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071 DayToDay - そういや後半に行くほど女装ネタ減っていったよね




 宴が終わり、夜が明けると、浮かれていた人々は徐々に現実を実感しはじめた。

 長きにわたる戦争は終わった。

 魔王もいない。

 この世界を縛るものは何もないのと同時に、どこへ向かうのかわからない、漠然とした不安がある。

 だが、それも妙な話だ。

 人々は神の存在など知らなかったのだから。

 解き放たれたも何も、縛られていたことを知ったのはついさっきのことである。

 だからきっと、そんな不安は、ご飯を食べて体を動かしているうちに忘れるものだ。

 それよりも大事なのは、この壊れきった街を、国を、そして世界を、どうやって復興していくか、なのだから。




◇◇◇




「私なんかでよかったんですかねぇ」


 ファーニュは、ベッドで横になるマギカに言った。

 彼女は最低限の衣服しか身に着けておらず、少し恥ずかしそうである。

 まあ、今さらなのだが。 

 そんな状態で何をしているかと言うと、ファーニュは、マギカの体に残った細かな傷を癒やしているようだった。

 マギカは不要だと言ったのだが、『あなたの体は私のものでもあるんですから、そうは行きませんよぉ』と押し切られてしまったらしい。


「偽シスターだってこと、意外にも気にしてるのね」


「死者を弔うとなれば、それも当然ですよぉ」


 ファーニュは戦いに参加した修道女の一人として、その役目を託された。

 幸いにも一般人の犠牲者は出なかったものの、軍の兵士には多数の死者が出た。

 昨晩、人々が浮かれ騒いでいたのは、ある意味でそれも彼らに対しての弔いだったのかもしれない。

 朝が来て、冷静になれば、そんなことできるはずもないのだから。


「帝国軍魔術師部隊……マギカさんの憧れだったんですよねぇ」


「そうね……あんたと出会うまでは」


 マギカは力なく笑いながら言った。

 夢を変えてしまうほどの恋をしたのは、果たして幸せなことだったのか。

 今でも彼女の中で答えは出ていない。

 ――とか言いながら、ただの強がりというか、実際は答えが出てるのに、何だか体の相性とか快楽で決めたみたいで釈然としないから認めたくないだけなのだが。

 それはさておき、マギカにも思う所があるのは事実である。

 まあ、今さら思いを馳せたところで、憧れだった彼らはもういないのだが。


「帝国最強の魔術師。そう呼ばれた人たちでさえも一瞬で死んでしまうほどの戦場だったんだもの。私、よく生き残れたわよね」


「ええ、奇跡です。今度あんな無茶したらぁ……」


「わかってるわかってる。言ったでしょ、あんたと出会うまでの夢だったって。もうあんな、手足が吹き飛ぶような戦いはしばらく御免だわ」


「どこか行きますかぁ?」


「そうねえ……復興が落ち着いたら、それでもいいかもしれないわね。ファーニュ、あなたは行きたい場所とかある?」


「行きたい場所と言いますかぁ――連れていきたい場所ならありますぅ」


「どこ?」


「私の故郷ですぅ。挨拶してほしい人がいるんですが、いかがですかぁ?」


 マギカの頬が引きつった。

 決して挨拶するのが嫌なわけではない。

 問題は、ファーニュがサキュバスという事実である。


「私、狙われたりしない?」


「そこは安心してください。ちゃあんと守りますからぁ」


「やっぱり狙われるんじゃないのよぉーっ!」


 マギカの嘆きが、辛うじて無事だった宿に響き渡る。




◇◇◇




 ちょうど隣の部屋に居たフレイグは、それを聞いて肩をすくめた。


「あれの音だけでなく、喋り声まで大きいのか、あいつらは」


「戦いが終わって気が緩んでるんじゃないのかな。はい、あーん」


「あーん……もぐ、むぐ……」


 シーファから差し出された果物を、フレイグは咀嚼する。


「ひはひよはったのは?」


「ふふっ、食べてから喋ってよ」


「……んぐっ。しかしよかったのか? シーファは治療を受けないで」


「見ての通りピンピンしてるから。すっごくかっこよく誰かが守ってくれたおかげで」


「そうか、それはよかった」


 フレイグが恥ずかしそうに鼻を掻くと、シーファはケラケラと笑った。

 とはいえ、彼女の頬も赤くなっていたが。


「ねえ、フレイグ」


「何だ、シーファ」


「戦い……終わったね」


 シーファは窓から外を眺めながら言った。

 本人の姿は見えないが、数十メートルの高さまで瓦礫を積み上げ、運んでいるのはおそらくサーヤだろう。


「ああ、何だかんだで終わったな。主人公は俺たちではなかったが」


「そうかなあ。フレイグはちゃんと勇者してたと思うよ」


「サーヤがいなければ何もできない。俺は脇役だったさ」


「ううん、僕にとっては、間違いなく勇者だった」


「……言ってて恥ずかしくないのか?」


「そこで素面に戻るのは卑怯じゃないかなあ! もう、あんまりまともになりすぎるのも考えものだね」


「前の俺の方がよかったか?」


「このタイミングで認めるのは不本意だけど……今の方がいいに決まってるじゃん。勇者のこと考えなくなった分、僕のこと考えてくれてるみたいだし」


「恥ずかしいセリフその2だな」


「だからぁー!」


 ぷくっと頬を膨らますシーファ。

 今度はフレイグが笑う番だった。

 治療が必要な者が休んでいるはずの宿は、どうにも騒がしい。

 しかしそんな騒がしさも、全てが終わったからこそだと思えば、むしろ心地がいいものだった。




◇◇◇




 神鎧との戦いによる爪痕は大きく、人々が元の暮らしを取り戻すまでには、長い時間が必要となりそうである。

 城もほぼ全壊、帝都のみならず、周辺のインフラも大きな損傷を受け、復旧までにかかる月日と予算を考えるだけで、キャニスターは頭痛を通り越して脳が頭から飛び出ていきそうな気分であった。

 その一方で、グランマーニュはどこか満足そうだ。


「なぜ君はボロボロの街を見て笑っている。あの戦いで頭でも打ったのか?」


「キャニスターは変わらんな。俺は、皇帝になってからというものの、ずっとこの国に息苦しさを感じてきた」


「魔王軍との戦いは防戦一方だったからな」


「ああ、俺たちは常に負け続けていた。考えることと言えば、いかに被害を少なくして敗北するか、そればかりだ。しかし今日からは、この国は今までよりもずっと前向きになる。どう復興させて、どう発展させて、どうモンスターたちとの関係性を築くのか――不謹慎かもしれんが、俺は少しばかりワクワクしているらしい」


「本当に不謹慎だぞ、グランマーニュ。命を落とした兵も少なくないというのに」


「だからこそ、でもある。俺たちが塞ぎ込んでいては、未来のために散っていった彼らに申し訳が立たん。もちろん、復興が進めばちゃんとした墓を用意する。彼らの名は歴史に刻まれ、帝国の礎となった勇敢なる兵士として永遠に残すつもりだ」


