10話 影さんと一緒.8
そうかぁ…最後は王子様に連れられてか。
とんだラブストーリーだわな。でも、俺がこっちに来る前に転生って、絶対リシュエルって奴が関わっているな。絶対見つけたら殴る。
「それで、自分が転生者って事は知らなかったんだよな?」
「はい。ずっと奴隷の生活だった様で、ステータスの存在も教える者が居なかったのではないかと」
あっちで殺されて、こっちでもハードモードって何も言えないなぁ。まあでも、今は何処かに居るのだろう。
「今、何処に居るか知ってるか? ちょっと見に行っておちょくりたいしな」
母さんがケモ耳って…いや…見たく無いな。
やっぱり行かなくていいか。
「もう亡くなっています」
なんか影さんが冗談いってるし、見に行かないって。
「もう、この世にはいません。子供を残し、由香里様も、その夫も」
はっ? どうしてだ…?
「一部の獣族達による反乱に巻き込まれ、亡くなった様です。私も知ったのはここ数年で、調べていて、判明いたしました」
影さんが歯を食い縛ってる。
余程、仲良かったのかな。
でもなぁ。
これは、あまりにも。
あっちで殺されて、こっちでも巻き込まれて、何だそれ、何だそれ、じゃあ、母さんは。
「何一つ、報われないじゃ無いか!?」
殺されて、転生して、奴隷で、結局は。
俺は力無く椅子に座り顔を覆う。
思いだしてしまった。
あの遺体安置所で見た姿。
傷口の縫合痕。
白くなった姿。
火葬場の光景。
何だよ巫山戯るなよっ。
「流さん、貴方の目の前に有るではないですか…」
何がだよ…。
俺の顔がぐしゃぐしゃになって、ミルンが俺を見上げ言う。
「おとうさん、ママ知ってるの?」
「ミルンの…ママ…?」
「うん、パパもユカリママも…もういないの」
あっーその言葉で俺は理解した。
村長の奥さんの死んだ理由。
村の近くの魔龍の川でミルンが居た理由。
ラクレル村の廃墟。
そこに居た、住んでいたのは。
俺はミルンを抱える。
ごめんな。
ミルンに合った時に聞けばよかったな。
遅くなってごめんな。
母さんが救われないなら。
家族だけは護らなければ。
あの時感じた怒りは。
間違ってなかった。
血は繋がっていないけど。
繋がっていた。
本当に繋がっていた。
俺はミルンを見て、笑みを作る。
「ああ、ミルンのママを知ってる。知ってるんだ…だって俺の…」
パパとママで、俺はおとうさん。
ミルンはちゃんと理解している。
本当に、賢い子だよ。
なあ、母さん。