柴田さん
「打ち合わせでもお話しましたが、この村は自殺の名所でして、年間何十人もの遺体が出てきます。老若男女さまざまな人がいます。もちろん身元不明の方も多いですが、身元が判明してご家族に迎えに来ていただく場合もあります。そして中には、身元が判ったものの、天涯孤独で身寄りが全くいない方が結構いらっしゃいます。そのような場合、その方の身元を徹底的に再調査し、その方に身代わりになっていただくと幸せになれるような人、つまりあなたのような方を探し出して提案するのが私の仕事なんです」
山田社長一家は、これから山田の代わりに亡くなってくれる人の顔をじっくり見つめ、心に焼き付けているようだった。どことなく山田に似ているような気もした。
浦河は、ベッドの横にあるバックからビニール袋を取り出し、山田に渡した。
「柴田さんの所持品で、免許証など身分がわかるものです。特に免許証は、顔写真があるので注意が必要です。山田さんの顔を柴田さんの顔に近づけるような整形をすることもできますがどうしますか」
「その話は初めてですね」と山田は、少々びっくりしたように言った。
「はい、そうです。これはオプションですから。山田さんの顔って柴田さんになんとなく似てると思いませんか」
「そういわれてみればそうかも」と妻が言う。
「実は、今回、計画の提案先として選ぶときの基準に、背格好や顔が似ているかという項目もありまして、山田さんはそれもパスしてるんです。ですから整形するといっても、皺や鼻筋など少しいじる程度で免許証の写真にかなり近づけることが可能です。また、整形は知っている人にあったときにごまかしやすいという利点もあります。費用はだいたい30万円くらいですね。いかがされますか」
「なるほど、で、その整形手術はどこでやるんですか」
「この診療所の先生が行います。腕は確かですよ」
「えっ、ここの先生に頼んだら、計画がばれてしまうじゃないですか」
浦河は、にやりと笑って
「この計画、お医者さんの協力がなくてもできると思いますか」
「・・じゃあ、あのお医者様もグルなんですか」と娘が言った。
浦河は、カクンと気の抜けたような目つきをして
「グルとはちょっとひどい言い方ですねぇ、理穂さん」
理穂はごめんなさいと小声で言って、ペロリと舌を出した。