「脳に筋肉しか詰まっていないと思ったが、僕が考えているよりは将来を見据えているのだな」


「俺個人としては、筋肉を詰め込んでおいた方が楽なのだがな。皇帝ともなると、そればかりというわけにはいかん。ならばそちらに、どうにか楽しみを見出していくさ」


「なるほど、そしてそれを潰すのが僕の役目なわけだな」


「キャニスター、お前は本当に……本当に……!」


「仕方あるまい。それが僕の楽しみだからな。僕を相棒に選んだ選択を一生後悔しつつ、僕がいなければ国を回せない脳筋皇帝として今後もがんばってくれたまえ! くははははははははっ!」


 悪役のような笑い声を響かせるキャニスター。

 グランマーニュはげんなりしながらも、その口元はかすかに微笑んでいた。




◇◇◇




「んあぁぁぁあああーっ! 見てください、見てくださいよお嬢っ! 大変ですよ! 神です、神が降臨なすった! んほぉぉおっ! こんな新鮮なキャニ×グラを生で見れるなんて私ってば感激ですぅー! あれを見るのは全人類の義務です! さあお嬢、見ましょう! ガン見を! 凝視を! そしてその記憶に一生刻み続けるのですぅぅっぅぅぬほおっ!?」


 セレナの拳が、レトリーの腹に突き刺さった。


「ほ、包丁を持ちながらは……危険だと……お嬢……」


「あんたの妄想のが危険よ。あと包丁は右手、殴ったのは左手だから問題なし。ほらレトリー、お腹を押さえてないでさっさと手を動かす」


「はーい」


 さすがのレトリーも、今日はそれ以上食い下がらなかった。

 二人は家を失った人や、復興作業に従事する人々のため、炊き出しを作っている所である。

 もちろん参加者は彼女たちだけでなく、女性や子供を中心に数十人が、帝都中央付近に仮設されたテントで料理を作っていた。


「食糧の備蓄が無事だったのは不幸中の幸いでしたね、お嬢」


「ええ、これが無かったら飢え死んでたかも……いや、その辺もサーヤちゃんがどうにかしそうではあるけれども」


「確かに、どこからともなく巨大な肉とか運んできそうな――」


 噂をすればなんとやら。

 サーヤは“どすんどすん”と、自分の体よりも遥かに大きな魚を羽交い締めにして二人の前にやってきた。


「見てください、お姉ちゃん、レトリーさん! さっき瓦礫を置きに川のあたりに行ったら、こんなにでっかい魚がいたんですよ!」


 まず普通、そんな魚は見つからないし、見つけたとしても素手で取ったりはしない。


「本当にやっちゃうあたりがさすがサーヤさんですよね」


「私も驚きを通り越してどんな顔をしたらいいかわからないわ」


「……?」


 首をかしげるサーヤ。

 だがセレナが「喜びすぎてびっくりしてたのよ」と優しく言うと、すぐにいつもの笑顔に戻った。

 そして巨大魚を調理班の前に置いて、忙しく走り去っていく。


「どうしたもんかしらねぇ……」


「包丁じゃ無理でしょうから。専用の剣とか必要なんじゃないですか?」


「フレイグさんから神器借りてくる?」


 半分冗談、半分本気でそんなことを言うセレナ。

 結局、帝都にあっ()高級レストランのシェフと、一応プロであるセレナの父が、のこぎりを使って捌くことになったようだ。

 いつの間にか復興に従事していた人々も集まって、ちょっとしたショーのようだ。


 セレナとレトリーは、その様子を少し離れた場所で、野菜の皮を剥きながら眺めていた。


「んー……」


「心ここにあらず、って感じの顔ですね。何か考えごとですか、お嬢」


 レトリーが言うと、セレナはぼんやりと三枚に降ろされる魚を見ながら話す。

 

「神様がいなくなったことで、どんな風に世界が変わるのかと思って」

 

「小難しい話題。お嬢らしくないですね」


「らしくないわよ、悪い?」


「いえいえ、ここで悪いって言ったらまた殴られますし、そう簡単には口を滑らせ……あっ、やめっ、んひぃっ!」


 セレナの人差し指が、レトリーの脇腹に突き刺さる。

 レトリーは体をよじりながら、勘違いされそうな声をあげた。


「そこまで言ったら一緒でしょうに」


「本音が隠せない性分でして」


「死んでも治りそうにないわね、レトリーのそういうとこ」


「死んだらさすがに治るかもしれませんよ。死ぬつもり無いので、一生このままだと思いますけど」


「はぁ……ほんっと、一筋縄ではいかないやつ。まあいいわ。とにかく、考えてたのよ、そういうことを。ほら、人とモンスターの戦いとか、たぶん神器を使った戦争とかも、神様が作ったシナリオだったわけでしょう? でも、これで世界から一切の戦いが無くなるかって言われれば――そんなわけないと思うのよ」


「確かに、魔王とか神とか関係無しに、キャニ×グラ派とグラ×キャニ派の間では戦争が勃発してますからね」


 的を射ているようで、絶妙にずれている。


「どっちでもいいでしょ、そんなの……」


「あっ、お嬢言いましたね!? 言っちゃいましたね!? そういう心無い発言が戦争を誘発するんですよ!?」


「……はぁ。まあ、確かにそんなもんなのかもしれないわね。だから、神様がいなくなっても、案外世界ってそんなに変わらないのかもしれないと思って」


「悲観的ですねえ。私は変わると思ってますよ。小競り合いはあるでしょうけど、今までよりもずっと平和になると思ってます」


「楽観的ねえ。根拠は?」


「サーヤさんがいるからです」


「あー……それもそうだったわね」


 レトリーの言葉には、何よりも説得力があった。


「そうなんですよ。サーヤさんがいたら、戦争なんて起きようがないじゃないですか。体に神器を宿してるって言うんなら、寿命だってどうなるかわかりませんし、案外この世界って、もうこのまま永遠に平和なままかもしれませんよ」


「改めて、サーヤちゃんの影響力が恐ろしいわ」


「その子の姉がセレナさんなんですよ?」


「姉っていうか……“お姉さん”というか……」


「血の繋がった姉妹ではなく、“日常的にいやらしいことをする方”の姉妹ということですね」


「いや、どういう区分なのそれ」


「えっ、分けません? えっちする姉妹と、えっちしない姉妹」


「普通はしないわよ!?」


「そんな……血のつながった姉妹は自然と惹かれ合うものではないんですか!?」


「あんたの世界観は狂ってんのよ! 邪悪すぎるわ!」


 たぶん魔王よりどす黒い。


「でもですよ、お嬢」


「まだこの話を広げるつもりなの……」


「大事な話ですから。マジな話、サーヤさんがティタニアさんとかファフニールさんとかニーズヘッグさんとそういうことになったら、どうするんです?」


「さすがにならないでしょ、まだ」


「本当にそう思いますか? みなさん割と本気でサーヤさんのこと狙ってると思うんですが」


「……で、でも、サーヤちゃんって、まだあの年齢よ? いくら本気とはいえ、さすがにそのあたりはわきまえてる……と、思いたいというか……」


「お構いなしというか、むしろそっちの方が好みの人も……」


 右手を額に当て、「うーん」と唸るセレナ。

 心当たりしかなかった。


「私の周り、ド変態しかない」

 

