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裏葬儀屋  作者: 燕兄さん
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怪しい男

「とうとうだめか・・・」

 不渡りを出した社長の山田正一は頭を抱えた。

 20年間なんとか続けてきた彼の会社は、昨今の不況のあおりをまともに受け、倒産する一歩手前になっていた。

 多額の負債を抱え、できることはなんでもやった。倒産を回避するため社長としてはやってはならないサラ金や闇金、粉飾決済まで手を出した。

 しかし、その努力の甲斐もなく、事業は好転せず50人いる社員への給料支払いさえままならない状況になりつつあった。


「おれの人生も、もう終わりか・・・」

 山田はそうつぶやき、タバコを吸おうとタバコの箱のふたをあけたが、とっくの昔に空になっていたことを思い出した。山田は空箱を力いっぱい握りつぶすと社長室の隅にあるゴミ箱へ向かって投げつけた。タバコの空箱は、ゴミ箱をはずれ床に転がった。



「社長、お客様ですよ」

 その時、受付の女子事務員が来客があることを告げた。


 社員には会社の状況をまだ話していない。勘のいい社員はうすうす気付いているかもしれないが、とりあえずギリギリで給料は払っているので表立った騒ぎはまだ起きていない。

 だが、近い将来倒産となればこの女子社員も失業してハローワーク通いになってしまうのだろうと思うと心が痛んだ。


 その女子社員に案内されたらしく、社長室の扉の前には、濃紺色のスーツで身を固め黒いバックを持ったひとりの男が立っていた。


「どちらさまで・・」

「初めまして、私、こういうものでございます。」

  男は、そう言いながら名刺を差し出した。

『セレモニー・ビレッジ・コーポレーション 浦河 歩』と書いてある。

「ええ・・と、・・」

 反応に困っていると、

「葬儀屋、でございます」

「はあ、葬儀屋さんですか・・今、用事はないなぁ」


 もしかしたら近々お世話になるかもしれない、なんという皮肉な営業マンだろう・・山田社長は、思わず口端をひねって自虐的な笑いを浮かべ、もう一度名刺を見てみておかしなことに気がついた。


 名刺には、『セレモニー・ビレッジ・コーポレーション 浦河 歩』以外の文字が何も書いていないのだ。普通、住所や電話番号、FAX番号、メールアドレスなど連絡先が書いてあるはずだが、一切書いていない。裏返してみると端のほうに小さく「036」と番号が印刷してある。なんの番号だろう。当然電話番号であるはずがない。


 山田社長が、差し出しされた名刺の造りに頭をひねっていると、浦河と名乗る営業マンが口を開いた。

 「1億5千万円ですよね」

 「・・・・・」

 突然金額を言われた山田社長は、なんのことやら皆目検討もつかず阿呆のように口を半開きにして浦河の顔を見つめた。

 「はあ、・・」

 その営業マンはそういう相手の反応に常に接していて、慣れきっているような態度と口調で話をはじめた。

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