12話 報告対策実行しましょう.5
川の向こう岸に、ミチミチに並んで威圧してくる、ノブストンの兵達。目算でざっと、千以上だろうか? まだまだ増えるわ。
「わらわらと、ご苦労なこって」
「沢山居るのっ」
「前に出るなよミルン。弓兵も少し混じってるから、狙われるぞ」
「かしこまっ。小屋の中で待機してますっ」
そう言ってミルンは、五メートル程の岩を駆け上がり、簡易小屋へと身を隠した。
「ミルン……あんなん出来たんか」
ドゥシャさんが、教えたのかなぁ。
「流や、我らはどうするのじゃ?」
「俺らは前進だな。ここはドールとミルンが居れば、護り切れるだろうし」
「くははっ、暴れても良いのかや?」
「出来れば、死人は出すなよ」
ゆっくりと、橋の前まで歩く。
川の幅は、凡そ十メートル程。深さは、この立派な橋を見る限りだと、相当深い。
そこかしこで、松明が焚かれ、夜にも関わらず、お互いをハッキリと、認識できる。
「誰か来るっぽいな」
「ふむ、投降を促しに、来たのでは無いかや?」
たった一人で、橋の真ん中迄歩いて来るとか、アイツらは馬鹿なのか?
「我等がノブストンを犯せし、賊に告げるっ! 速やかに捕らえた者達を解放しっ、投降せよっ! さすればっ、我等が女帝の恩赦によりっ、減刑するとの御言葉であるっ!」
はぁ……やっぱり馬鹿っぽいな。
「ノブストンの愚かな女帝っ! エルララルラ・ポーノグリトス・ノブストンに告げるっ!」
「良く噛まずに言えたのぅ?」
「ここより先はっ! アッジスノード王国の領土であるっ! もし橋を超える者おらばっ! この魔神に敵対するとっ、心得よっ!!」
「流や、ノリノリじゃのぅ」
「少しだけ、楽しくなってきたわ」
さて、ノブストンの兵達は、どう出るか。
そう思った矢先に、頭にコツンっと、何かが当たり、地面に落ちた。
「何……あぁ、俺も随分、人間離れしたなぁ」
「御主魔神じゃろうて。ただの鉄の矢など、刺さらぬじゃろうな」
「うん、納得したく無いわぁ」
向こう岸を見ると、弓を射ったであろう弓兵が、俺と目を合わせて、慄いている。
「っ、放てえええええええええっ!!」
指揮官らしき奴も、何かを察したのか、弓兵達に指示をだし、来るわ来るわと矢の雨が。
「簡易小屋は……無事か」
「彼奴らの仲間を、捕らえておるからのぅ。あの場所は狙わぬじゃろうて」
「そりゃ安心だ。おっ、氷柱が飛んで来たぞ? 魔法使いでも、混じってんのか」
傘をささなくても、濡れる心配の無い雨だけど、コンコンゴッゴッと、地味にうざったい。
頭にひたすらダイレクトってか。
「あの化物を殺せえええええええっ!!」
「「「おおおおおおおおおっ!!」」」
そりゃあね。矢が弾かれたり、魔法が当たっても平気だったら、次は物量だよな。
「んじゃ黒姫、任せるわ。俺は、あの首都ギリギリに、アレ落とすから」
「任されたのじゃ」
橋の幅は、六メートル程か。
数にモノを言わせて、圧殺しようにも、一度に来る兵は限られるし、何より相手が悪い。
そこの美女、魔龍さんですよ?
「くははっ! 我に挑もうなぞっ、数千年早いわあああああああああっ!!」
「「「ああああああああああっ!?」」」
攻めて来た兵士達が、面白い様に空へと飛んで、そのまま川の中へポチャン。
「……そいじゃ、始めますか」
集中集中っと。これ使うの久々過ぎて、隕石降らしちゃったら、御免なさい。
「ミルンのボロ小屋を……消した魔法。ミルンのボロ小屋を……消した魔法。良しっ! この感じこの感じっ、うりゃあっ!!」
気合いを込めて、魔法を発動っ!
「狙いも完璧っ、どうだ……んんっ?」
「こりゃ流っ! アレは違う魔法じゃぞっ!」
「うん……見りゃ分かるんだけど、なんで?」
俺がイメージしたのは、火の玉から光の柱が延びて、ミルンのボロ小屋や、大聖堂を消し飛ばした、あの魔法だ。それなのに、少し先に見える、ノブストン首都の真横には、"城壁程の大きさの火球"が発生しており、どう見ても、あの魔法じゃ無い。
「ここから見て、あの大きさって……何?」
後で黒姫に聞いたのだが、俺が発動した魔法は、属性魔法の最上位。太陽の如き輝きでもって、地上を死の海へと変える、神級魔法────「ギリギリじゃぞっ!!」
「あれっ? 消えた? と言うか、黒姫は? あいつも急に消えたな……トイレか?」
「ぷはあっ! 熱かったのじゃぁぁぁっ、危ないところじゃったわっ!」
「うおっ!? 何で川から出て来んだよ、ビックリしたんだけど」
「馬鹿者っ! 我が相殺してなんだらっ、この国が消えておったわっ!」
「えっ、もしかして魔法消したの、黒姫か?」
「我以外居らぬじゃろうがっ!」
今の魔法発動してたら、国消える威力って、隕石落下と同レベで、ヤバい魔法じゃん。
やっぱりアレか? あの手の魔法は魔神化しないと、上手く発動出来ないのか。
「んで……何でノブストンの兵士達は、悶え苦しんでるんだ? 魔法消したんだよな?」
「あの魔法の肝は、熱なのじゃ。鎧を着込んでおる兵からすれば、先程の熱でも、地獄の苦しみじゃろうて」
「うへぇ、死んで無いよな?」
「死にはすまい。鎧を脱ぐ時に、再度地獄の苦しみを、味わう程度じゃ」
火傷してんのね。そりゃあ鎧が鉄製だから、脱ぐ時には大変だわ。
「それじゃあ……完全勝利か?」
「少しは反省せぬかっ! この数の兵共をっ、どうするつもりなのじゃっ!」
「死なないなら、放置一択だろ? 今の内に、この橋のこっち側、関所作っとこうぜ」
「此奴っ……ふぅ。二度とあの魔法は、使うで無いのじゃ。我が居らなんだら、ミルンまで巻き添えをくって、危なかったのじゃぞ」
「それは……済まん」
やっぱり俺の魔法は、使うべきじゃ無いか。
使うとしても、魔神化した状態で、尚且つ、ミルンが近くに居ない時だな。
「少なくとも、我が近くに居らなんだら、使う魔法は、あの焚火程度にしておくのじゃ」
「焚火って、豪炎の事か……焚火扱いかよ」