「しかもタチの悪いことに、サーヤさんたぶん、そういうの断らないと思うんですよ」


「そうね……そうでしょうね……」


 それが相手からの好意だとわかれば、喜んで受け入れそうである。

 事の重大さもわからないままに。


「それでサーヤさんがそういうことになったら、自ずとお嬢も巻き込まれるわけじゃないですか」


「巻き込まれるかしら」


「こまれますね、間違いなく」


 セレナ自身も、そんな予感はしていた。

 そうでなくとも、すでにサーヤに唇は奪われているわけで――


「お嬢、何でそこで妙に色っぽい顔をしながら唇を触るんですか?」


「はぁっ!? 色っぽい顔としかしてませんけど!?」


「明らかに怪しいじゃないですか。もしかして、私が心配するまでもなく、もうそういう……」


「あー! 違う、違うからっ! 私はまとも! まーとーもー! 何かあるとしてサーヤちゃんが大人になるまでちゃんと待ちますぅー!」


「女の子に手を出すことは否定しないんですね」


「はっ!?」


 目を見開くセレナに、ニヤニヤと笑うレトリー。


「もう手遅れなんですよ、お嬢。さあ、素晴らしきおねロリの扉を開くのです! そして私はそれをネタに漫画を書いて――」


「絶対に書かせないわ。何があっても、私はあんたの思う通りになんてならないんだからね!」


「はいはい、フラグおつ」


 必死になればなるほど、セレナは墓穴を掘っていく。

 レトリーはもはや聞くまでもないと言わんばかりに、ニヤニヤした顔のまま野菜と向き合った。




◇◇◇




 それから、あっという間に時は過ぎ、ようやく帝都が街としての姿を取り戻したのは、半年後のことであった。

 完全ではないと言え、本来なら数年かかるはずの復興がこれだけの期間で達成できたのは、四天王を中心としたモンスターたちや、サーヤの協力があったおかげだろう。

 魔王軍との戦いで住む場所を失い、彷徨っていた人々も帝都に集まりはじめ、街は以前を超えるほどの賑わいを見せつつある。

 帝都周辺にも、自然と村が増え始め、食糧の供給も近いうちに安定してくるだろう。




◇◇◇




 サーヤは帝都の、セレナの両親が経営する宿で、今も暮らしていた。

 もはや宿というよりはアパートメントになりつつあるが、経営者たちはそのあたり、深く考えていないらしい。

 まあ、サーヤが結構なお金を宿賃として渡しているので、そのおかげもあるのだろうが。


 もちろん、サーヤを慕う面々も一緒にここに暮らしている。

 アパートメントになりつつある、というのはそのせいだ。

 もっとも、ティタニアやシルフィード、ファフニール、ニーズヘッグは、借りている部屋で毎日寝泊まりしているわけではなく、今も交代制でサーヤと同衾しているのだが。

 ちなみに今日は――“全員で一緒に寝る日”だった。

 

「う……うぅん……」


 サーヤが寝返りをうつと、彼女の顔がティタニアの胸にぼふっと埋もれる。


「サーヤ……大胆……すぎるしぃ……」


 寝言を言いながら頬を赤らめるティタニア。

 するとサーヤの背後からぬるっと誰かが転がってきて、わざとらしく自分の胸をサーヤの後頭部に押し付けた。


「んへ……大胆すぎる。ご主人様ぁ……」


 ニーズヘッグだ。

 彼女は寝言っぽく言っているが、完全に目を覚ましていた。

 他の面々よりちょっぴり前に起床して、サーヤの純真な寝顔を蹂躙するのが彼女の日課なのである。

 しかし、もう一体のドラゴンが彼女の好き放題を許すはずもない。

 ファフニールの手がニーズヘッグの寝間着――最近ようやく着るようになったようだ――の襟をむんずと引っ張ると、力ずくで位置を交代する。


「むにゃむにゃ……ご主人さまぁ……」


 寝言っぽく言い、サーヤに頬ずりするファフニール。

 もちろん彼女も起きている。

 強引にサーヤの隣を奪われたニーズヘッグは、薄っすらと目を開き、ファフニールを見つめる。

 その瞳には、昏い闘気が宿っていた。


 手が伸びる。

 引き剥がす。

 ニーズヘッグとファフニールが入れ替わる。


 手が伸びる。

 引き剥がす。

 ファフニールとニーズヘッグが入れ替わる。


 手が伸びて、引き剥がし、手が伸びて、引き剥がし――もぞもぞと、静かに、しかし忙しなく動く二人の気配を感じ、キングサイズベッドの端っこで寝ていたセレナが目を覚ました。


「あんたたち……朝から何やってんのよぉ……ふわあぁ……」


 目をこすり、大きなあくびをするセレナ。

 特に頼んだ覚えは無いのだが、もちろん彼女も、現在もなお“サーヤと一緒に寝る権利”を持つ者としてカウントされていた。

 それでも半年前にレトリーに宣言した通り、“まだ”そういう関係になったわけではない。

 しかし、ティタニアたちと一緒に過ごしている影響か、最近はサーヤからの攻勢が激しくなっており――


『お姉ちゃん、ちゅーしましょう。ちゅー!』


『ふえー、お姉ちゃんのおっぱいも結構大きいですねぇ。見てください、わたしなんて全然ですよぉ』


『こうやって石鹸を付けて、体を使ってお姉ちゃんの肌をこすると、普通にやるよりきれいになるらしいですよ! ニーズヘッグさんに教わりました!』


『最近……お姉ちゃんと一緒にお風呂に入ると、どきどきするんです。どうしてでしょうか? でも、いやな感じはしないんですよね。むしろ、もっとくっつきたいっていうか……お姉ちゃん、そっちに行っていいですか?』


『お姉ちゃん……おやすみのキスはしてくれないんですか?』

 

 小悪魔度が日に日に増しているような気がするのは、果たしてセレナの気の所為なのだろうか。

 いや、違う。

 なぜならば、『ウチはサーヤに身も心も捧げるつもりだし!』とか堂々と宣言するほどサーヤラヴなティタニアですら、日々小悪魔的な魅力を身に着けつつあるサーヤの言動に翻弄されているのだから。

 一方でファフニールとニーズヘッグは、そんなサーヤの成長を大喜びしている節はあるが、ティタニアやセレナへの義理があるのか、今の所、どうにか、本当にどうにか――まだ(・・)、手を出してはいないようである。

 ちなみにシルフィードは幼さゆえか、小悪魔さに翻弄されることはなく、今も順調に、同世代の親しい友人、兼弟子としてのポジションを確立しているようだ。

 レトリーは、


『あれはおねロリとは別の関係性。サーヤさんを取り巻く他の人たちには真似できない芸当です。存外に、一番の強敵はシルフィードさんかもしれませんね……』


 などと意味不明なことを言っていた。


 それはさておき。

 今は、ファフニールとニーズヘッグの不毛な戦いを止めるほうが先である。


「サーヤちゃん起きちゃうから、ほどほどでやめときなさいよぉ」


 小声で言うと、ちょうどニーズヘッグに引き剥がされたファフニールが、セレナの方を見た。

 そして彼女は無言で、セレナに這い寄る。


「……げ」


 その、獲物を前に舌なめずりをするような顔を見て、セレナは気づく。

 やぶ蛇だったか、と。

 いや、しかしやらなければサーヤが起きてしまっていたわけで――つまり最初から詰んでいたのかもしれない。


「朝っぱらからそれはやめな……んむうぅぅぅううううっ!?」


 じゅるるるるるるるるるるるるるるるぅっ!


