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異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
一章 異世界とはケモ耳幼女が居る世界

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25/419

8話 魔物は皆んな生きている.1


 11/17 加筆修正致しました。



「気持ち良い風だなぁ……」

「暖かいのぉ……」


 遮る物が無い、何処迄も続く青い空。

 遠くから聞こえて来る、鳥の囀り。

 お腹の上で寝そべる、ミルン。

 移動式の馬鹿デカい、コンテナハウスの上部で、のんびりと仰向け寛ぎながら、王都を目指している。


「暇だなぁ……」

「仕方無いのぉ……」


 ぶっちゃけ、やる事無かったからね。

 荷物はずっと、空間収納の中に有るし、ミルンとお出かけしたいからな。

 それに、費用は全部聖女負担。

 無料で旅行出来るんだぜ。


「無料より安いモノは無いってな」

「楽々ぅ……」


 あの聖女様が、何で俺を王都に連れて行くのか知らんけど、用件は向こうで話すらしいし、

今は旅を楽しむぞ。

 用件済んだら、自由に買物を楽しむも良し、名所巡りも、制限は無いっていう事なら、断る理由無いからな。


「……走るの速いなぁ」

「お馬さん…お肉っ…」


 最初は、こんな馬鹿デカいコンテナ、お馬さん達は、動かせないだろうと思っていた。

 流石異世界馬だよな。

 たった二頭で、脚取り軽く、パッカラパッカラと進んでいる。


 マッスルホースって言う、魔物の一種らしいけど、直訳したら。筋肉馬だぞ。

 村長の血縁か?

 行者が居ないんですけど。

 要らない?

 頭が良い馬だから、道を覚えてる?

 俺よりINT、高くないよね?


 時折ミルンが、『お肉っ…』と、お馬さん達を見詰める所為で、マジで怖いけどね。

 ミルンに喰われまいと、速度が出て、体感速度時速六十キロ以上。

 補装の無い砂利道を、右揺れ左揺れ、上下上下と、ニアノールさんに怒られます。


 俺の所為じゃ無いのにさ。

 背伸びをして、もう一眠り。


「平和だねぇ……気持ち良い」

「お肉っ…」


 決して、フラグを立てている訳では無い。

 あぁ……また揺れがっ!?

 

◇ ◇ ◇


 コンテナの中は、家財道具が散乱しており、足の踏み場も無い、酷い有様。


 ニアノール殿が、忙しなく片付けをするも、時折激しく揺れる為に、一旦手を止め、元凶共に注意をしている。全く改善しないのだかな。


「ニア、もうええよ。諦めーや」


 聖女リティナ様に止められた。

 渋々ニアノール殿は諦め、散乱した棚の上に座し、椅子に胡座をかいて座っている、聖女リティナ様に、お茶を淹れている。


 そんな状況を見ながら、聖女リティナ様と対面して居るが、何故私をガン見して来るのだ。

 確かに、この姿勢は可笑しいが、ガン見される程ではあるまいて。

 足の踏み場が無いからな。

 小さな椅子に、脚を折り曲げ、丸まって座るしかあるまい。

 居心地が悪い、空間であるな。

 帰りたいのである。


「なーっ、筋肉のおっさん?」


 私は筋肉という名前では無い。

 目を閉じて、聞いてないフリだ。


「なーなーっ、マッチョムキムキマン」


 私はマッチョムキムキマンでは無い。

 大胸筋をピクピク動かす。


「なーなーなーっ、脳筋変態もっこりマン」


 私は脳筋変態もっこりマンでは無い。

 うむ、何も言うまい。


「なーなーなーっ、ヘラクレスのおっさん」


 私はヘラクレスのおっさんでは無い。

 いや違う、私はヘラクレスだ。


「何でしょうか聖女様」


 普段の、白い歯を見せる笑顔では無く、恭しく、失礼の無い様に聞き返す。

 そうせねば、命が危ないのだ。

 なぜならば、聖女の傍で世話をしている、ニアノール殿の殺気が、本気なのだ。


『大声を出したら、斬りますよぅ』


 その様な幻聴が聞こえる程、彼女は目の瞳孔が開いており、実際にメイド服から、ナイフが見え隠れしておる。

 相当苛々しているのだな。


「なんでアンタまで、付いて来たん?」


「ぬっ……」


「ウチが一緒に来て欲しかったんは、お漏らし魔王の、兄ちゃんだけやねんで。筋肉達磨は呼んでへんよ? 今からでも帰らへん?」


 眉間に手を当て、もみもみと。

 この聖女は、子供であるか?

 ああ違う、まだ子供であったな。


「申し訳ないですが、私は帰りません」


「なんでーや?」


「なぜ流君を、王都に連れ出すのか。その理由を聞いておりません」


「ヘラクレスに関係無いやろ?」


「私は、ラクレル村の村長ですぞ。流君に話をするのならば、私も同席致します。何も知らず、帰る訳にはいきませぬ」


 目に力を込めて、聖女リティナを睨む。

 しかし、直様目を逸らした。

 ニアノール殿が、ナイフをスッと出して来たので、命の危機を感じたからだ。


「ぶーぶー。腕治したったやろ? その御返しにええやんか」


「相当な額を、納めましたな」


「……貰うたかな? あーっ、忘れてたわ」


 この聖女……腕一つとは言え、あの様な大金を受け取っておきながら、『忘れてたわ』の一言で、済ませようとしてくる。

 これが聖女か。

 何故聖女なのだ?

 そんな事を考えていたら、またコンテナが大きく揺れ、マッスルホースが暴れだした。


「うぉっ、またかいなっ!?」

「またあの方達は……」


 ナイフを取り出すニアノール殿。

 殺る気満々であるが……何かおかしい?

 

「違う、これはっ────」


 私は、散らばる物を押し除けて、前方に取り付けられた物見窓を開け、外を見た。

 

「あの数っ、魔物の集団であるぞっ!!」


「あー魔物? 大丈夫ちゃうん?」


 聖女はひっくり返ったまま、その口元に、自身満々に笑みを浮かべていた。

 


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