12話 化物と化物と化物と.1
レッツァマーダ魔導国を出立して、既に一週間。特別製の馬型ゴーレムと、私のスキルを駆使して、本来であれば一月かかる距離を、僅か七日で走破する事が出来た。
「チッ、ここまでか。流石に無理をさせ過ぎたな。しらみ潰しに探すしかないか」
その所為でゴーレムの脚が折れ、使い物にならなくなってしまったが、ノブストンの国境は越えたので、良しとするしかない。
「お師匠様の話だと……南東だったか。念の為、ステータスの確認だな」
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【トリアヌ・K・アルジェリーヌ 二十六歳 レベル35】
(能力値)
・攻 III
・守 Ⅳ
・体 Ⅴ
・技 Ⅶ
・精 Ⅳ
・運 Ⅱ
(スキル)
・遠視
『十キロ先まで視認可』
『効果時間十秒 クールタイム六十秒』
・疾走
『付与可能』
『効果時間五分 クールタイム五分』
・魔弓
『各属性の矢を放てる』
・能力向上
『各スキルクールタイム半減』
『クールタイム二十四時間』
・環境適応
『各耐性強化』
『常時発動』
(称号)
・魔人
・超人
・野蛮人
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「……何度見ても、慣れないものだ。なぜ私が野蛮人なのか。いつかこの称号とやらを付けた者に、問い詰めたいのだが」
荷物を馬から下ろし、必要な物だけを背負って、方位磁石で進むべき方角を確認。ゆっくりと歩き始め、徐々にその速度を上げる。
「"遠視"……先ずはあの町か」
兎留美お手製の地図によれば、国境近くのあの町から南東に、幾つかの小さな村がある。南に進めば、崖下に広がる町があるのだが、兎留美が捕えられている場所ではないだろう。
「あの町に居るのか、それとも先の村か……」
ノブストンからアッジスノードへ帰って来る最中に、エルララルラに襲われたと仮定するならば、先の村の可能性が高い。兎留美は走るのが遅いから、ここまでは来れないだろう。
「そこの者っ! 止まれ!」
考え事しながら走っていたら、町が目前に迫っていた。急ぎ走る速度を落として、懐から身分を証明する物を出す。
「北から来た様だが、この町に何用か」
「ただの迷宮採掘だ。国境通行許可証と、探窟者組合の証明書もある。確認してくれ」
「ああ……ふむ、確認した。この町に探窟者が来るのは、久々だな。掘り出し物を見付けたら、町長の所へ行くと良い」
「分かった」
この守衛には悪いが、迷宮に潜る為に来た訳ではないからな。兎留美を探して居なければ、次の目的地まで急ぐだけだ。
「さて、先ずは町を一周するか」
地図によるとこの町は、アルカッティオというらしく、国境が近い事もあって、人の通りはそれなりにある。が、食料難はどこも変わらず、歩く人達の顔色は暗い。
「ノブストンはレッツァマーダと違って、国土が広いからな。こうなる事は必然か」
町を覆う石壁は劣化し、石畳みの地面も所々剥がれており、なによりこの、息を止めたくなる程の酷い悪臭。
「返せよ! そのキャルピー僕のだぞ!」
「うるせえっ! これは俺が見付けたんだ!」
「二人共、喧嘩しないでよぉ」
汚物だらけの道を進んでいると、ああやって芋虫を奪い合う光景を、幾度も目にする。ヘドロの様な臭みと、吐き気を催すあの芋虫ですら、この国の貧しい者達にとっては、今日を生きる糧に他ならない。
「そこのお方……お恵みを……お恵みを」
こういった者も、勿論存在する。パッと見ボロを着た、体の不自由な老人に見えるが、そのボロの下には得物が隠されているだろう。
「それ以上近付けば、どうなっても知らんぞ」
「お恵みを……お恵みを……」
摺り足でゆっくりと、まるで"間合いをはかる"かの様に近付いて来た老人は、「持ち物寄越せええええええっ!」と思った通り、懐からナイフを取り出して、突き刺そうとして来た。
「馬鹿が」
即座にナイフを握る手の甲目掛けて、腰を捻った右蹴りを打ち込み、ペキャッとナイフごと骨を砕き、叫ぶ間を与えないよう、左蹴りを老人の顎に振り抜いて──意識を奪う。
「この感じだと、矢張りこの町には居ないか」
もしこの町にエルララルラが居たならば、この様な者が出歩く訳もなく、恐怖に怯えて家に籠るだろうからな。
「念の為、町の中央も覗いておこう」
地面に倒れている老人の背中を、鉄で保護してあるブーツの踵で踏み抜き、二度とまともには歩けないようにしておく。
「ぎゃっ!? ぐぎぃぃぃっ!」
痛みで目が覚めてしまったか。
「物乞いを偽り、私を刺そうとして来た罰だ。命があるだけ、有り難いと思え」
それだけを伝えると、地面を這う老人を放置して、そのまま町の中央へと向かう。
「ここは……広場か」
枯れかけの井戸に、品数の少ない商店。町の柵側と比べれば、比較的子綺麗な服を着た者は多いが、それでも表情は最悪だ。
「何もかもを諦めた、そんな顔だな」
キャルピーを奪い合っていた子供達の方が、生きようと必死になって足掻いている分、あの大人達よりも顔付きが良い。
「ここに居ても無駄だし、次の場所に向かうか」
そのまま町を観察しつつ南門から出て、南東に向けて走り出す。次の村まで歩いたなら、一日二日の距離ではあるが、スキル疾走を都度使えば、夜迄には着くだろう。
「村に着いたら、宿を取ろう。流石に、ぶっ通しでの野営は疲れた……」