「ふむっ! ふもぉぉおおっ! んぐっ! んぐうぅぅっ!」


 あまりに激しい吸い上げ。

 そして舌の動き。

 ぴったりと合わせられた唇のせいで呼吸すらもままならず、セレナは『ギブアップ!』と言わんばかりに手で何度もベッドを叩いた。

 そして、ようやく“じゅぼんっ”とファフニールが口を離すと、彼女は爽やかな笑顔でセレナに言った。


「おはよう、セレにゃふっ!?」


 そんなファフニールの顔を、顎から鷲掴みにするセレナ。

 指にぐにぐにと力を入れ、相手の口元をタコのように変形させながら、怒りのこもった声で言う。


「な、に、が、お、は、よ、う、よ!」


「ひょうもへれなはへんひらなぁ!」


「おかげさまでね。ったく……ほんと、あんたたちといると気が休まらないわ。レトリーが増えたような気分よ」


「褒めるなよぉ」


「これが褒めてるように聞こえるの? レトリーに対する評価が高すぎない?」


 セレナは納得いっていないが、どうも世間におけるレトリーの評価は意外と高いらしい。

 そんなやり取りをしているうちに、セレナの目はすっかり冴えてしまった。

 彼女は体を起こすと、両方から豊満な胸に挟まれ、どこか幸せそうな顔で寝ているサーヤを眺める。

 そこで彼女はふと気づいた。

 本来、ティタニアの後ろで寝ているはずのシルフィードの姿が無いのだ。

 セレナが軽く探してみると、彼女は布団の中――ティタニアとサーヤの間に挟まって、サーヤの下腹部から太ももあたりに顔を埋め、腰に腕を回した状態で寝ているようだった。


「まさかあんなポジショニングがあったとはな。あたしもちょっと行ってくる!」


「やめときなさい」


 襟を掴まれ止められるファフニール。

 あの位置取りは無欲なシルフィードだからこそ成し得たものであり、仮に同じ場所にファフニール、あるいはニーズヘッグが収まったなら、我慢できずにパジャマの中に顔を突っ込もうとしただろう。

 あと、たぶんティタニアは顔を真っ赤にしてしばらく再起不能になったはずである。


「はぁ……さて、私はそろそろ起きるわ」


「おい待て」


 ベッドから降りようとするセレナの首根っこを、今度はファフニールが捕まえる。


「逃げようとしてるな?」


「し、してないわよ」


「嘘が下手すぎて一周回って愛おしいな」


「あんたが言うと洒落にならないからやめて」


「洒落じゃないぞ?」


「人間関係が複雑になりすぎるからどちらにしてもやめて!」


 モンスターの価値観と人間の価値観は、しばしばすれ違う。

 ドラゴン――というよりファフニールは、複数人を愛しても別に平気らしい。

 いや、この場合ただ単にファフニールが浮気性なだけな気もするのだが。


「考えてみろよ、セレナ。この調子で行けば、サーヤはハーレムを作るだろう。ティタニア様、シルフィード様、あたし、ニーズヘッグ、そしてセレナ。そう、この宿はやがてあたしたちの愛の巣になるわけだ」


「未来設計が爛れすぎてる」


「そしてあたしとニーズヘッグは、割と本気でセレナのことを気に入っている。ハーレムということは、あたしたちはこれから先も一緒に生活するわけだ。仲良くしておいても損じゃないと思うぞ?」


「私もそう思います」


 にょきっとベッドの下からレトリーが這い出てくる。


「あんたどこから生えてきてんの!?」


「湿気があればどこからでも」


「もはやキノコよね」


「私はおねロリを見守る菌糸になりたい」


「ついに人間をやめるのね。つかあんた、まさか一晩中そこで寝てたわけじゃ……」


「そんなわけないじゃないですか、いくら私が変態と言えど」


 レトリーはメイド服についた小さな埃を払いながら言った。


「みなさんを起こしに来たら、どうやらファフニールさんたちが起きたようなので、面白いものが見れるんじゃないかと思ってベッドの下に素早く潜り込んだだけです」


「どちらにしても犯罪よ?」


「そんな小さなことはさておき」


「あんたのものさしは数字が平方根になってるの?」


「問題はハーレムですよ、ハーレム。こんな身近でおねロリハーレムが見られるとかどんなパラダイスですか、ラリっちゃいますよ私」


「今でも十分ラリってるわ」


「それでも私はおねロリをキめたいんです!」


「違法薬物みたいに言わないでよ。だいたい、サーヤちゃんはまだ10歳なのよ? そんな子を、良い年した大人が囲んでハーレムだ何だのって、どうかしてるわ」


「お嬢、わかってないですね……」


「ああ、セレナは何もわかってないな」


「何よ、二人して急に」


 やれやれ、と首を横にふるファフニールとレトリー。

 そして二人は同時に口を開いた。


『どうかしてるからこそいい!』


 見事に声が揃う。

 そしてファフニールとレトリーは、いい笑顔でグッと親指を立て合った。


「私はどうもしてない恋がしたいわ……」


 もちろん、そんな戯言をセレナが受け入れるわけもなかった。


「ん……んぅ……」


 その時、サーヤが声を発した。

 三人はこれでも割と小声でやり取りをしていたので、そのせいで起きたとは思いたくなかったが――どちらにせよ、レトリーが起こしにくるぐらいなのだ、普段ならばサーヤはとっくに起きている時間ではある。

 なので、直後に彼女が目を開いたのは、ごくごく自然なことであった。


「おはようございますぅー……」


 寝ぼけた声で、ティタニアの胸から顔をあげて挨拶をするサーヤ。

 相手であるティタニアはまだ寝ていたが、その声で目を覚ましたらしく、


「おはよぉ……」


 と、これまたぼんやりとした声で返事をした。

 そして二人は顔を近づけ、自然とちゅっと唇を合わせる。

 特に恥じらうこともない。

 それは半年間続いてきた日課であった。


「ご主人様、こっちも」


「んー、ちゅぅー」


 振り向き、ニーズヘッグともキス。


「ご主人様っ、あたしもだ!」


「んふー」

 

 四つん這いで近づき、ファフニールともキス。


「あちしも……挨拶がしたいぞーっ!」


 シルフィードも起きたらしく、サーヤとティタニアの胸の間からずぼっと顔を出すと、軽く唇を重ねた。


「そう、これは決して、変な意味のあるキスではないのである。

 あくまで挨拶としての――もちろんサーヤにそういった感情を抱いている者はいるが、行為の意味としてはそうではなく――ただの、この世界でも一部地方で行われているような、ライトで、ある意味ドライなキス。

