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食事

 それからは御膳に秋刀魚やお味噌汁、ごはんに漬物などを載せて大広間に並べていきました。

 その間に叢雲さんたちを呼んできてもらって、私は厨房に戻ろうとした時でした。


「あれ、静江さんどこに行くの? 」


「厨房ですよ、私は使用人ですから」


「えー一緒に食べようよ」


 そう言われて困惑してしまいました。

 えーと今までそんなことはなかったし、急にお誘いを受けても準備ができていないのでお断りすべきでしょう。

 

「私の分は準備がまだですし、皆さんお先にどうぞ。

お代わりが必要な時は申し訳ありませんがお櫃から各自で……」


「却下、俺の魚半分上げるから」

「なら俺はお漬物上げるし」

「俺なんか魚のお頭あげるぞ」

「じゃあおれは……お味噌汁の具をあげるぞ! 」


 ……なんでしょう、こんなに優しくされたのは初めてです。

 もしかして私、近々解雇されてしまうのでしょうか。

 あぁそれなら先ほど皆さんが手伝ってくださったのも納得です。

 炊事を学ぶ必要があったんですね。


「皆様お世話になりました……」


「え? 」

「え? 」

「え? 」

「え? 」

「え? 」

「え? 」


「え……? 」


 違うのでしょうか。

 私てっきりクビだと思ったのですが……。


「おぉうまそうな飯だな」


 そう思って、冒険者の皆さんと見合っていると叢雲さんたちが奥の部屋から出てきました。

 この際ですからはっきり聞いてみましょう。


「あの、叢雲さん……私は解雇されるのでしょうか」


「は……? 」


「いえ、皆さんこんなに優しくしてくださるのは初めてですし、一緒にご飯を食べようとまで行ってくださいました。

以前友達がそう言われて解雇を言い渡されたといっていたのを思い出してしまいまして」


 その時友人はぽろぽろと涙を流しながらお酒を飲んでいました。

 ぐでんぐでんになった彼女を連れて帰るのは大変でしたけど、そういうこともあると心構えはしていたのですが。


「いや、そんな話はないけど。

つーかむしろこれから仕事が増えるというかなんというか」


「……ならなんでみなさん急に? 」


「……女が多いからね、冒険者としてこう、荒くれものな一面もあるけど中身はほら乙女というかうんほら」


 ……あぁなるほど!

 ねかま、というやつの関係ですね。

 察するに思い人がいらっしゃるのでしょう。

 もしかしてねかまとは未通女のことではなく、思い人ができた女性のことを指すのでしょうか。

 それで冒険者としては一流の皆さんですが、私たちのような平民がどのような方法で異性にお近づきになるかとかそういった話が聞きたかったとかそういうことでしょうか。

 あと花嫁修業の一環で炊事の勉強ということでしょうか。


 それならすべてがつながりますね。


「そういうことであればご一緒させていただきます!

私も冒険者の皆さんのお話しをいろいろ聞いてみたいです! 」


「あぁうんそうだね、よろしく……」


 歯切れが悪い叢雲さんですが、そういえば彼女もねかまといっていましたね。

 今度綺麗なかんざしが売っているお店とか教えてあげたほうがいいのでしょうか。


「まあなんにせよまずは飯だ!

しっかり食ってこの後に備えよう」


「はい! 」


 そこまで言って私は自分のぶんのごはんを作っていないことをおもいだしました。 

 皆さんは分けてくださるといっていましたが、もともとあまりものをいただく予定だったので……。


「おーい静江さん、こっちで一緒に食べよう」

「あずるいぞ、こっちにきなよ」

「いやいやこっちへ」


 皆さんのやさしさに思わず涙が流れそうになります。

 ではお言葉に甘えてお茶碗と小皿を持って下座へ座らせていただきます。

 そうすると小皿に山持に、お魚やお漬物が詰まれて行きます。

 あぁこんなに食べきれるのでしょうか。


「それじゃ、いただきます! 」


 ぱんっと手を合わせてから食べ始めた叢雲さんに続いて皆さんも同様に手を合わせてがつがつと食べ始めます。

 すごい人は秋刀魚を頭からバリバリとかじっています。

 あ、私も冷めないうちにいただきましょう。


「いただきます」


 ぱくっ、と口に運んで違和感を覚えます。

 あれ、秋刀魚ってこんなにはっきりした味でしたっけ。

 ご飯の香りも、お味噌汁の味も、お漬物の風味も、全てが新鮮です。

 慣れない環境のせいでしょうか。

 それともほかの理由でしょうか。


 なんにせよおいしいことに変わりはないので、いいことですよね。

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