第80話 最凶最悪の魔王
【保有DP:188,920】
【侵食率:12.0%】
【ダンジョンランク:S】
【階層数:8】
【七王統率:5/7】
神将を倒した後。
俺たちは炎王イフリートと影王ノクスの領域へ向かっていた。
残る七王は二人。
地下世界統一の最後の欠片だった。
◇◇◇
最初に現れたのは炎王イフリートだった。
燃える大地。
溶岩の海。
その中央で、男は豪快に笑っていた。
「神将を喰ったらしいな!」
第一声がそれだった。
隠す気もない。
回りくどさもない。
実に分かりやすい。
「ああ」
「最高じゃねぇか!」
炎が吹き上がる。
山が燃える。
だが本人は気にしていない。
豪快そのものだった。
「オレは神界が嫌いだ」
イフリートが言う。
「大嫌いだ」
ユグドラとも。
フェンリルとも。
少し違う。
もっと単純な憎悪だった。
「だから戦う」
黄金の瞳が俺を見る。
「だが誰かの部下になる気はねぇ」
そこで俺は笑った。
「ならなるな」
沈黙。
「……は?」
「勝手に暴れろ」
イフリートが固まる。
フィリアも固まる。
だが俺は続けた。
「神界を潰せればそれでいい」
数秒後。
炎王は大爆笑した。
「はははははは!!」
空が燃える。
大地が揺れる。
「気に入った!」
その瞬間。
炎王は膝をついた。
【七王統率】
【6/7】
◇◇◇
そして最後。
影王ノクス。
こちらは真逆だった。
静か。
冷静。
疑り深い。
巨大な影の宮殿で、ノクスは一度も笑わなかった。
「私はお前を信用していない」
開口一番だった。
「だろうな」
俺は頷く。
当然だった。
出会って数分。
信用される方がおかしい。
「なら何故来た」
俺が聞く。
ノクスは答える。
「神界を滅ぼしたい」
それだけだった。
七王は皆同じだ。
方法は違う。
性格も違う。
だが神界だけは嫌っている。
「信用しなくていい」
俺は言う。
ノクスが眉を動かす。
「神界を潰した後で裏切ればいい」
静寂。
そして。
初めて。
ノクスが笑った。
「面白い」
その一言で十分だった。
影王は立ち上がる。
そして俺の前へ来る。
「なら最後まで付き合おう」
【七王統率】
【7/7】
◇◇◇
その瞬間だった。
地下世界全体が震えた。
【特別条件達成】
【地下世界統一】
【達成】
轟音。
魔力の奔流。
第一階層。
第二階層。
第三階層。
全ての階層へ通知が響く。
長かった。
本当に。
スイ一匹から始まったダンジョン。
新人冒険者三人に怯えていた頃。
王国を恐れていた頃。
全てが遠い昔に思えた。
【地下世界の王】
【称号獲得】
だが。
その称号ですら通過点だった。
◇◇◇
世界樹が揺れる。
今までで最大。
深層主が現れる。
最後の番人。
神代の怪物。
地下世界最強。
「終わったな」
「ああ」
「なら受け取れ」
深層主は自ら胸へ爪を突き立てた。
黄金の光。
番人の核。
神代最後の力。
それが取り出される。
「お前が次だ」
核が俺へ吸収される。
世界が震えた。
【最後の番人を継承】
【称号進化】
【地下世界の王】
↓
【地下世界の魔王】
侵食率が跳ね上がる。
【侵食率】
100%
到達。
完全侵食。
その瞬間。
俺は理解した。
ダンジョンとは。
侵食率とは。
神界が恐れていたものとは。
全て。
神へ届くための力だった。
◇◇◇
空が割れる。
神界への道が開く。
その場には全員がいた。
スイ。
リリス。
フィリア。
深層主。
炎王イフリート。
影王ノクス。
海王リヴァイア。
獣王フェンリル。
樹界王ユグドラ。
地下世界の全て。
全戦力。
全てが揃った。
そして。
神界の向こう。
巨大な玉座。
そこに座る存在。
【神界支配者を確認】
【創世神】
静寂。
誰も恐れていない。
スイが笑う。
「ごはん?」
リリスも笑う。
イフリートが炎を噴き上げる。
ノクスが影を広げる。
フェンリルが牙を剥く。
リヴァイアが海を割る。
ユグドラが世界樹を揺らす。
深層主は静かに目を閉じた。
俺は前へ出る。
最初は何も持っていなかった。
スライム一匹。
小さな洞窟。
それだけだった。
だが今は違う。
地下世界全てが俺のものだ。
なら。
次は神界だ。
「行くぞ」
俺は笑う。
神も。
世界も。
運命も。
全部喰う。
最強最悪の魔王として。
【完】