 だから、そんなの緊張したり後ろめたさを感じる必要など無いのだと、セレナは自分に言い聞かせる。

 だが、そうしなければサーヤとキスができない時点で、セレナは自分の中にある劣情を否定することはできないのだ――」


「久しぶりに出たわね、レトリーの変なモノローグ……! でも残念でしたー! 私はもう慣れてるから、サーヤちゃんとのキスぐらい簡単にできるんだから。ねー?」


「はい……毎日ちゅーしてますもんね、お姉ちゃん。だから、今日も、おはようのちゅーです。んーっ」


「ん……」


 何だかんだ言いながら、セレナの頬は赤い。


「ファフニールさん、見ました? あの表情で恥ずかしくないとかのたまってるんですよ?」


「あたしはセレナのそういうところを見るとムラムラする」


「奇遇ですね、私もなんですよ。何ていうか……穢したくなりません?」


「わかる。すごくわかる」


「こらそこっ! 不穏な会話をしない!」


 (主にセレナにとって)一筋縄では行かない朝。

 これが今の、サーヤたちにとっての日常だった。

 もちろん今日より静かな日もあるが、むしろ今日より騒がしい日もある。

 平均と比べると、今日は静かなぐらいかもしれない。

 そんな中、渦中の人物であるサーヤ自身は――


「今日もみんなと過ごせて嬉しいですねぇ……」


 寝起きのぼんやりとした意識の中で、変わらずみんなとおはようのキスが出来た幸せに浸っていた。




◇◇◇




 サーヤの部屋からぞろぞろと出てきた少女たちは、一階の食堂に顔を出す。

 セレナは真っ先に厨房に向かい、両親と言葉を交わしている様子だった。

 一方でサーヤも、自分の両親(・・)と同じテーブルに腰掛ける。


「おはようです! お母さん、ママっ!」


 サーヤが元気いっぱいにそう言うと、マーリンとハルシオンは笑顔で返事した。


「おはよう。今日も朝から元気ね」


「おはよう。どっちに似たんだろうね、こういうとこ」


「落ち着きが無いところはお母さんに似たんじゃないかって、最近よく言われます」


「ぐっ……失礼ね。これでも理性的なクールビューティーとして昔は通ってたのに」


「でもほら、根っこがあれだから」


「ハルシオン、そこは伴侶をフォローするところじゃないかしら?」


「マーリンに欠点があっても、そこは私が補えばいいと思ってるからね」


「そう言われると何も言えないわ……」


「ふふふー、お母さんとママは今日もらぶらぶですね」


「……そ、そうかしら?」


「そう見えてるなら嬉しい。サーヤちゃんの方も、随分とらぶらぶだったみたいだけど」


「わたしのほうですか?」


 首をかしげるサーヤ。

 未だその自覚がない彼女に、両親としては一抹の不安を感じないでもない。


 マーリンとハルシオンは最近、こうして朝食の場に毎日姿を現す。

 マーリンが言うには、魂の具現化が安定してきたので、以前より魔力を消耗せずに表に出られるようになったんだとか。

 とはいえずっとは無理なので、就寝時を含めて一日の大半を例の空間で過ごしているらしい。

 相変わらず空間はサーヤの中にあるようだが、出口は多少離れた場所でも良いらしく、ずるりと彼女の中から這い出て来たりすることは無いそうだ。


「困ったものよねえ、無自覚というのも。そのあたりどうなの、ティタニアさん?」


 マーリンにそう聞かれると、ティタニアは若干緊張した様子で口を開く。

 随分慣れてはきたものの、相手がサーヤの母親だと思うと意識しないわけにもいかないのだ。


「お義母さ……マーリンさんの言う通り、最近のサーヤは、自覚が無い割に刺激的っていうか、少し心臓に悪いと思う」


「あら、お義母さんでいいのよ。指輪も作った仲なんだし、ね?」


 ティタニアの右手には、銀色の指輪が輝いていた。

 マーリンが作り上げたその魔力には、封毒のスペルが組み込まれており、ティタニアの体から滲み出す毒を止めることができる。

 つまり、サーヤ以外の相手にも触れることができるようになって――しまったのだ。

 だがそれは、自分に触れられるのがサーヤだけという、ティタニアにとって最大のサーヤの隣にいる理由を失ってしまうことに等しい。

 最初、マーリンに指輪を渡された時、ティタニアは素直に喜べなかったのだが――そこはさすがの賢者と褒めるべきか、はたまた本当にそういう仕様なのかはともかく、指輪には“制約”があった。

 ティタニアの体から放出される毒が止まれば、当然体内に毒が溜まっていく。

 その濃度が一定量に達すると体調を崩す恐れがあるということで、指輪を使えるのは一日に数時間まで、と決められていたのだ。

 すなわち、今日のように全員で寝る日や、サーヤ以外の相手と出かける必要がある時、ティタニアが指輪をつけるのは、そういった状況の時だけである。

 それ以外はやはり、触れると毒を受けて危険なので、基本的にサーヤ以外は誰も触れることができなかった。


「でもなお義母さん」


「シルフィードさんは平然と言えるのね」


「ん? 何のことだ?」


「マーリン、あれが幼さゆえの強さだよ」


「わかってるわハルシオン、私にはもう無いものよね……ああ、いいわよ。気にせずに話を続けて?」


「わかった。あちしには、みんなが言うほどサーヤが変わったと思えないんだ。サーヤはいつもどおり、元気で、明るくて、強くて、かっこよくて、優しくて。そんないつものサーヤのまんまだぞ?」


「わたしも、鍛えて少しは強くなったと思ってますけど、特に変わったつもりは……」


「そこなのよ、サーヤ」


「へ?」


「自覚が無いところが危険なの。そのイノセンスな蠱惑さが、周囲のお姉さん方を惑わして引き寄せるのよ」


「そして私たちのような変態をも引き寄せてしまうんですね……」


 またもやマーリンの横からにゅっと生えてくるレトリー。

 彼女の言葉に、ファフニールとニーズヘッグが「うんうん」と腕を組んで頷いた。


「レトリー、どこに行ったかと思えば……あんたはこっちだから」

 

