9,俺の日常
お久しぶりです。長らくお待たせしました。
噂というものはどこでも、少なくとも一つは存在するものだ。たとえ、その噂が本当だろうと嘘だろうと人々の関心にのれば、どこへともいくものである。
そして近頃、この街で一つの噂が突如として人々の口先にのるようになった。
”アンジェロがこの街へ帰ってきた”、という噂が…。
ある少年は噂をきいて驚いた。
本来なら、表の人間には伝わらないようにこの噂はまわるはずだろう。なのに、”情報屋”を知らないはずの表にまでこの噂は流れてきている。
それほど、急を要するのか、それとも、表に伝えるべき人間がいるのだろうか?
少年はゆるりと首を振った。
事実かどうか裏付けがいる。
しかし、この噂の出所は確実に裏からだろう。この街にいる人間ならば、特に裏の人間なら、”情報屋アンジェロ”という言葉がどれほどの意味を持つのか知っている。そう、考えるのならこの噂は事実だととらえて間違いない。
そうなると、なぜ、情報屋は帰ってきたのだろうか?
一人で悶々と考え込む。
しかし、どれだけ考えても答えは出ない。
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生徒会の勧誘を受けてから約1か月。あれからそれほど目立ったこともなく日々を送っている。
(まあ、何もなかったわけではないけど、、ね。)
思ってた以上のことにはならなかったというのが正しいだろう。
まず、生徒会に呼び出されたということだけで多くの生徒からのやっかみを受けた。彼らは、生徒会の仕事もあって、ほとんど生徒会室から出てくることはないらしい。
それでも、用事が”雑用”のことだとわかれば、逆に憐みの視線をもらった。
その意味はすぐに分かったけど。
とにかく、”雑用”と言いながらも仕事が多い。彼らが自分の仕事をこちらに押し付けている、とかではなく、ただ単純に生徒会の担う役割が多すぎるのだ。
普通の公立、私立校と違って、この学校は本当にすることやること生徒主体。他では教師たちがやっていたはずの仕事がほとんど生徒会に回ってくるのだ。
(ここの教師の仕事って教鞭とって、テスト作って丸つけるくらいじゃない?)
「おー、涙。おはよー。」
「遅かったな。」
そして、なんと、涙に友人ができたのだ。
まず、こげ茶の髪に制服をゆる~く着崩し、ハニーブラウンの瞳の奥では好奇心の色が消えない、チャラそうな見目が天地 閏。実家はホテル経営を基本とした昔から代々続いている家系だ。
もう一人は黒峰 佑史。黒い髪を持ち、眼鏡の奥には氷を思わせるような白銀の瞳を持っている。彼の本家は旧家の一つ。分家であるため、クラスはAクラスらしい。まあ、本家の話をするとき、ただでさえ、冷たい眼差しが氷点下まで下がるし、毎回吐き捨てるように話してるから本人は本家をものすごく嫌ってるみたいだけど。
こんな正反対そうな二人が仲がいいことにも驚いたけど、話しかけられたときはさらにびっくりした。
本人たち曰く、今の時代に家柄ごときで付き合う人物を選ぶなんて時代遅れらしい。それにもったいないとも言っていた。
(ほんと、”運”がいいよな、「私」は。)
取っている授業もほとんどかぶっていて二人と行動することが多くなっている。
いや、でもさ、心理学とか帝王学、はたまた交渉学って高校生の授業じゃなくない?怪物論とか毒物学とか見つけたときには、は?ってなったよ。いや、おもしろそうだけど。受講する生徒も一定数いるみたいだけど。前者はともかく、後者は絶対いらないよな?
と、言えば二人からはえ?という顔された。
「普通じゃん?」
「逆に他は何やってるんだ?」
(え?これ、俺がおかしいの?!いやいや、、飲まれるな、俺。金持ちどもに飲まれるな。)
「普通に数学とかだろ?」
と至極当たり前を装って返せば、そんなの、中等部の範囲じゃないか、と。
(え?いやいや、義務教育でそんな難しいことやってられっか!)
あー、でも、誰かも言ってたな。義務教育で生きていく上で必要なこと8割は終わってるって。高校、大学は残りの2割の上乗せだって、、、。ただ、その2割が難しいだけで。
君らは生きていく上で普通の人の9割分が必要ってことかい、、、。
大変だな、上流階級も。
思わず、涙は一人で考え、納得し、憐みの目を向けた。二人はなんでそんな目をされなくちゃいけないのかわからないと眉根を寄せられた。
「あっれ、でも、涙。それでも授業ついてこられてるよね?なんで?」
「ついていけてるというより、すでに成績上位じゃないか。」
約1か月でなぜ成績についてわかっているのか?それは先生方がレポートの成績を毎回提示してしまうからだ。おかげで涙の名前は毎回一番上か、その下5つ分内に記されてしまっている。
「さらに、あの厳しいことで有名な教授すら涙のレポートを毎回べた褒めするじゃん?」
「おもしろいくらいにな。まあ、一度見せてもらったが、あれは素晴らしいと思う。参考にしている。」
にこりとクール美人に微笑みかけられる。
「あんなのでよければ、いつでもみせますけど、、、!?」
思わずそう言えば、彼はありがとう、と返してくれる。
(ああ、俺の癒し)
ただでさえ、あの厄介な生徒会連中の相手の後だと、彼の素直な言葉が身にしみる。
「で、なんで?」
あざとく、首を傾げた閏に涙はああ、と言葉をつなぐ。
「まあ、俺、大卒だしな。」
「「は?」」
二人は聞こえなかったのか、真顔で聞き返した。
「だから、大学まで履修終わってるの。」
丁寧に言えば、閏がハアアアアア!?と叫んだ。
「え!?年齢偽称!?」
そこかよ。
「違うわ。そしてなんでそこにツッコんだ?」
はあ、ため息をついて涙は口を開く。
「俺、この間まで海外いたんだ。そこで飛び級で大学まで行って、卒業したの。」
そう言えば、驚いて固まっていた佑史が問う。
「なんで、ここに?」
「ああ、それは、俺の育て親に頼み込まれたからな。あの人にはいろいろ恩があるし。それに、こっち戻ってきていくら大卒の学歴があっても就職するには早いかなーと思ったからだ。」
(他にも、理由はあるけど。)
二人は、なるほど、と頷いた。そんな二人を見て、涙はさっきと同じことを思う。
(やっぱり、俺は”運”がいい、な。)
天地 閏
涙の友人。面白そうだったから声かけた。見た目チャラいけど、割と真面目。
行動の基本が面白そうという好奇心の塊。最近では涙からも注意されるが、涙も同類だと思ってる。
涙が佑史に対して悶えてるのをみて、こいつ面食いか、ってなってる。閏自身も顔はいい。アイドル系イケメン。
黒峰 佑史
閏がいったし、でなんとなくで声かけた。思った以上に接しやすく話しやすいので驚いた。
クールで口調も堅いが、出てくる言葉はとても素直でちょっと天然入ってる。本家のことは大嫌いで本家に対してだけは言うこと成すこと容赦がない。涙の友人で癒し。涙曰く、クール美人。
涙
まさかの大学卒業済みの人。佑史の顔は単純に好み。それに癒し属性も入って悶えてるだけ。
閏にばれてることに気づいてない。




