10話 影さんと一緒.3
皆さま、こんにちは。
今回も、当物件を案内させて頂くのは私、小々波 流でございます。宜しくお願い致します。
見てくださいこの立地。
辺りの道にはゴミが散乱し、腐敗臭もするこの臭さ。そして、奇声を発する者、服を着ずに寝ている者、ゴミを漁る者等、ご近所様は皆様愉快な方達ばかりで治安も抜群!
さあさあ見えてまいりました当物件の目玉。
有刺鉄線で御座います! これ以上先へは進ませまいとするこの外観。これなら常人は道を変え、関わりを持とうとは思わないでしょう。
そして、その先にありますは頑強な鉄の扉でございます。両端には守衛の様な姿をした若者が眼を光らせており、ボスがいる事間違いなし。さあ皆さま、逃げる御準備を!
「なあ流にーちゃん何しとんのや?」
「おとうさんはときどきこうなる!」
「気持ち悪いですねぇ」
「流君、着いた様だぞ」
おっと、意識が遥か彼方へと旅立っていた様だ危ない危ない。
「おうっリスタ、アジュ。聖女様が帰って来たでー扉早よぉ開けんかい!」
リティナが馬車から降りて扉の両端に立っている若者向かって大股で歩いて行く。
あっ、リティナの頭にリスタと呼ばれた者が拳骨した。アジュと呼ばれた若者が凄い説教してる。
いつ迄待てば良いんだろうか…こっちに来たな。
「すみません、家族がご迷惑をお掛けしたようで、僕はリスタと申します。直ぐ開けますので暫くお待ち下さい」
めっさ好青年だ!?
リティナの家族か。
見た目全く似て無い家族だな。
「おう。アンタが魔王様って奴か、すまねぇなリティナが迷惑かけてよ! 俺はアジュって者だ、宜しくな!」
こっちも口調は荒いが礼儀がしっかりしていて好感が持てる。俺は説教で疲れ、項垂れているリティナを見て思う。
「何や…ウチ今疲れとんねん」
「残念聖女とは大違いだな」
「何がやねん!?」
リスタとアジュが笑いながら扉を開け、俺達は中へ入って行った。
そして、俺は、この世の…天国を見た。
そこには。
「なんっ…だとっ!?」
馬車から降りたミルンが俺の身体をよじ登り、この場所は私の場所だと言わんばかりに鼻息を荒くする。
「おなかまいっぱい!!」
そう、目の前には。
犬耳猫耳何の耳。
尻尾がふりふり遊んでる。
角っ子羽っ子獣っ子。
皆んなキャッキャと遊んでる。
一人止まってこっちを見たら。
皆んな止まってこっちを見たよ。
お目々が爛々輝いて、皆んなが走ってこっちに来るよ。
俺は両手を大きく広げ、さあおいでと合図する。
俺の横を素通りしたよ。
そしてリティナにタックルだー。
「「「リティお姉ちゃんおかえりー!」」」
「なぜだぁああああああああああ!?」
ケモ耳っ子達にもみくちゃにされるリティナを見て俺は…血の涙を流した。
「おとうさんにはミルンがいる!」
そうだね…ミルンだけだよ。