「あーれー!」


 しかしレトリーはすぐにセレナに襟を掴まれ、厨房に連れて行かれる。

 最近忘れがちだが、レトリーがメイド服を着ているのは、一応は趣味ではなく、この宿の従業員だから。

 セレナの近くにいると何かと性的嗜好を包み隠さない変態発言が目立つ彼女だが、普段はちゃんと従業員として働いているのである。


「先ほどからお母さんやティタニアさんの話を聞いている限りでは、そのわたしの成長というやつは、あまりよくないことなんですか?」


 サーヤは不安げにマーリンに尋ねた。

 すると彼女は顎に手を当て、「んー」とうなりながら悩み、その末にハルシオンのほうを見る。


「どう思う?」


「女の子としては間違いなく成長してるけど、親としては不安だね」


「それよねぇ。自分の娘が大人の女性を侍らすたらしになってたらどうする? って話だものねえ」


「はべらす? たらし?」


「まあ、とりあえず成長は成長なんだし、喜ぶことにしておきましょうか」


「それでいいと思う」


「というわけで、サーヤは心配する必要なしっ! そのまま成長して、色んなお姉さんを誑かしてしまうのよ!」


「完全に丸投げだし」


「賢者とか言いながら、お義母さんって意外と力業に頼ること多いよな」


「知性とはパワーよ!」


 よくわからない事をかっこつけながら言うマーリン。

 まさに賢者である。


「てか勝手に納得して決めてるけど、サーヤがこの調子で成長したら、ウチ本気で困るんですケド」


「ティタニアさんが困るのは、わたしも困ります。ですが具体的に、どう困ってるんですか?」


「サーヤの何気ない仕草が色っぽくて……何というか……すぐキスしたくなる」


 顔を真っ赤にしながら、ティタニアは言った。

 するとサーヤはすくっと立ち上がり、にっこりと笑ってティタニアに近づく。


「ならキスしましょうよ。わたしも、キスは好きなんですからっ」


 下心無しにそう言い切ってしまうのが、皆の言う今のサーヤの恐ろしさであった。

 さらに頬を赤らめ、「あの、その」と乙女の表情を見せるティタニア。


「わが娘ながら恐ろしいわね」


「ほんと、どっちに似たんだろうね」


「ハルシオンに決まってるじゃない。よくあれと似た表情で私を誘ってくるもの」


「それを言ったらマーリンだよ。とてつもない色気があるし」


「いいえ、ハルシオンよ」


「マーリンなの!」


「ハルシオン!」


「マーリン!」


 娘そっちのけで、突然惚気はじめる二人。


「あの親にしてあの子ありだとあたしは思うぞ」


「まったくもってそのとおり」


 どちらかに似たのではなく、どちらにも似ているのだ――という真理を突くドラゴン二人。

 一方でティタニアはサーヤに唇を奪われ、とろんとした表情を見せている。

 その横で二人のキスを見つめるシルフィードは、


(何だか、あちしの胸がドキドキしてる。何なんだこれは……)


 ひっそりと大人への階段を上りはじめ、それが後に波乱を巻き起こすことになる――

 が、未来のことなど誰にもわかるはずはないので、セレナやその両親、そしてレトリーは呑気に全員分の朝食を運んでくるのだった。




◇◇◇




 朝食を終えたサーヤたちは、すぐに宿を出た。

 今日は特別な日だ。

 最初からわかっていたことではあるが、彼らが旅立つ日なのだから。


 帝都の南門付近には、すでに銀狼たちとフェンリル、イフリート、ノーヴァがいた。

 そう、銀狼は故郷である雪原に戻り、そしてイフリートたちは、モンスターたちの世界に秩序を作り上げるために、長い旅に出るのだ。


「やはり今日も互角か、ウプウアゥト!」


「オレも鍛えてきたつもりだが、お前も加速し続けているということか、ジェット!」


「ふん、俺をその名で呼ぶなと言ったはずだ。俺はただのトム。最大限まで前向きに評価したとしても、疾風のトムを名乗るのがせいぜいだ!」


「お前はそう言うだろうと思っていた。だがあえてジェットと呼ばせてくれ。お前はオレの永遠のライバルだ! オレの中でお前は、紛れもなく疾風を駆けるジェットだった!」


「ウプウアゥト……」


 南門付近では、銀狼のうちの一匹とトムが、最後のスピード勝負をしていたり、

 

「はい、これまだ未発売の最新巻です」


「こ、これは……本当にいいのか、レトリー先生ッ!?」


「ギャハハハハッ! すげーじゃねえか、まだオレたちしか持ってねえってことだロ!?」


「しばらくは買えなくなりそうですからね。次にイフリートさんが来たときには、もっと先まで進んでると思いますよ。あとこっちも、プレゼントです」


「こっちは……まさか……!」


「ええ、リクエストしていただいていた、イフリートさんとノーヴァさんの戦いと友情を描いた、描き下ろし漫画です!」


「ウオォォォオオオオオオッ! 素晴らしい! 素晴らしいぞ! まるで夢のようだ! オレ様はこの漫画さえあれば、あらゆる不可能を可能にできる!」


「すげーヨ! イフリート、オレたちついに漫画になっちまったんだナ!」


 イフリートが憧れの漫画家からプレゼントを貰って歓喜していたり、


「もうこのもふもふを味わえないかと思うと、かなしくてしょうがないですよぉ……!」


「わふわふ、私もこのなでなでを受けられないかと思うと寂しくてしょうがないです。サーヤさん、必ずまた会いに来ますからね。わふんっ」


「はい、次までにはもっと鍛えておきますから!」


「わふっ、私も毛並みを整えておきます!」


 サーヤが最後のもふもふを楽しんでいたりと、別れを惜しむいくつもの光景がそこにはあった。


「思ったよりも長居してしまったせいか、別れが長いな」


 中には涙を流す銀狼さえもいた。

 そんな彼らの姿を、フェンリルは少し離れた場所で眺めている。


「あんたは涙を流す相手とかいなかったワケ?」


 ティタニアが尋ねると、フェンリルは「ふっ」と軽く笑って首を振った。


「長である我には、迷いは不要だ」


「あちし、フェンリルはかっこつけすぎだと思う。戦いが終わってからも、あんまり人間たちと話したりしてなかったよね」


 続けてシルフィードにそう指摘されると、少し不服そうにフェンリルは答える。


「それはただ単に、忙しかっただけだ。慣れない土地で暮らすあいつらを守るためにな」


「マジ大変だよね、オサってやつ。ウチには無理だわ」


「あちしも無理かも。一人で好きに動けないなんて」


「それを魔王軍の幹部である四天王が言っていいのか?」


「ウチは向いてないって自覚あるし。シルフィードもそうっしょ?」


「うんうん。四天王になっても、基本的に一人で体を動かしてばっかだったから」


「ふっ、ここまで統一性もまとまりもない連中を四天王に選んでおいて、魔王軍はよく組織として成り立っていたものだな」


「良くも悪くもワンマンチームだったってことだし」


「逆に言えば、離れ離れになっても問題なくやっていけるってことだな!」


「なるほど、そういう考え方もあるか」


「ガハハハハハッ! そうだぞフェンリル。オレ様のカリスマ性には及ばないにしても、お前にも仲間を率いるカリスマは宿っているのだ!」


 イフリートはレトリーから渡された漫画を手に、フェンリルに歩み寄る。


「それに――元いた場所に戻るだけなのだろう? ならば不安がる必要もあるまい」


「……イフリートにはお見通しというわけか」


「ギャハハハハッ! 気難しいように見えテ、意外とわかりやすいからナ!」


「つーか、ウチも察しはついてたんですケド」


「言っておくが、決して、ただ単に不安がっていたわけではないぞ。この帝都で幸せそうに暮らすあいつらを見ていると、何もないあの雪原で、我に従って生きる日々は、果たして最善なのか――と思ってな」


 帝都の人々は、優しかった。

 元より銀狼たちが人懐こい性格をしていたから、というのも理由の一つだろう。

 それにしても、彼らは可愛がられ、そして彼ら自身もその恩義に報い、この街で銀狼と人との間に良い循環が生まれつつあった。

 群れの長として、そんな銀狼たちを雪原に連れて行くという行為は、ひょっとするとただのエゴなのかもしれない――フェンリルはずっと、そんなふうに悩んでいたらしい。

 

