京都観光
酒呑童子さんとの戦いは肉体的な疲労よりも、精神的な疲労の方が大きくなってしまっています。
私たちは冒険者ギルドの方々と共に京都市内まで車で連れて行ってもらいました。
「ありがとうございました」
「いえ、宿の方もこちらで取らせてもらいましたが、よかったですか?」
「むしろ、ありがたいです」
冒険者ギルドの方々と別れた私たちは宿に向かうことにしました。
「ふぅ、今日は宿でゆっくりしましょう」
「はい。お疲れ様でした」
冒険者ギルドからの指名依頼ということで、宿の手配は冒険者ギルド側がしてくれました。
「京都市にあるNazuna 京都 御所というところですね」
「えええ! 私も聞いたことがある有名なホテルです。憧れの場所だったんです!」
「そうなんですか?」
大型の京町家2棟を改修して、全7室のラグジュアリーなオシャレ旅館さんです。
高い天井に走る梁、美しく装飾された建具など。
随所にかつて材木屋として使われていた頃の名残を残しながらも、客室ごとに異なる和菓子をテーマとした現代的なインテリアが調和した独創的な空間が広がる。
一度は行ってみたい旅館でした。
「すごく詳しいんですね」
「はい! 社畜時代に、旅行に行くならどこにいきたいかと思って調べていたんです。いつかは行きたいと思っていたところなのです」
疲れていた心も癒されるほどの旅館に、私は嬉しくなってしまいます。
「それでは入りましょうか?」
「はい!」
チェックインをして、夕食も旅館でご用意していただけたので食事を食べる場所に向かうと囲炉裏でした。
美しい中庭が見える囲炉裏で、焼き串とお鍋が用意されているのです。
おひつごはんに囲炉裏で焼かれた牛肉と野菜の串焼き、暖かいお鍋が雰囲気と心を優しく包み込んでくれました。
食事のおいしさはもちろんですが、心からほっこりと温まる楽しい食事になりました。
おひつごはんを30杯ほど食べて満足されたのか、ミズモチさんはすぐに部屋に戻ってしまいました。
酒呑童子さんに対して、ミズモチさんは対抗できていると思っていましたが、やはり格上の相手をして疲れてしまったのでしょうね。
私たちは夕食が終わった後に深夜時間まで囲炉裏ラウンジにて、アルコールやソフトドリンク、軽食を無料でご提供してくれる場所でお酒を楽しむことにしました。
「ハァ〜オシャレですね」
囲炉裏のオシャレさに流されて、飲みすぎてしまいました。
空間の魔力というものがあるのでしょうが、楽しくなってしまいます。
「ふぅ、酒呑童子さんとお酒を飲んでみたかったですね」
「はい。気持ちの良い魔物さんでした」
「ミズモチさんのような可愛い魔物さんもいますからね」
「そうですね。ヒデオさんはテイマーさんですから、魔物さんとの出会いもあるかもしれませんね」
「はい。ですが、その前に白鬼乙女さんを救ってからですかね」
私の最終目標といえば良いのか、白鬼乙女さんを自由にしてあげたいのです。
「そうですね。今日は疲れましたから、そろそろ」
「はい」
部屋に戻ると中庭に露天風呂が設置されて、檜の屋根に石の壺湯がありゆっくりと温まることができます。
体を洗う場所と室内の檜湯もあり、部屋でもゆっくり楽しむことができます。
「湯上がりに」
私たちはラウンジでもらってきた日本酒を空のコップに注いで、月に向かって乾杯しました。
酒呑童子さんに捧げるようにお酒を楽しみます。
「ブル〜」
そんな私の前にミズモチさんが座って、酒呑童子さんに注いだ日本酒を飲まれました。
「美味しいですか?」
「ブル〜」
どうやら美味しいようです。
一升瓶でもらってきたので布団に入ったカオリさんとは別に、ミズモチさんと一緒に日本酒を飲んで、酒呑童子さんたちを労う一時を過ごしました。
「ミズモチさん。いつも私たちを救ってくれてありがとうございます」
「ブル〜」
「ふふ、こうしてのんびり過ごす時間はミズモチさんがいてくれると、更にいいですね」
私はミズモチさんを抱き上げて、お膝の上に乗っていただきました。
縁側で月を見ながら、ミズモチさんと一献。
京都から見える冬の空は澄んでいて、月明かりだけでなく星々も美しく見えました。
「ミズモチさん。たった一年で遠くまできたような気がしますが、私たちは何も変わりませんよね?」
「ブル〜」
「もうすぐ年越しです。それまでには一度東京に戻って、白鬼乙女さんを攻略したいです。そして、白鬼乙女さんとカオリさん。何よりもミズモチさんと一緒に実家に帰って賑やかな年越しを過ごしたいと思っています」
「ブル〜」
そのためにも私は白鬼乙女さんを攻略するために頑張らなくてはいけませんね。
鬼切丸をくれた、ガシャ髑髏さんのような化け物が出て来ることも覚悟をしなくてはいけません。
「ずっとカオリさんに支えられて、ここまで来ました。ですが、ご近所ダンジョンさんはカオリさんは入れません。それは鬼人化の暴走を止めてくれる人がいないということです。白鬼乙女さんを倒すためには鬼人化をしないわけにはいきません。私は無事に帰って来れるのでしょうか?」
ふとした、不安が胸を締め付け、ミズモチさんを抱きしめてしまいます。
ミズモチさんは、私の胸で優しくプルプルと震えておられました。




