第64話 英雄を喰らう者
【保有DP:7,380】
【侵食率:6.3%】
【ダンジョンランク:C】
【吸収ダンジョン数:3】
アルディア王国は一夜で死んだ。
その事実を理解できている人間は、まだほとんど存在しない。
王は消えた。
四英雄も消えた。
だが王都の人間たちは、まだそれを知らない。
彼らは今も混乱の中で「何か異常が起きた」としか認識していなかった。
それでいい。
俺は革命家ではない。
王になりたいわけでもない。
国を治めたいわけでもない。
欲しいのは国ではなく力だ。
だから王都を占領する必要もない。
玉座に座る必要もない。
王と英雄を回収した時点で、俺の目的は半分達成されていた。
現在、俺たちは王都地下にある放棄された地下神殿へ移動している。
そこを一時的な拠点にしていた。
目の前には魂炉。
そして。
今までで最高品質の魂が並んでいる。
【特級魂】
【国王アルベルト】
【英雄アルバート】
【英雄ガレス】
【英雄エルド】
【英雄レオナ】
壮観だった。
今までの施設化とは意味が違う。
王国そのものを支えていた存在たちだ。
その価値は計り知れない。
「ご主人様」
リリスが静かに言う。
「どれから使いますか?」
俺は迷わない。
まず英雄だ。
王は後回しでいい。
王より英雄の方が強い。
この世界はそういう世界だった。
最初に選んだのは剣聖エルド。
【施設化候補】
【剣聖修練場】
【極限戦闘演算施設】
【剣技継承の間】
どれも強い。
だが今欲しいものは決まっていた。
【剣技継承の間】
【施設化開始】
魂が光になる。
その瞬間。
第二階層全体が揺れた。
以前の施設化とは規模が違う。
巨大な訓練施設が出現する。
中央には半透明の剣士。
剣聖エルド本人だった。
生前の技術だけを永遠に再現する存在。
それを見たスイが目を輝かせる。
「戦える?」
「戦える」
「やる!」
即答だった。
数秒後には施設へ突撃していた。
そして。
一分後。
吹き飛ばされていた。
「強い!」
嬉しそうだった。
意味が分からない。
だが楽しそうなので良しとする。
次。
俺は英雄レオナを選ぶ。
四英雄最強。
王国の守護者。
そして最後まで抵抗した女だった。
【施設化候補】
【英雄指揮所】
【軍略演算施設】
【戦場支配領域】
ここで全員が固まった。
軍略。
指揮。
支配。
今までなかった系統だ。
つまり。
軍団運用。
ダンジョン経営。
大規模戦闘。
そういう方向の施設だった。
俺は迷わない。
【戦場支配領域】
【施設化開始】
光が広がる。
次の瞬間。
第二階層全域へ魔法陣が刻まれた。
【味方強化領域を獲得】
【配下能力補正+20%】
沈黙。
そして。
「おかしい」
フィリアが呟く。
「何がだ」
「強すぎる」
確かに。
俺も同意見だった。
英雄施設は別格だった。
そして。
ここからさらに加速する。
ガレス。
アルバート。
二人も施設化する。
攻撃。
防御。
治癒。
全てが揃う。
その頃には第二階層の景色が完全に変わっていた。
もはや初期ダンジョンではない。
小国程度なら飲み込める戦力を持つ要塞だった。
その時だった。
魂炉が最後の魂へ反応する。
国王アルベルト。
俺は少し考える。
正直、王より英雄の方が価値が高いと思っていた。
だが。
表示を見て考えを改めた。
【施設化候補】
【統治の間】
【国家運営演算施設】
【王権継承施設】
思わず目を細める。
なるほど。
王の価値は強さではない。
支配だ。
組織運営だ。
国家そのものだった。
そして。
その瞬間だった。
魂炉が突然震え始める。
警告音。
赤い表示。
全員が反応する。
【条件達成】
【ダンジョンランク昇格条件を確認】
【王国中枢壊滅】
【英雄五名吸収】
【次段階へ進化可能】
空気が変わる。
スイも。
リリスも。
ブラッドファングも。
全員が表示を見る。
そして。
王国は終わりだ。
次はさらに上へ行く。
深層主。
地下世界。
その全てを喰らうために。




