10話 影さんと一緒.9
12/5 加筆修正致しました。
ミルンと俺は、血は繋がっていないけど、本当の家族だと思える、繋がりがあった。
血縁上は赤の他人。
だけど心の中では、間違い無く家族だ。
俺は、両親が亡くなってから、家族は居ないと人生に疲れ、諦めていたが、異世界でミルンに出逢えた。
助ける事が出来て、本当に良かった。
一回逃げちゃったけど、許して下さい。
しかしだ……どうにも腑に落ちない、どうしても納得出来ない事がある。
母さんは死んで、異世界転生。
俺は、気が付いたら森の中。
明らかに、何か意図があって、誰かが俺達に干渉している。
誰が干渉してんのかは、分かっている。
あの迷惑アナウンス。
「リシュエルっ、俺の家族で遊びやがって。探し出して……っ、本気で殴ってやる」
俺は、眼が涙の所為でパンパンに腫れ、鼻水を垂らしながら、ミルンを撫でたまま、キリッとした顔で、アイツをボコる意思を固めた。
「ずびっ……鼻水がっ」
「おとうさんきたないっ、これでふくの!」
「ビブン……ばびばぼう」
「それは、すててください」
ミルンさんや、この布切れは、しっかり洗って返すから、嫌がらないで?
鼻をぐりぐり、涙を拭き拭きと、色々格好付かないんだけど。
「ふぅ……ミルン、ありがとうな」
「どういたしまして」
「布は洗って、ちゃんと返すからな」
「きたないので、いらないの」
心にグサッと、尻尾をモフモフ。
何かミルンのお陰で、元気が出て来た。
もう……大丈夫だ。
「影さん、話してくれて有難う。お陰で一層、ミルンが可愛くて仕方がない!」
影さんは、安堵した表情を見せた。
やっぱり、気を張ってたのか。
「こちらこそ、辛い話をした様で……申し訳ございません、流さん」
「謝る必要は無いさ。こうしてミルンと、出逢えた訳だし。泣きじゃくる年齢でも無いしな」
「そうですか……」
「ミルンをモフれば、元気いっぱいだ」
「ふふっ。矢張り、そっくりですね」
ようやく笑顔を見せてくれたな。
異世界での母さんの旦那……生きていたら、俺と無二の親友になってただろうに。
「んっ? そう言えば……」
さっきの話を聞く限りだと、こっちでの母さんの旦那って、元王子様なんだよな。
「影さん。母さんの旦那が、元王子様って話、間違い無いのか?」
「はい。現在の女王の、兄君にあたります」
「……と言う事はっ」
俺は、ミルンを撫でながらモフモフしながら、物凄く嫌な事に、気付いてしまった。
「ルシィの姪がっ、ミルンか!?」
「左様です。ですので、その事も含め、女王に報告せねばなりません」
「マジか……」
ミルンさんや……どうやら貴女様は、王族の血筋で、高貴なケモ耳だそうだよ。
ケモ耳おほほ御嬢様も、悪く無い。
「ミルン。ミルンは何か、偉い人みたいだぞ?」
「えらいひと?」
「そうそう。おほほって、言ってみてくれ」
「おほほっ!」
全く似合って無いな、可愛いだけだ。
ふわふわドレスを着ても、有り余る元気っ子オーラが出てるから、お転婆お姫様だな。
「さてっ、それじゃあどうしたものか」
先ずは、影さんのお願いである、ここのケモ耳っ子達を、何とかしないとだな。
「なあ影さん。女王に、今の話を報告するついでで良いからさ。今から俺が言う事も、伝えてくれないかな?」
先ずは、女王を使ってみますかね。
「畏まりました。ですが、私が伝えなくとも、そこに"影"が居りますので、今の話の内容を、隠さず伝えるでしょう」
「そこに……影が居る?」
影さんは、今目の前に居るじゃん。
超絶美人エルフさん。
「見えてますよ。出て来なさい、影」
影さんがそう言うと、背後に嫌な気配を感じて、振り向いたら黒外套が居た。
「っ、何だ今の感じ……どこから現れた?」
「……」
無言なんですこの影さん。
反応が無いし、何なの?
「いつから居たんだ? おーい、聞いてる?」
「…………」
まだ無言!?
恐いんですけど!?
「お久しぶりです影」
「お久しぶりです影。衰えていない様で、少しだけ安心しました」
「いえ。ここ十年と少しで衰えて、もう貴女には敵いませんよ、影」
「謙遜しなくても、貴女は影の中でも、歴代の力持つ影ではありませんか」
「変わりませんね影は」
「そちらこそ影も」
「「ふふふふふ」」
「何このやり取りっ!? 怖い!!」
「かげかげうるさいの!」
ミルンは頭が混乱している様で、俺も頭が混乱しているから、頼むから止めて欲しい。
何で影影呼び合ってるの?
皆んな影ってお名前ですか?
「流さん。その影はずっと、貴方を監視して居た様ですね。その影に女王への言伝を頼めば、間違い無く伝えてくれます」
「ストーキングされてたのかよ……あの女王っ」
取り敢えず、院長は影さん。俺をストーキングしてたのは、影さん二号と命名。
じゃないと、影影影影と、どっちも影さんあっちも影さんだと、脳が混乱するんだよ。
「んじゃぁ、伝えて欲しい内容が────」
黒外套姿だから顔見えないけど、影さん二号も、エルフなのかねと思いながら、女王ルシィへの言伝を頼んだ。
「それでは今の話、女王陛下へ」(影さん)
「承った。影、また近いうちに」(影さん二号)
そういって、影さん二号は、普通に扉から出て行ったじゃ無いわ!?
こうっ、現れた時みたく、『一瞬で消えた!』みたいな事を、期待してたのにっ!!
「物凄く……疲れた」
ミルンも眠たそうだし。
尻尾もへにゃって、下がってる。
「影さん。話終わりなら、少し休むよ」
「そうして頂けると、有り難いです。今日はここで、ゆっくりして下さい。子供達も、喜ぶでしょうから」
そう言って、影さんは出て行った。
足音が全くしないから、多少時間をおいて、もうそろそろ良いかな。
「よしっ、起きるんだミルン! 外で遊ぶぞ!」
ミルンの尻尾が、ピンっと元気になった。




