだあとだな。"彼女"と連絡はつく?」
瑠璃色の言葉に暗闇からは是と答えた。瑠璃色は少し目を伏せた。考えがまとまったのか、覚悟のともった瞳で暗闇を見据える。
「一度、指示を仰いだほうがいいだろう。"前"メンバーに声をかけてくれ。、、、それに、。」
瑠璃色は一度言葉を切り、今度は口元に笑みを浮かべて言った。
「それに、俺も彼女に会いたい。」
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最近、とあるニュースが多く流れる。
それは、不自然な現象と多くの死傷者。
ある日は、雲もなく晴れていた日に突然の雨。
ある日は、前触れもなく、海上で突然の竜巻。
ある日は、こんなあたたかい日に湖に氷がはり、火の元のない場所でのボヤ騒ぎ。
それと同時に、夜中いきなり襲われた、だの、路地裏で上がった死体。
それぞれ、警察も動いてはいるが、どれもこれといった解決へは向かっていないようだ。
学校ではこんな不気味ともとれるニュースの話はあっという間に人々の話題となる。現に、今、涙がいるのは生徒会室。教師からの注意勧告があるとともに、生徒会でも何やら対策をとるらしい。
(だからって、なんで俺はこんなところに、、、、。)
自分に与えられた机に座り、涙は内心うなだれた。なんといっても、今日は雑用の仕事もなく(というか終わらせた)、閏と佑史と放課後遊ぶ予定だったのだ。映画を観に行く予定だったのである。涙がずっと観ている続きもののアクション映画。2人は知らなかったので、というか一応お坊ちゃんだから映画館自体に行ったことがないらしい、ので、DVDを借りて涙の部屋で前作まで見せたら、ハマったというわけである。(ちなみに、涙は現在一人暮らしをしており、そのマンションは零夜の実家の系列のマンションだ。コンシェルジュ付き。)
それで、公開日である今日、観に行く予定だったのだ。なのに、なのに、、、。
無慈悲にも会長様からのメッセージにより、泣く泣く2人と別れたのだ。というわけで、涙は今恨めしそうな目で会長を睨んでいるのである。
はあ、とため息をついて涙は先ほど渡された事件に関する資料を見つめる。
(対策といってもねぇ、、、。こればっかりは、"どうしようも"ないからなぁ。)
と、再びため息をついた涙。
ふと、気が付けば、先ほどまで聞こえていた腹ぐ、、、城之内先輩の声が途絶えていた。
試料から顔を上げれば、5人の視線がこちらを向いていたため、思わず、ひゅっと息を飲んでしまった。それを悟られぬよう小さく首を傾げておいた。
「聞いていたかい、竜道?」
最近は自分にも外の仮面をはずして普段からは想像がつかないような雑な言葉を吐いていた会長から、ワントーン上げて紳士的で丁寧な外面の声で名を呼ばれ、あ、やば、と会長のほうへ視線を向けた。
にこりと笑みを浮かべた会長様がそこにはいた。
(怒ってる、、、!)
冷や汗を流し、ごまかすようにヘラりと笑えば、大きなため息をつかれた。
あれ、思ってたより怒ってない、と思わずパチリと目を瞬かせれば、彼は口を開いた。
「あのね、竜道。これでも一応、今日のことは悪いと思ってるんだよ?天地と黒峰との約束があったのは知っていたしね。」
と言われ、まじまじと会長を見た。
(え、ていうか、なんで約束のこと知ってるのさ?交友関係も把握されてるし?)
