8話 魔物は皆んな生きている.3
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皆んなが、玉葱香るシンプルシチュー食べるのを横目に、俺は硬く、冷たい石の上で。正座をしながら村長の説教を聞いている。
「私の家に勝手に上がり込み、勝手に寛ぎ、勝手にご飯を食べる事には目を瞑ろう。しかしだ、持ち主の許可無く物を持ち出し、あまつさえ自分の物とするのは、大人として恥ずかしいとは思わんのかね。しかも君は、自らそこの獣族っ失礼……ミルン君の父親だと、私にあの時に言ったでは無いか。ならば大人として、父親として、やってはいけない事を、教える立場にあるだろう。それを君はなんだねっ! まるで盗人のような事ばかりしおってからにっ! すこしは反省をするのだ!!」
ガチで怒られた。
いつもなら、ミルンが俺の頭をテーブル代わりに使うのに、今は離れて聖女と食べてるよ。
「それで、まだ私に隠し事は無いかね……流君」
無いよーっ、断じて無い無いしか無い。
人が居なくなったから、肉屋から肉を拝借したり、八百屋から野菜を拝借したりと、そんな事はして無いよーっ。
「村長……俺が悪かった」
村長は、頭を下げた俺の態度を見て、溜息を吐き、矛を納めてくれた。
「ならば良い。ご飯を頂こう、流君!」
「流さん。お話おわった?」
「終わったよ……」
「んしょっ、んしょっ、ここが落ち着くの」
即俺の肩に跨って、頭の上をテーブル代わりにしたね……流石ですミルンさん。
「それにしても、空間収納とは……規格外のスキルであるな。其れならば、ダンジョンのみならず、戦時の兵站問題も問題になるまい」
スプーンを俺に向けて、村長が物凄く物騒な事を言ってくる。
兵站問題ねぇ……そんな事よりも、やっぱりダンジョンあるんだな。
「いやいひゃ、そないなスキルにゃら、手ぶりゃで物資持ち運びひゃから、間違いにゃく商人向きやろ?」
「食べながら喋るなってか、こぼし過ぎだろ!」
商人するにも、金が要るだろうが。今の俺、無一文だから、何も出来ないぞ。
「私は、単純に羨ましいですねぇ。そのスキルが有れば、リティナ様の御召し物を幾らでも、持ち運びができるのでぇ」
「それは同意だな。手ぶらで移動出来るし、貴重品を仕舞っておけるからな」
あとは、コレは流石に言えんけど、俺の物と認識するだけで、自動収納出来ちゃうから、盗賊向きのスキルでは有る。
「流さんお代わり!」
ミルンが、皿を下に向けて渡し来たな。綺麗に食べて、どこぞの聖女とは大違いだ。
「はいよ。大盛り一丁な」
玉葱香るシンプルシチュー完売しました!
又のご来店お待ちしております!
皆がお腹をさすって、満足そうにしている顔を見て、ふと笑みが浮かんでしまう。
「流さんお代わり!」
違う。約一名、まだ食い足りぬとばかりに、俺の顔にお皿を押し付けてくる。
「悪いミルン、もうスープしか無いんだ。また明日にでも、コンテナの上で作るからさ。今日は我慢してくれ」
「いや!」
「えっ……ミルン?」
ミルンから、嫌なんて言葉、初めて聞いたんですけど……どうしたミルン?
「ミルン……また明日な?」
「いや! いーやっ! いーまー!!」
尻尾が勢い良く、俺の背中に当たってる。
肩車してるから、良い感じに俺の脳天を可愛い手で、パシパシと……駄々っ子?
「ボソッ(何これ超可愛いっ)」
今まで良い子にしてたから、その反動か?
まさか反抗期っ!?
いやいや……まだまだ先だろ。
俺はゆっくりと、駄々を捏ねるミルンを下ろして、抱っこ姿勢で、優しく言い聞かせる。
「御免な。今日は夜も遅いし、食べ過ぎるのも体に悪いぞ。明日、明日また作ってやるから、今日は我慢しような?」
「なんかアンタ……変わったやっちゃなぁ」
「私にはあんなに、気持ち悪く来るのに!?」
「はっはっは! 本当に親子であるな!」
周りのヤジは気にしない。
気にしないったら、気にしない。
その後、直ぐに我にかえったミルンは、顔を赤くして謝ってきた。俺は頭を優しく撫で、尻尾をモフモフと堪能した。
青く照らす月明かりの下、コンテナの上部に毛布を敷き、空を見上げていた。
見た事の無い星空。
射手座、天秤座、乙女座、さそり座……見慣れた星座が、一つも無い。
北極星なんて、見つけようも無い程に、全てが輝いている。
そもそも、北極星なんて有るの?
「流さん……」
「んっ? どうしたミルン、眠れないのか?」
俺の傍にいるミルンが、話しかけて来た。
「流さんは……どこからきたの?」
そう言えば、ミルンに教えて無いな。
「地球って言う、お星様からかな」
俺は正直に伝える。
ミルンに出会う、前の話を。
ここが何処で、どうしてここに来たのか、本当に分からない事も。
「流さんは…っ、かえりたい…っ?」
ミルンの声が、少し震えている。
不安なのかね。
「そうだなぁ。帰っても誰も居ないし、何も無い。仕事もクビになってるし……」
俺はミルンを、ゆっくりと包み込む。
「ミルンを置いて、帰る訳無いだろ」
優しく、この子が辛くならないように。
せめて大人になる迄は、見守るからな。
「おとう…さんっ…」
「ミルン……寝たのか…ふぅ…」
父さん。俺、無職なのにさ。
母さん。俺、女の子と付き合った事も、無いのにさ。驚く事に、子供が出来ちゃった。
凄く良い子でさ…俺を助けてくれたんだ。
恐い思いもさせてしまって。
頭の中が真っ白になって。
あの時の様な事、二度と起きて欲しく無い。
起こさせないからさ。
どうか空から、見守っててくれよな。
俺は、輝く星空を枕に、ゆっくりと、気持ち良く目を閉じた。
ピロン(小音)
レベルが1上がりました(観てますよぉ)
ピロン(小音)
傍のミルンが、こそっと起きる気配がしたけど、眠気に負けて、そのまま夢の中へと、旅立って行った。




