突撃します!
長さんは本当に優しいです。
私の個人的な話なのに、わざわざ夜に遠い駅までやってきてくださいました。
「お待たせしてごめんなさいよ」
「全然待ってませんよ。むしろ、私の方こそご足労いただきありがとうございます」
「何々、事件の可能性がある話だったからね。ちょっと気になることがあったんだ。ちょっと昔馴染みにも連絡を入れているんだけど、いいかな?」
昔馴染みと言われてもよくわかりませんが、何も問題ないと思います。
「はい。全然問題ありません。長さんにお任せします」
「君は素直だね。うむ、それじゃいきましょう」
「はい!」
私は何が起きているのかわからなかったので、簡易装備を着てきました。
服の下に全身白タイツを着てきました。
多少の攻撃は防げると思います。
「ここですねぇ〜。やっぱり」
「やっぱり?」
「いやね、ちょっと阿部君が教えてくれた住所を調べたんだ。そしたら気になる人物が該当してね」
長さんはやっぱり頼りになりますね。
このような豪邸に住まわれている方のことまで調べてくれるなんて、私ではできないことです。
「そうそう、阿部君。弁護士さんにご連絡をしておいてくだいませんか?」
「えっ? 弁護士さん? マリアさんですか?」
「そうそう、あの別嬪さんに事情を話して一報しておきましょう」
「わかりました」
なんだか大事になってきましたが、私は長さんに言われるがままに、マリアさんに連絡を取りました。
マリアさんは私の電話をすぐに取ってくれて、テレスさんのことではないのですがと前置きして、事情を話しました。
そして、長さんからマリアさんに連絡をしておいた方がいいと伝えると、長さんに代わってほしいと言われました。
スマホを長さんに渡して、長さんが私と距離をとって電話を始めました。
「お待たせしました。それではいきましょうか」
長さんは電話を切って、私に返してくれました。
「もういいのですか?」
「十分です。阿部君、少しだけ前置きをしておきます」
「はい!」
真剣な顔になった長さんが、私の瞳を見つめました。
「ここに住んでいる男は亀津という男で、悪徳金貸しを生業にしている者です。バックにはそれなりの組織がついておりましてね。多分ですが、あなたの婚約者の両親は裏に手を出したのでしょうね」
「裏?!」
普通の生活をしている私には理解できない世界で、映画やドラマの世界のように思っていました。
現実にそんなことが存在するのかと思ってしまいます。
長さんは残念そうな顔をして頷かれました。
「ふふふ、ですがね。ある意味で冒険者という職業も裏なんですよ」
「えっ? そうなんですか?」
確かに魔物相手に荒事をしていますが、悪いことはしていません。
「組織の人間も悪いことばかりしているわけではありません。家族がいて、彼らなりの仕事をしているんです。ですから、立場あるもの、裏に手を出さない者には何もしないものです。ですが、裏に手を出した者。そして、立場が崩れそうな者は壊しにやってきます。今、阿部君がいるのはそんなギリギリな場所だということです」
長さんの言葉に私は唾を飲み込みました。
正直な話、怖いです。
どうしてカオリさんがそんなところにいるのかも事情は分かりません。
「脅かしてごめんなさいよ。だけど、最悪を想定しておいて欲しくてね。恋人さんにもしものことがあった場合。君を止めることは私一人ではできない」
長さんの言葉にグッと心臓が掴まれるような気がしました。
そんな私に長さんが肩をパンパンと叩きます。
「気をしっかり持ちなさい」
「はい」
「人間は魔物以上に恐ろしい生き物だ。だから、私は君の良心に訴えかけさせてもらう。暴走するのだけはダメだ」
「……分かりました。ミズモチさん。私が暴れそうになったら止めてください」
「ヒデヴュ〜」
ミズモチさんが弱々しく鳴きます。
心配してくれているのでしょうね。
「それではいきましょう」
長さんはチャイムを鳴らすことなく門を蹴破りました。
えー!!!
そんなアクションスターみたいことを!!!
「令状も、問題も、後から全て解決するように手回しはしてあります。ですから、突入するなら最速で行きますよ!」
「はい!」
さすがはA級冒険者の長さんです。
遠距離攻撃を得意にしていても、頑丈な門を蹴破れるほどの肉体もお持ちなのですね。
長さんの捜査の能力よって、室内の状況を把握して、どんどん進んでいきます。
ボディーガードの人たちが出てこられましたが、長さんの魔導銃で撃たれて昏倒していきました。
「全員眠ってもらっただけです。外傷はありませんよ」
私が心配していると長さんが答えてくれました。
頼もしすぎます!
「さて、ここですね!」
長さんはそういって扉を開きました。
そこはは太った中年男性が高そうなスーツを着て座っており。
その正面にカオリさんと、カオリさんの両親がいて、カオリさんが顔を俯かせて涙を流しておられました。
「なっ! なんで貴様が!」
「そうよ! どうしてあなたが!」
長さんに止められていたのに、私はちょっとだけ暴走してしまいそうです。
「どういう状況か教えてもらえますか?」
私が言葉を発した瞬間に、カオリさんの両親は泡を吹いて倒れました。
正面に座っていた中年男性もこちらを見て大量の汗を流しています。
カオリさんだけは私を見て驚いていました。
「ぐっ! 阿部君。殺気を抑えたまえ! 私でも耐えるのがやっとだ」
長さんに言われるまで、私は自分が殺気を放っていたことに気づきませんでした。




