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異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
一章 異世界とはケモ耳幼女が居る世界
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8話 魔物は皆んな生きている.4


 うっ…うん?


 光が俺の瞼を刺激する。


 ゆっくりと目を開けて…ミルンがいない? いつもならおはようとばかりに俺の腹を締め付けて来たのにミルンがいない…トイレか?


 寝ぼけた頭を掻きながらコンテナから広場を見渡す…ミルンが。


 ミルンが。


 ミルンが…昨日使った鍋や皿を洗っている!?


 俺は目を擦りもう一度見る。


 間違い無い。


 ミルンが!?


 あの食べるだけですと言わんばかりの笑顔で豚野郎(肉)の睾丸すらも生食して肉、肉、肉と言い続けて来たあのミルンが…うぅっぐすっ!!


 瞳から雫が落ちて行く。


 俺は、朝っぱらから足元に、大量の水溜りを作っていた。


 今日は…赤飯かなぁ…米無いけど。


             ※


「おーおはひょうさん、なんで目あひゃいん?」


 下に降りると聖女が下着姿のままパンを齧りやっぱりポロポロ溢しているのか…もう慣れたな。


「おはよう聖女様。ニアノールさんは一緒じゃないのか?」  


 下着姿を見よう物なら殺しますねーっと背後から現れて首元にナイフを突き付けて来そうなものだが来ない。


「ニアならミルン、ズズッのお手伝いやな」


 下着姿を見られても一切動じない姿かっこいいですね! 茶を啜りながら喋るんじゃありませんよ本当に行儀というか忙しない聖女だな…聖女だよね?


「ヘラクレスならなんや、マッスルホースに餌やっとるで」


 村長の事はどうでも良いというかやっぱり筋肉馬とは親戚では無かろうか。


「俺も少し手伝ってくるよ」


 いってらーっと見送られた。

 本当にコイツは聖女なのだろうか。


 俺はのんびりと歩き洗い場へ向かっている。

 ミルンが肩に乗っていないと軽いけど落ち着かなくなって来ているなぁと、ある意味別の恐怖を覚えながらふと、遠巻きにこっちを見ている集団がいる…昨日はあんな奴ら居なかったよな…なんだ?

 

 いや、目線は洗い場…?


 とりあえず気になるので、ご挨拶にと。

「おーい何の用だー?」

 手を振って大声で呼び掛けてみた。


 その集団は俺が声を掛けてきたのが予想外だったのか慌てて走ってきて、俺を囲みーーー

「おいにいちゃんちょっと静かにー」

 ほぅ。

「何叫んでるんだよ逃げられっちまうだろ」

 誰に。

「あらっアタシのタイプ(漢)」

 さわるな。

「アンタも加わるかい兄さん?」

 何に。

「良い金になるぜあれわ」

 何が。

「「「「「あそこの獣女を攫うんだよっ」」」」」

ーーーそんな言葉を宣った。

 

 運が良かった。

 先にコイツらに話かけて。


 だってニアノールさんやミルンだぜ。

 細切れミンチで生食されちゃうぞ。


 俺はへーっと息を吐き、意識を集中して深呼吸すーはぁああああ。あっプチッて血管切れたよ。


「俺の娘にっ何っしよぅとしてんだゴラァアアアアアアアアアアアアアアア!!」


 俺の魂からの叫びに、スキルが呼応し、急激な怒りの感情による炎の塊を作り出す。


「死に晒せぇえええっ!」


 先手必勝! 魔王の様な笑みを浮かべて、俺を囲んでいる男共(漢も含む)を焼き尽くした。

 

            ※


 激しい爆炎を背に、俺は「ふぅっ」とやり切った顔でその場を離れ、洗い場に向かおうとするとーーー

 「おとーさーん!」

ーーー天使の羽をも幻想させる垂れ下がった耳がふわふわの尻尾と合間ってお目々が心配そうに輝いており走ってくるその姿はまるでブフッ!?


「おとうさん大丈夫!?」

 

 大丈夫。

 嬉し過ぎて鼻血が出ているだけだから。


「大丈夫ですか流さん!」

「どないしたんや!?」

「何があった流君!」


 と集まる集まる、他の野営地の利用者も剣や槍や斧や弓や金棒やハリセンを持って集まって来たハリセン!?


 カクカクシカジカこう言う事ですと説明。


 獣族如き攫われたってとか言う奴もいたが、大半の人は思いの外納得してくれた。


 なんでも地方に行けば行くほど獣族に排他的ではあるが、逆に現在の王都はそこまで酷くないらしい。


 現在の女王は獣族を大層気に入っており、表立って何かをする事が出来ないようになっているとの良い話。


 とりあえずと俺がミディアムなレアにこんがりと焼いた連中を縛り上げ、人だろうと獣族だろうと攫うと犯罪との事、衛兵に引き渡せば金になると言われたので、一番友好的であったハリセンの人に、邪魔だからあげると押し付けた。


 ハリセンの人…レベル75だから安心して任せてくれって…すげぇ。


「今回は自制できたのだな!」


 村長が笑顔で言ってくる。

 いや、思ってたよりも威力が出なかっただけですぅー良かった良かった、とは言えない。


「おとうさんっ」


 あっ、また鼻血でそう。


「ミルンおてつだいしたんだよ!」


 あぁそうか、そうか。


「偉いぞミルン、有難うな」


 頭をわしゃわしゃと撫でると、とても嬉しそうに尻尾が揺れている。


「私も手伝いましたよぉ」


 有難うニアノールさん手をワキワキ。


「ヒィッ!?」


 逃げられた…ワキワキ。


「はぁ、何しとんのや、早よ準備していくで!」


 聖女様よ…何かまとめようとしてるけど、お前下着姿のままって羞恥心は何処へ行った。

 

            ※


 それじゃあ筋肉馬さん、また、コンテナ引っ張ってお願いしやす。と筋肉馬の御機嫌とりにブラッシングをしてからミルンを肩車しつつコンテナ上部の定位置へ移動の準備万端と思ったけど…何かが足りない。


 何だ…?


 あぁ!


 コカトリス(非常食)!?


「ミルン、コカトリス(非常食)どこに居るんだ?」


 知らない、そうか…逃げたのか?


「まあ良いか。ミルン、朝ご飯食べよう。」


 いらない?

 いらないってあのミルンが?

 ゲフッ(可愛い)


「ミルン…待ちなさい」


 そっと俺からおりてコンテナの昇降口へ向かっていたミルンを抑揚の無い声で止める。


 びくびくしながらこっちの様子を伺ってくるミルンに対して俺は心を鬼にしてこう伝えた。


「今日のなんちゃってビーフシチューは無し!」


 どうりで…ミルンが洗い場で鍋を洗っていた訳だ。

 

 腰にしがみつき「ごめんなさい」と泣きながら謝るミルンを胸に、俺は心の中で呟いた。


 コカトリス(非常食)お前の事は…忘れないと。


 コケッェエ!?


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