四国旅行 9
黒いのっぺらぼうマネキンを倒しながら、なんとか地下二階に降りるところまでやってきました。
地下二階は、バロックからルネッサンス時代へ移行していく名画が飾られています。
レオナルド・ダビンチやフェルメールなど、有名な名画が飾られているので、ゆっくり見ていたのに、今度は茶色頭をしたのっぺらぼうマネキンが現れました。
「茶色のっぺらぼうマネキンですね」
「はい。私の攻撃は全て効果がないようです」
《闇》魔法に、理力の杖での打撃など、地下一階で使った攻撃は全て効果がありません。
カオリさんのレベルも上がりましたが、新しいスキルは手に入れることはできませんでした。
「ここからは私が相手をします。元々Aランクは危険なダンジョンです。カオリさんがここまで戦ってくれたおかげで、私とミズモチさんは地下二階に辿り着くことができたんです。むしろ、誇っていただきたい」
私はここに来るまで、カオリさんのことが心配で不安でした。
ですが、冒険者として、カオリさんは役目を果たしてくれたのです。
ここからは私の仕事です。
ミズモチさんがカオリさんを守ってくれていたのはわかっていますが、それでも不安でした。ですから、やっと私が前に出て戦えることで覚悟は決まっています。
「ありがとうございます」
「ミズモチさん。ポーションをいくつか出していただけますか?」
「ヴュ〜」
カオリさんと冒険をするために、アイテムはある程度充実させるようにしています。全てミズモチさんに持ってもらっているのはもうしわけありませんが、ミズモチさんに預かってもらっていたアイテムを出して、カオリさんに渡します。
「もしも、私やミズモチさんが動けなくなった時は、ポーションを使って助けてください」
「はい! ありがとうございます! 役目を与えてくれて」
「いえ、私たちはチームです! 互いにできることをして補いましょう」
「もちろんです!」
私は拳を突き出してカオリさんとぶつけました。
白金さんを構えてミズモチさんへ乗り込みます。
茶色のっぺらぼうマネキンさんは、今まののっぺらぼうさんたちと違って、ゆったりとした動きながらも攻撃をする構えをしました。
「おや?」
今まではこちらの攻撃を受けるか、それに反撃するような対応でしたが、初めてのっぺらぼうから攻撃を仕掛けてきます。
「おっと!」
腕が伸びて鞭のようにしなっております。
しかも、一体ではなく、二体、三体と数を増やして連携を取り始めました。
その動きはまるでチームのように、鞭、拳、盾のように茶色いのっぺらぼうマネキンは、これまで見せたことがない連携をとってきたのです。
「なっ!」
「もしかして、私たちだけでなくこれまでここに挑戦した冒険者の攻撃方法を記録しているのかもしれません」
「それはかなり厄介ですね!」
カオリさんの考察を聞きながら、私はレベルが変化したことを悟ります。
ここからは、挑戦した全ての冒険者を相手にしなくてはいけません。
私の攻撃も効かない恐れがあるということです。
「ミズモチさん、ここからは一撃必殺で倒していかなければいけないようです。できますか?」
「ヴュ〜」
《任せて〜》
どこまでも頼りになる相棒です。
「ミズモチさん。同時に三人を倒します」
「ヒデヴュ〜」
危機察知さんはレッド信号を出してしますが、今の私とミズモチさんなら問題ないはずです。
「ミズモチさん。ウォーターカッターを同時に発射お願いします。相手の弱点は眉間です」
カオリさんのブラックボールが額に当たった際に一撃で倒すことができました。どうやらのっぺらぼうのおでこの部分が弱点になっていると考えられます。
「ヴュ〜!」
ミズモチさんのウォーターカッターによって三体が同時に倒れて魔石になります。
「よし!」
ですが、わらわらと大量の茶色のっぺらぼうマネキンが、大軍となっておしよせてきました。
地下三階まではもう少しなのに、まるで最後の階に降りられるのを嫌がるような行動に私は彼らを無視することにしました。
「カオリさん、掴まってください!」
私はカオリさんを抱き上げてミズモチさんに壁を走ってもらいます。
腕を伸ばして捕まえようとするのっぺらぼうたちに触れられないように結界を張ってミズモチさんに足場を作りました。
大量に埋め尽くされたのっぺらぼうたちを飛び越えて地下三階へ降りる階段へ飛び込みました。
途中までは追いかけてきていたのっぺらぼうたちも三階フロアに到達すると動きを止めて上のフロアに戻って行きます。
三階フロアは静かでした。
どの部屋に入ってものっぺらぼうはいません。
残されているのは、システィーナ礼拝堂天井画と壁画がある広場だけです。
「カオリさんここで待っていてくれますか?」
「いえ、一緒に行きます。ここにいても私一人では帰ることもできませんから」
「……すいません。こんな危ない場所に連れてきてしまって」
「いいえ。私たちは死ぬのも、生きるのも、一緒です」
カオリさんがキスをしてくれました。
不思議ですね。それだけで勇気をもらえた気がします。
「わかりました。一緒に行きましょう」
「はい!」
「ヴュ〜!」
私たちはミズモチさんを間に挟んで抱擁します。
何があろうと生きて帰る覚悟をしなければいけませんね。




