19話 神話の中の怪物達.3
睨み合うアルテラとT-OG。その間に挟まって、二人からの視線を浴びるのは、我。
もの凄く居心地が悪い。
T-OGに動けと言ったのは我じゃが、臨戦態勢になれとは言っておらぬし、なんかもう、面倒臭くなってきたのじゃ。
「たかだか人に作られたガラクタが、女神であるこの私に向かって、得体の知れない物を向けてくるだなんて……万死に値するわよ」
「笑。当時の神々ですら、当機を消滅させる事叶わず。片腹痛いとは正にこの事かと」
「そう……そんなに神の一撃を受けたいのね」
アルテラは、自らの首に巻いた羽衣に手をかけると、それをシュッと振り下ろした。
そこに現れたのは──桃色のレイピア。
それこそが、アルテラの神器。
「待つのじゃアルテラ! 貴様っ、ここで神の力を使うてはっ、この"大陸が沈む"のじゃ!」
「大丈夫よ。転生神が干渉する様だし、大陸は沈まないわ。まぁ……半分は無事でしょ」
此奴っ、気付いておらぬのかや!
「南には流が居るのじゃぞ! 彼奴に関係する者にまで被害が及べばっ、流がキレおるのじゃ! 過去の戦を忘れたか!」
流は魔神にして、世界樹の守護者。そして、哲也には成し得なかった、神の門を開くスキルを有しておる。
「彼奴が怒り、神を敵だと認識してしまえば、神域へ突撃をかまして暴れ回るのじゃ」
「……チッ、過去の大戦を遥かに凌ぐ、馬鹿みたいな被害が出る訳ね」
「左様じゃ。しかも彼奴は、哲也以上に精霊に好かれておる。大陸が沈む以上の混沌が、世界を覆う事になるのじゃぞ」
精霊神は、哲也を庇って消滅した。精霊達は悲しみながらも、精霊神の想いに応え、神と争う事を避けたのじゃ。
「またあの時と同じく、守護者に刃を向けたならば、精霊達は怒り狂うじゃろうの」
ただでさえファンガーデンでは、上位精霊が獣族に化けて暮らしておるし、地の精霊であるミユン、水の精霊であるピュアと、元素精霊が二人も居るのじゃ。
「大陸一つならば、神であるお主らには痛手ではなかろうが、世界の破壊は望んでおるまい」
「……分かったわ。今回は魔龍である、黒姫の顔を立ててあげる。一つ貸しだからね」
「不服。ですが、被害が想定を超えると判断。外部兵装、黒の剣を解除致します」
ここまで言って、ようやくなのじゃぁ。転生神の奴め、神の力の解放を許すとは、歳をとり過ぎてボケたのかや。
「それはそれとして、さっきニャンブルが言っていたメイちゃって、誰なのかしらねぇ」
「ぐぅっ……んっ?」
アルテラは気付いておらぬのかや? 逃した筈のもちが、足音を消しながらゆっくりと、アルテラの背後に迫っておるのじゃが。
「何か誤解している様だけど、私は調査に来ただけなのよ。ステータスが見えない者が居たとしても、争う気はな──『うにゃ!』痛い痛いっ、誰よ背中にっ!?」
「にゃゔゔゔっ! 引っ掻くにゃーよ!」
「ちょっ、何で私の神器で守れないのよ!?」
もちの奴は、防御貫通スキルを持っておる。魔龍の我の鱗ですら、易々と傷を付ける、ある意味で厄介なスキルじゃ。
「ガリガリにゃ! ガリガリにゃっ……この布貰うのにゃ! メイちゃに似合いそうにゃ!」
「あっ!?」
しかしまさか、神にも効くとはのぅ。
「こらっ! 私の神器返しなさいよ!」
「嫌にゃーよ。これはもう、もちの物にゃ」
おやっ? アルテラの神気が下がりおった。こやつまさか……神気の力の大半を、神器に入れておるのかや。
「アルテラお主……学ばぬのぅ。以前にも流に神器を奪われて、泣いておったじゃろうに」
「うっ、煩いわねって、あのニャンブルどこに行ったのよ! 見失ったじゃない!」
「神の眼を使えば、見つけられるじゃろ?」
「わっ、分かってるわそんな事!」
アルテラめ、相当焦っておるのぅ。そんなに焦っておると「隙だらけなのにゃ!」と、またもちが飛び掛かって、他の神器も奪われ……ておるのぅ。今度は簪なのじゃ。
「ぐっ、このおっ!」
「にゃっ、にゃっ、うにゃっ」
「笑笑笑笑笑。ニャンブルが神を翻弄しております。面白動画として、永久保存致します」
「二つ目の神器で、相当衰えおったのぅ」
もちはアレじゃな。流とはまた違った意味での神特攻で、間違いないのじゃ。人と猫人の混血とは、こうも特異な者なのかや。
「となるとミルンも、何か能力があるのかも知れぬのぅ。人と犬人の混血じゃし……」
「メイちゃに渡すのにゃああああああっ!」
「こらあっ! 待ちなさああああああいっ!」
二人がそのまま、行ってしまった。
「……殺伐とした雰囲気が、一気に消えたのぅ」
「問。魔龍、宜しいでしょうか」
「我に質問かや? 一体何じゃ?」
古代兵器であるT-OGが、魔龍たる我に質問など、何を知りたいのかのぅ。ドールの姉妹機じゃし、ここは何でも答えてやるのじゃ。
「疑問。あの二人を追わなくとも、宜しいのでしょうか。恐らくあのニャ……もちは、地下五階に向かったと推測されますが」
「……あっ!?」
もちの行った先には、凛宮司が居るのじゃ!
「って、お主も追わぬか!」
「答。先程、黒の剣を発動した為、燃料不足にて行動不能。浮くだけで精一杯です」
「そんなもん使うでないわあっ!?」