すると、考えていたことが分かったのか会長はしれッとした表情で
「ああ、2人から聞いたんだ。一応、つながりはあるからね。」
と言う。そして、続けて彼は言葉をつなげた。
「それに、竜道には頑張ってもらってるし、正直助かってるんだ。思った以上に仕事ができる。」
先ほどから、会長は口調こそは変えないが、いつもの聞きやすい低音の声で、まるで幼子を諭すように言葉をつなげる。
あまりにも、褒めて労わってくるものだから、涙は思わず苦笑をもらし、口をはさんだ。
「会長。俺は出来ることを、与えられたものをやっているに過ぎません。たいしたことではありませんよ。話、聞いていなくてすみませんでした。」
続けてください、と言えば、彼はハッとしたように姿勢を正し、咳ばらいをした。
その後、対策として、注意勧告と夜の外出の自粛、それから可能な範囲での原因の調査をする、ということで今日の話し合いは終わった。
時刻は18時。
資料をまとめ、鞄へしまうと、ポケットの中のスマホから振動が伝わった。続く振動に着信だと気づき、相手を確認すると、生徒会室の外へと出ていく。
「はい、どうかした?」
『ああ、涙。いや、そろそろ終わったころかと思ってな。』
電話の相手は佑史だった。彼がかけてくるのは珍しいが、どうせ閏に言われたのであろう。
「ああ、終わった。珍しいな、、、ってお前、まだ学校か?」
少しずれたチャイムの音にそう問えば、彼はああ、と返事をした。
『ああ、そうだ。あー、その、、、、涙。』
言いよどむ彼に首を傾げた。
「ん?どうした?」
先を促すように自身の口調が優しくなるのは、珍しく彼が言いよどんでいるからなのか、相手が佑史だからなのか、、、。
口調に変化に気づいたのか、彼は一度言葉を切る。
『あのな、涙。よければ、三人で夕食を食べにいかないか?』
そう言う彼に驚くとともに、先ほどの彼の様子を思い出し首を傾げた。
今までだって、ご飯に行くくらい普通にあった。しかし、これまでの状況を思い浮かべて、一つ思い浮かんだ。
(そういえば、佑史から言い出したことは、なかったな、、。)
思わず、口角を上げ、今の彼の表情を思い浮かべてしまった。
『、、、涙?』
ふふ、と笑みをこぼし、涙は心配そうな彼に返事をした。
「もちろん!」
彼は了解した、と嬉しそうに言った。彼らのところまで向かう旨を伝え、続けて閏に代わってもらえるか聞く。
『はいはーい、閏でーす。』
調子のいい彼の声に涙はにたりと笑みを浮かべた。
「ふふ、お前だな、佑史に連絡させたの。」
『もっちろん!感謝してもいいんだぜ?お前が落ち込んでたの、佑史、けっこう気にしてたんだから。』
彼の言葉に嬉しくなり、笑みをこぼした。
「ああ、そうだな。ふふ、うん。今日は機嫌がいいや。デザートくらいは奢ってやろうか。」
『え!まじで!やったね。いつもの店でいいんだな?』
「ああ、2人がいいなら。じゃあ、すぐ行く。」
おっけー、と返事を聞き、ポケットへスマホをしまい踵を返そうとすると、ドンと前にいた人物にぶつかってしまった。
「う、すみませ、、、、って零夜か。」
相手を確認すれば、眉根を寄せた零夜の姿があった。何か用かと彼を見れば、彼は深々と息を吐きだした。
「お前な、、、ついさっき、夜の外出の自粛が出たばかりだろうに。」
その言葉に涙はそろりと視線をずらした。
きっと、彼は一緒に帰るつもりで自分を待っていてくれたのだろう。同じマンションなわけだし。
「そうだけど、、、。そこまで遅くならないし、閏のとこの店だから車も回してくれる。危険はない。」
そう言えば、彼はふと周囲を見渡し少しだけ声をひそめた。
「けど、今は、、、。」
言葉の先を理解し、涙もため息をつく。
「わかってる、、、。もしもの時は、俺が必ず守る。」
ぐっと拳を握った涙に零夜は再び息を吐いた。こういうとき、こちらの言うことを聞かないことがわかっている零夜は涙の鞄を渡し、校門へと歩き出した。
行き先が同じらしく、零夜の隣に涙は並ぶ。
「、、、リストは届いた?」
涙の言葉に零夜は頷いた。
「ああ。思ったより多かったな。」
「でも、あれが全員じゃない。アレは、それぞれから進言されたものにすぎない。」
涙の言葉に零夜は頷いた。
「そうだな。"俺"のような可能性も捨てきれない。」
「、、、。」
零夜の言葉に涙は黙り込んだ。零夜は足を止め、涙と視線を合わせる。
「涙。俺はお前に感謝しているんだ。涙がいたから俺は俺でいられたし、"人"であれたんだ。」
涙は少し反論しようと口を開くが、何回も繰り返した問答を思い出し、困ったように笑った。
「、、、今日は、みんな変だな。"私"にとって、良いこと尽くしなんだもの。ふふ、うん、今日が命日にならないといいけどね。」
涙の言葉に零夜は笑みをこぼした。
「そうならないといいな。」
2人は並んで、他愛のない話をしつつ歩みを進めていった。
人はそれを、フラグという。
最後ぉぉぉぉぉぉ、って感じですよね。
迷ったんですよ、あの文章のっけるかどうか。
評価、ブックマークありがとうございます。
更新が遅くて申し訳ないんですが、何分アナログ派なもので、、、。
気長に待っていただいて、しばらくたってから存在を思い出してもらえると嬉しいです。
他にも目移りしちゃってましてね、、、すみません。