 すると、銀狼たちはそんな長の素直な不安を聞き取って、次々と周囲に集まってくる。

 

「わふっ、何をおっしゃいますかフェンリル様!」


「わふん、そうだぜ。らしくもない。フェンリル様がいてこそのオレたちなんだからよ」


「わふわふっ、私たちがこの街で幸せに暮らせていたのは、フェンリルさまという存在が、私たちに安心感を与えていたからなんですよ?」


 次々と、矢継ぎ早にフェンリルに言葉を投げかける銀狼たち。

 その暖かな声を聞く度に、フェンリルの中にあった不安は氷解していった。


「お前たち……そうか、済まなかったな。我としたことが、どうやら気負いすぎていたらしい。長が不安になっていたのでは、みなも安心して付いてくることはできないな」


「わふ、そういうわけです」


「なのでフェンリルさまは、自信を持って私たちを導いてください!」


「ああ――では行くぞ、お前たち。我らが故郷に戻るために、旅立ちの時だ!」


『ワオォォォオオオンッ!』


 銀狼たちが吠える。

 その声は、帝都中に響き渡った。


「そういうわけだ。ティタニア、シルフィード、そしてイフリート――あと、ノーヴァも。それなりに長い間、世話になったな」


「言われてみりゃ、四天王って意外と長かったネ」


「これだけ長いと、あちしも寂しいけど――」


「これが門出ならば、心から祝うのが筋というものだ」


「無事にたどり着いテ、群れがデッカくなることを祈ってるゼ!」


「ありがとう、礼を言う。そして、帝都の人間たち――特にサーヤ、君には本当に助けられた。何度頭を下げても足りないぐらいだ。再び帝都を訪れた時には、何らかの形で恩返しができればと思っている」


「それはもう、マーナさんをもふもふさせてもらえれば……」


「はっ、それはそれとして、別にも用意させてもらうということだ。楽しみにしておいてくれ。どれだけ期待が大きくなっても、応えてみせよう」


「わかりました、楽しみにしてますねっ!」


 それが、別れ際に交わした最後の言葉――と思いきや、ギリギリになって、グランマーニュとキャニスターが到着する。


「だからあれほど、昨日のうちに書類は終わらせておけと……!」


「仕方ないだろう、昨日は昨日で仕事があったのだから!」


 何やら口喧嘩をしている二人だが、フェンリルが帝都を出ていきかけていることに気づき、慌てて駆け寄った。


「はぁ……はぁ……すまん、慌ただしい別れになってしまった」


「皇帝陛下までお出ましとは、光栄だ」


「一応、伝えておかなければと思ってな。一時的な共存ではあったが、君たちはすでに帝都の民だ。ここに――」


 キャニスターが一枚の紙をフェンリルに見せつけている。


「住民登録も済ませてある。いつでも自由に出入りしていという証だ」


「それはそれは、ならば我らも税を払わねばならぬな」


 冗談めかして言うフェンリル。

 グランマーニュは苦笑した。


「特例というやつだ。税は払わずとも、安易に『我のバックには帝国が付いているぞ』と言ってくれて構わん」


「そうか……その文言を使わずに済むことを願っているよ」


「俺も同感だ。さて、引き止めて悪かったな」


「いや――それでは今度こそ行かせてもらおう。さらばだ、共に戦い抜いた勇敢な戦士たちよ」


 フェンリルが先頭となり、帝都を後にする銀狼の群れ。

 サーヤたちはその後ろ姿が見えなくなるまで、彼らを見送った。

 人々の胸に、喪失感に似た寂寞が去来する。

 心臓が締め付けられる感覚に、サーヤは胸元をきゅっと握った。


「では、今度はオレ様の番だな。とはいえ、フェンリルよりは戻ってくる頻度も多い。皆の衆よ安心せよ、オレ様を失った寂しさは一時的な物だぞ!」


「そーゆーノリだと逆に悲しめないんですケド」


「ガハハハハハハッ! それもまた善し! 湿っぽい別れはオレ様には似合わないからなぁ! 火属性だけに!」


「ギャハハハハハッ! ここに来て史上最強のギャグだナ、イフリート! オレも思わず大爆笑だゼ!」


「ガハハハハハ! そうだろう、そうだろう! 今日のために温めてきたからなぁ! 火属性だけに!」


「ギャハハハハハハハハッ!」


 相変わらず騒がしい二人に、集まった人々も思わず苦笑いを浮かべる。


「でも……わたしは結構、寂しいです。イフリートさんたちのおかげで、みんな明るくなれてたところもありますし」


「女装娘……」


「あ、あの……わたし、もう女装ってことにはしてないので、サーヤでいいですよ?」


「そうか……だが女装娘の方がしっくり来るのだが」


「今さら変えるってのもナ!」


「じゃあ、女装娘で」


 今となっては貴重な女装要素である。


「女装娘よ、お前との出会いは、オレ様の人生に多大なる影響を及ぼした。ただ人を滅ぼそうとしていたオレ様が、今のように人とモンスターの架け橋になろうなどと考えたのは、間違いなく女装娘との出会いがあったからだろう」


「そんな、そこまで大したことは……」


「していないつもりでも、実際は大きな影響を与えている。それほどに、この世界において強い存在感があるということだ。オレ様は、女装娘がいる限り、この世界の平和は続くと思っている。期待も込めてな」


「重いですね……でも、できる限りのことはやりたいと思ってます。世界のためというより……この世界に、幸せに生きてもらいたい人がたくさんいるんで!」


「ガハハハハハッ! いい心がけだ。守る対象が遠く、曖昧なほど、進む道はブレてしまう。だがそれが身近にあるのならば、道を違える可能性は低い。無論、オレ様とて力を尽くすつもりだ」


「世界一の顔と頭脳を持つイフリートと、世界一の強さを持つ女装っ娘――二人さえいれば、この世界は安泰だゼ! ギャハハハハハハッ!」


「そういうわけで、オレ様たちは行くぞ! そう、この世界の未来のために! さらばだぁぁぁぁぁあっ!」


 イフリートはノーヴァを肩に乗せたまま駆け出すと、ぐんぐんと帝都から離れていく。

 サーヤたちはあまりの勢いに見送ることも忘れ、ぼーっと彼の後ろ姿を見つめていた。


「……なあ、グランマーニュ。今後のやり取りについて彼と話すと言っていなかったか?」

 

「……はっ!? しまった、勢いについていけずに呆けていた! 待ってくれ、イフリート! 俺にはまだ話があるんだーッ!」


 グランマーニュは、皇帝らしからぬ全力疾走でイフリートを追いかけて帝都から出ていった。


「マジで最後まで落ち着きのないヤツ……」


「ほんっと、とんでもない上司だってつくづく思うよ」


「私は暑苦しさについていけない。ティタニア様ぐらいの重苦しさがちょうどいい」


「誰が重苦しいだし……!」


「にしても、本当にいつもテンションが高い人だったわねえ。ティタニアと同じく、悲しむに悲しめないわ」


「私としては、ファンが減ってしまうのは悲しいです……ですが、数カ月後にはまた戻ってくると言っていましたし、彼らをがっかりさせないためにも、漫画家レトリー、今まで以上に頑張らなければーっ!」


