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異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
一章 異世界とはケモ耳幼女が居る世界
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8話 魔物は皆んな生きている.3



 俺は、皆んなが何ちゃってビーフシチューを食べるのを横目に硬く冷たい石の上で正座をしながら村長の説教を聞いている。


「私の家に勝手に上がり込み、勝手に寛ぎ、勝手にご飯を食べる事には目を瞑ろう。しかしだ、持ち主の許可無く物を持ち出しあまつさえ自分の物とするのは大人として恥ずかしいとは思わんのかね流くんは! しかも君は自らそこの獣族っ失礼、ミルン君の父親だと私にあの時に言ったでは無いか。ならば大人として、父親として、やってはいけない事を教える立場にあるだろう! それを君はなんだね、まるで盗人のような事ばかりしおって、反省しなさい!!」


 ガチで怒られたよ…いつもなら俺の頭をテーブル代わりに使うのに今は離れて聖女と食べてるよミルンさん。


「それで、まだ私に隠し事は無いかね流君!?」


 無いよー断じて無い無いしか無い。


「ごめん村長、俺が悪かった」


 頭を下げた俺の態度を見て溜息を吐き、村長は矛を納めてくれた。


「ならば良い。ご飯を頂こう流君!!」


 因みに食材は俺が村に来る前に手に入れた事にしていますマジで怖かったな村長。


「はなしおわったの流さん?」


 終わったよーと伝えたら即俺の肩に跨って頭の上をテーブル代わりって流石だよ…ミルン。

 

            ※


「それにしても何とも規格外のスキルだな空間収納とは。其れならばダンジョンのみならず、戦時の兵站問題も君がいれば全て解決するではないか!」


 スプーンを俺に向けて村長が物凄く物騒な事を言ってるしダンジョンやっぱりあるのか…行ってみたい。

 

「いやいひゃ、そないなスキルにゃら手ぶりゃで物資持ち運びひゃから間違いにゃく商人向きやろ?」


 商人するにも原資がいるから無理ですよーだって俺は無一文だものーと言うか食べながら話さないで、シチューでもポタポタ溢すのかこの聖女様は。


「私は単純に羨ましいですねぇ。そのスキルが有ればリティナ様の御召し物を幾らでも持ち運びができるのでぇ」


 まあそれに関しては同意だな。実際色んな種類の物が入れれるし俺の物と認識するだけで自動収納って…間違いなく盗人で楽に暮らしていけるなぁ。


「流さんお代わり!」


 ミルンが皿を下に向けて渡してくる。


「はいよ、大盛り一丁な」


 俺は鼻歌を歌いながらシチューを掬い、お腹いっぱい食べさせてやるぜと意気込んでいた。


            ※

 

 はい、何ちゃってビーフシチュー完売いたしました! 又のご来店お待ちしております! なんて皆がお腹をさすって満足そうにしている顔を見てふと笑みが浮かんでしまう。


「流さんお代わり!」


 違う。約一名まだ食い足りぬとばかりに俺の顔にお皿を押し付けてくる。


「悪いミルン、もうスープしか無いんだ。また明日にでも移動中にコンテナの上で作るから我慢してくれ?」


「いや!」

 

 えっ!? ミルンから聞いた事の無い言葉…!?


「ミルン…また明日な?」

「いや! いーや! いーまー!!」


 何かミルンが尻尾をブンブン俺の頭を可愛い手でパシパシと駄々っ子になってるなにこれヤバい超可愛いけど何だ? 今まで良い子にしてたからの反動か? 反抗期か!? いやいやまだまだ先だろ?


 俺はゆっくりと駄々を捏ねるミルンを下ろして、抱き抱え、頭を優しく撫でながら説明する。


「御免な。今日は夜も遅いし、食べ過ぎるのも体に悪いぞ。明日、明日また作ってやるから今日は我慢しような?」


 そんな姿を見てーーー


「なんかアンタ…変わったやっちゃなぁ」

「私にはあんなに気持ち悪く来るのに!?」

「はっはっは!本当に親子だな!」


ーーー周りのヤジは気にしない、気にしない。


 その後、直ぐに我にかえったミルンが顔を赤くして謝ってきたので、再度、頭を優しく撫で撫で尻尾をモフモフと堪能した。


            ※


 夜、青く照らす月? 灯の中で俺はコンテナの上部に毛布を敷き、空を見上げていた。


 見た事の無い星空。


 射手座? 天秤座? 何処だよ。


 北極星なんて見つけようも無い程に全てが輝いている。あるかどうかも分からないが。


「流さん」

「んっ? どうしたミルン、眠れないのか?」


 俺の傍にいるミルンが話しかけて来た。


「流さんはどこからきたの…?」

 そう言えばミルンに伝えた事無いんだな。


「地球って言うお星様からかな」


 俺は正直に伝える。

 ミルンに出会う前の話を。

 ここが何処で、どうして、何故ここに来たのかが本当に分からない事も。


「流さんは…かえりたい…?」


 若干声が震えている。

 俺は。


「そうだなぁ、帰っても誰も居ないし何も無い。仕事もクビになってるしなぁ」


 俺はミルンをゆっくりと包み込む。


「今は、ミルンを置いては何処にもいけないな」


 優しく、この子が辛くならないように。

 ミルンは俺の胸の中ではっきりとーーー


「おとう…さんっ」


ーーーそう言って涙を流しながらゆっくり寝息をたてていった。


            ※


 父さん…俺、無職なのにさ。

 母さん…俺、女の子と付き合った事ないのにさ。

 子供が出来ちゃったよ。

 凄く良い子でさ…俺を助けてくれたんだ。

 恐い思いもさせてしまって。

 頭の中が真っ白になって。

 あの時の様な事…二度と起きて欲しく無い。

 起こさせない…からさ。

 どうか…見守って…て…くれ…よ。


 俺は輝く星空を枕に、ゆっくりと目を閉じていった。


ピロン(小音)


レベルが1上がりました(観てますよぉ)


ピロン(小音)

 

 傍のミルンがそっと離れて行く気配を…感じながら。


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