4話 ミルンと地獄の鬼ごっこ.2
さあっ! 始まりましたっ!
ミルンと地獄の鬼ごっこ!
便座が恋しい独身男、小々波流と、睾丸モゴモゴ、鬼役のミルンで、お送り致します!
逃げる小々波流!
鬼に捕まれば、即あの世行きのこのゲーム!
果たして、鬼のミルンから、逃げ切る事が出来るのでしょうか!
「なーんてやってる暇無えええええええっ!?」
ミルンの脚が速いんだよっ!
あの斧持ってっ、豚野郎より速いのって、どう言う事なの!
ブオンッブオンッ────『ミルンのおいえええええええええええっ!!』
「バーサーカーっ!?」
ジグザグに走っても、ミルンのサイズだから意味が無いしっ、何でまだ、追い付かれていないのか分からんわ!!
「っ、ミルンが消えたっ!?」
足を止めて、周囲を確認する。
あの速度だ。先回りされている可能性も有るし、下手に動けば……殺られるっ!
ガサガサッ────
「慌てるな……今のは風の所為だ……」
ガサガサッ────
「木を背にして、視界を広く持て……」
ガサガサッ────
「どこだ……どこから来るっ……」
『ミルンのおいえええええええい』
ゴズンッ────「でえええええっ!?」
上から斧を振り下ろして来たあああっ!?
後少しズレてたらっ、俺の頭が縦に割れてたよねミルンさん!?
「また消えたっ!?」
コレはアレだ……遊んで殺る気だぞ。
何で俺、異世界に来てまだ間も無いのに、死にそうな目にばかり遭うの?
真っ当な人生を送って来た、一般人よ?
悪い事何もした事無いんだよ?
ガサガサッ────『ミルンのおいえ!!』
「来たああああああっ────!?」
走れっ!
走るんだ俺っ!
森の中で迷うよりっ、今は命が最優先っ!
中学の時はっ!
短距離走だけは速かったんだっ!
脚を止めるな腹肉邪魔だあああああっ!!
「ふっふっへっ……ミルンが居ないっ、かはぁ」
撒いたのか?
取り敢えずっ、一休みだ!!
木を背もたれに、しゃがんで周囲を警戒。
カバンの中身は、炭酸飲料に、カップ麺と、残った濡れパン。
「もうっ、このパン食うしか無いな…」
さっき食べたパンだけじゃ、正直足りなさ過ぎて力が出ないし。
炭酸水は……水分は貴重だな。
これが無くなると、確実に詰む。
「パンだけにするか」────バリっ!!
うひっ……袋破く音でビビるとか。
「菓子パンがしおしおじゃん……」
コレも貴重な食料だけど、この腹減りは無視出来ない。でも、しおしおかぁ。
菓子パンは、サクッと食べたいんだよなぁ。
「嫌ならミルンが食べる」
「これ食うのか? それならやるよ。ほれっ」
「あむっ! モキュモキュ……微妙」
「だろ? やっぱりサクサクが一番だよなぁ」
「ミルンは、お肉が食べたいです」
「お肉か。それは無いな──っ。はっはっはっ」
「お肉なら目の前です!!」
はっはっはっ────「目潰しっ!!」
地面の土を握り、ミルンの顔目掛け投げ付け、即座に走り出す。
「ぷぷっ! 流さん卑怯っ!?」
「斧持ってるミルンにっ、言われたく無ええええええええええ──っ!!」
走れ──っ、走れ──っ、兎に角走れ!!
ミルンに追い付かれない様にっ、全身全霊を込めてっ、走り抜けえええっ!!
『にーがーさーなあああいっ!!』
森一面に、ミルンの声が響き渡る。
アレかなぁ……ミルンはこの森の主なの?
若しくは森の精?
違うよね?
どう見ても、犬耳っ子だもんね?
「狼さんかなああああああっ!!」
『ミルンのおにぐううう──っ!!』
追って来たああああああっ!?
ヒュンッ────「おおおあああ!?」
転がる様に身体を前に向け、頭があった場所を斧が通り過ぎていく。
「ミルン! 本気で殺す気か!」
ミルンは、斧を振りかぶる遠心力を上手く使い、更に追撃して来た。
「今度は脚!?」
無様に飛び跳ねて、何とか回避したものの、ミルンがその勢いのまま身体を捻らせて、下から斧を振り上げようとしている。
そこは駄目だぞミルン!?
飛び跳ねている為避けれない!!!
狙われているのはっ、一刻前に血塗れミルンが、モゴモゴと食していた部位。
斧がその部位目掛けて、振り上げられる。
「そこを!」
空間────────────
「潰されてったまるかぁあああ!!」
────────────────収納!!
ミルンの頭上に、大量の元豚野郎(肉)を、雨の様に降らせた。
「お肉!?」
ミルンが勢いを殺し、元豚野郎(肉)に目を奪われた瞬間、俺は何とか身体を捻り斧を回避つつ、更に森の奥へと駆け出していった。
『まっ────』
遠くで響くミルンの声が、少し寂しそうに聞こえたのは、幻聴であろう。