「従業員としてもほどほどに頑張りなさいよ。さてと。これで用事は終わったわけだけど……サーヤちゃんこれからどうする?」


「……へっ? ああ……そうですねぇ、どうしましょうか」


 サーヤはイフリートたちが消えていった方向を、じっと見つめていた。

 セレナはそんな彼女の背中から近づき、軽く抱きしめる。


「もうちょっと余韻に浸る?」


「いえ……浸っても、余計にさびしくなるだけだと思うので」


 そう言いながらも、サーヤの脚は動かない。


「そうだなぁ、あちしも切り替えないとなー」


「でもサーヤの気持ちはわかる気がするわ。別れって、意外と体力使うものね」


「私、そういうのが嫌で暗い洞窟に引きこもってた」


「あたしは平気――とは言ってみても、慣れてるだけだな。寂しくないわけじゃあない。フェンリル様やイフリート様だけじゃなくて、勇者たちも帰っちゃったしな」


 フレイグとシーファは、三ヶ月ほど前に故郷の村に戻っている。

 彼らの故郷も、魔王軍との戦いで少なからず被害を受けているらしく、そのための人手も必要だったのだろう。


 マギカとファーニュは、フレイグたちと同時期に帝都を出て、ファーニュの故郷に向かったようだ。

 両親への挨拶を経て、サキュバス式の結婚契約を交わすらしいのだが、その前に両親や親戚、町の人々の毒牙からマギカは自分の貞操を守らなければならないとかで、帝都から出ていく時の彼女は、戦場に赴く兵士のような顔だったそうだ。


「けれど、こうやって寂しいと感じられるのも、戦いが終わったからこそなんですよね。物事が前に進んで、世界が良くなったからこそ、わたしたちは変わっている。だからきっと、この寂しさも、悪いものじゃないんです」


「いいこと言うわね、サーヤ」


 その時、マーリンとハルシオンが、にゅるんとサーヤの正面に現れた。


「お母さんに、ママ! どうしてさっきはいなかったんですか?」


「私は行こうって言ったんだけど、ハルシオンがね」


「私がいると微妙な空気になっちゃうでしょ?」


 ハルシオンは、少し寂しそうに言った。


「いや、それ気にするならウチらもっとキツく当たってるし」


「そうだぞ、あちしたちは全然気にしてないからな」


 ティタニアとシルフィードが反論する。

 事実、イフリートやフェンリルも一切ハルシオンの過去について気にすることはなかった。

 あれは“魔王”がやったことで、ハルシオンの罪ではないのだから。

 つまりこれは、ハルシオン自身の気持ちの問題だ。

 マーリンと再会できても、半年が過ぎても、300年の傷は完全には消えない。

 しかし、これから先、時間が少しずつハルシオンの傷を癒やしてくれるだろう。


 場に少ししんみりとした空気が流れる中、サーヤもそろそろ寂しさを断ち切って、この場を立ち去ろうとした時――


「セレナちゃんっ! エクスカリバーの兄貴ぃぃぃっ!」


 中年男性の大きな声が、南門周辺に響き渡った。


「あれって……」


「冒険者のおじさんじゃないですか! どうしたんですか、おじさんっ」


「はぁ……はぁ……っ」


 男性はよほど全力で走って来たのか、肩を上下させ、息を切らしながら、とぎれとぎれに話をはじめた。


「それが、よぉ……冒険者の、中に……ふぅ……星を見るのが趣味の……やつが、いてよぉ……」


「星、ですか?」


「ああ、あの人ね。それがどうかしたの?」


「そいつが言うんだよ……すっげえでけえ星が、今、ちょうどこの上に迫ってきてるって!」


「星が迫ってきてるって、そんなことあるわけが……」


 言いながら、空を見上げるセレナ。

 同時に、他の面々も首を傾け天を仰ぐ。


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ――


 確かにそこには、星があった。

 まだ小さいが、耳をすませば、地鳴りのような音が聞こえてくる。


「嘘でしょ……」


「ちょっとちょっと、せっかくウチらの世界は神様から解放されて平和になったってのに、何であんなものが落ちてくるワケ?」


「なあ、あれが落ちて来たら、あちしたちはどうなるんだ?」


「あのサイズの隕石が落ちてきたら、間違いなく消えてなくなるんじゃないですかね」


「おいおい、そんなの勘弁してくれよ!」


「私、まだサーヤを抱けてない。仕方ない、今ここで脱ぐ……」


「うわわわわっ、えっと、ニーズヘッグ、さん? 落ち着いてっ! お願いだから! ねえマーリン、この人を止めてよぉっ!」


「……」


「マーリン?」


 マーリンはハルシオンの呼びかけにも応じずに、腕を組んでじっと隕石を見つめている。


「神のシナリオから離れた不確定の世界では、こんな何の脈絡もない悲劇さえも許される……ってことかしらね」


 今までは、不幸なりに秩序があった。

 それは神がシナリオを作っていたからである。

 しかし本来、世界とは偶然の連続だ。

 ありえないなんて、ありえない。

 笑ってしまうほど理不尽で、馬鹿げていて、理屈なんて無視した現象が起きる。

 それが、世界の本来あるべき姿。

 ならばここで生きる人々は、それを自分で掴み取った以上、受け入れるしかない。

 どんなに不条理だとしても。


「まあ、そのためにこちら側にも理不尽がいるのだけれど。サーヤ、行けるかしら?」


 マーリンは、すでに拳を握るサーヤに言った。


「もちろんです、お母さん。あれぐらい(・・・・・)なら、いくらでも!」


 笑顔すら浮かべながら、サーヤは言い切る。


「言うようになったわねえ」


 隕石は明らかに先ほどよりも大きくなっている。

 地表に衝突するまで、あと数分も無いだろう。


 サーヤは瞳を閉じて、気を整える。

 結局、13個の神器は全て彼女の体の中に戻ってきた。

 鞘としての能力も、今やサーヤ自身の意思で使いこなすことができる。


「システム14(Over)、完全解放――」


 神器の力を全て解き放てば、彼女の体は輝くオーラを纏い、髪もキラキラと輝きだす。

 神々しさすら感じるその姿に、セレナたちは見とれていた。


 拳に十分な力が集まる。

 お腹にきゅっと力を入れる。

 瞳を開き、サーヤは右腕を天に向けて突き出した。

 そして、叫ぶ――


「正拳ッ! エクスカリバアァァァァァァアアアアアアアアアアッ!」




 

完結です、お付き合いいただきありがとうございました!

下のボタンから評価を入れていただけると、作者喜びます。

感想とかブクマとかレビューでも喜びます。


どうにかこうにか、最後までコメディで押し通せたんじゃないかと……えっ、できてない? いやいや当社比では出来てますよ! 出来てます! これはコメディです!


そんなわけでコメディだったわけですが。

難しいですね、率直に! ちょっと気を抜くとシリアスの野郎がぬっと顔を出してくるんですよ。

そんでいざシリアステイストを入れるとまあ楽しいこと楽しいこと。

性格ですね。


この後はとりあえず、お前ごときが~と止まってる連載進める予定です。

今後もkikiをよろしくお願いします。




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