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異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
一章 異世界とはケモ耳幼女が居る世界

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21/414

7話 魔王?違いますニートです.2


11/15 加筆修正致しました。



 灯りに夢中な虫を、誘い込める程、光輝く豪奢な装備に身を包んだ、光るおっさん共。

 そんな奴等が、往来で腰を低くして、魔王のどうのこうのと。

 誰も居ないから、良いんだけど。

 取り敢えず住居と称して、村長宅へ御案内。


 因みに、村長は留守だ。

 許可?

 そんなの要らないよ?

 俺と村長の仲だもの。

 殺し合って、和解した仲だもの。

 

 村長宅に到着して直ぐ、ミルンが俺の膝を枕に、スヤスヤと気持ちよく寝た。

 だから、静かにする為に、無言でおっさん共を見ていたんだ。


 そしたらさ、なんにもね、話もしてないのにね、豪奢な装備に身を包んだ男共が、見事としか言い様の無い────『ジャパニーズ・DOGEZA!!』を、して来たんだ。


 土下座……あるんだ。

 土下座。

 ドン引きだよ。


 その後に、光るおっさんが頭を低くして、意味分からない事を、言ってくるしね。


「どうかっ、どうか私共に、魔王様の御慈悲を頂きたく存じます!!」  


 何だよ御慈悲って。

 頭が痛くなってくるわ。


「それで、アンタ達は誰? 違うな、何者? これも違う……ああ、何をしに来たんだ。こんな誰も居ない村なのにさ」


 聞きたくない。

 聞きたく無いけど、聞かないと、お帰り頂けなさそうな感じなので、聞いてみる。


「はい。私共は、唯一神っ、アルテラ様を信仰する教会の者で…私は神官のザルッ…ザルブと申します。ここ、ラクッレル村にて、神が奇跡をお示しになられた事を知り、急遽っ、この村を、魔王様より返してぇ…頂く為の、ご相談に来た次第で、御座いまして」


「話が長いっ!!」


 凄い脅えながらというか、めっさ震えてるよ、このおっさん達。

 あと、何か失礼だな。

 俺がこの村を、占領したみたいに……占領じゃ無いよ? 殲滅しただけだよ?


「返還を了承して…頂きましたら、おお礼といっては何ですがっ、魔王様の望まれる物をとっ、大司教様より、申しつかってっ、おりっ、おりおります!」


 先に此れを献上したく。と、震える手で差し出して来た、華美な装飾の入った、すげぇ趣味の悪い箱を渡してきた。


「どうぞ……お納め下さい」


 一切顔を上げず、土下座の姿勢のままだ。

 開けろって事か?

 凄い怪しい……けど、土下座だもんなぁ。


「中身見るぞ?」


 えいっと、俺は躊躇い無く、箱を開けた瞬間────この世の全てを包み込む様な、真っ白な光と音が溢れ出し、俺に降り注ぐ。


「あっ、やっぱり罠だ」


 やばい!?

 眩しっと思いながら、眼を閉じた。


 光の中、土下座の光るおっさん共が、ガチャガチャと、立ち上がる音がする。


「ふっふはははっ、馬鹿めっ! この邪悪な魔王めが! その箱には我の為にと、大司教様が固有魔法、"神の審判"を込めて頂だけたのだ! 邪を滅する事に特化したこの魔法、いかな魔王でも耐えきれまい! 滅ぶが良い悪しき魔王よ!!」

 

 何か言ってる?

 耳がキーンって痛いな。

 ゆっくりと、光が消えてく。

 ん? 何も起きてない?

 目をゆっくりと開けて、身体を確認。

 ミルンも確認。

 尻尾も確認モフモフ。

 箱の中を見る。

 箱の中には……ボロボロの……石?


「ふはははっ! 魔王は滅んだ! 聖地を魔王から取り返しだぞ! ふはははっ!」

「やりましたぞ!」

「これでこの地は我ら教会の物!」


「あの──っ」


 めっちゃ騒いでいる。


「これで私も司教! いや、これならば大司教も、夢では無い!」

「おぉっ、おめでとう御座います、ザルブ様!」

「我等は一生、貴方様に着いていきますぞ!」

 

「聴こえてるか──っ」


 めっちゃ騒いでいる。

 あっ、ミルンの耳がペタンって、可愛い。


「早急に王都へ戻り、報告せねばな!!」

「凱旋ですぞ!」

「やりましたな!」

「「「あっはっはっは!!」」」

 


『人の家で何騒いでおるかあああ────!!』



 勢い良く扉が開き、白い歯を見せながら、鬼の形相で、村長が帰ってきた。


 一瞬で鎮まる歓喜の声。


 そりゃあ、筋肉隆々の、クソでかいおっさんが、白い歯を見せて、血管切れそうな顔で現れたら、誰も騒げないわな。


「お帰り──っ、村長」


 俺は挨拶をする。


「「「えっ?」」」


 光るおっさん共が俺を見る。


「ん?」


 村長が光るおっさん共を見る。


「おっ?」


 俺は村長を見る。


「くわぁあああむにゃむゅ」


 ミルンが可愛い欠伸をした。可愛い。


             


 起きたミルンが、俺をよじ登ってきたので、肩車して、淹れたお茶を啜りながら、俺は目の前の光景を見ている。


 さあさあ今回の試合は、村長VS光るおっさん共、異色のエキシビジョンマッチ!!

 その夢の闘いが今あああ──っ、始まった! 

 試合開始だあああ──!!


 村長が一瞬で移動!!

 強烈なボディブローが、おっさんBの鳩尾に突き刺さるぅ!!

 速い! 速いぞ村長!!

 後ろから、おっさんAが襲いかかるが、屈んで避けたぁあああ!

 そのまま脚払い!

 すかさず空中で一回転! 

 踵落としだあああ脳天直撃!

 これは一発でノックアウトオオオ──っ!!

 若干頭が陥没したかあああ!?


 さあさあ、おっさんCが、距離を計りながらああっと、凶器を取り出したあああっ!!

 これは卑怯! 卑怯者だあああ!!

 それでも村長は怯まない!

 おっさんCが、凶器を振り回しながらのヤケ糞の攻撃を避わしつつ、右!右!左!左!右!左!の顔面サンドバッグだあああ──っ!!

 前歯が飛んでいくううう──っ!

 これは堪らず膝から崩れ落ちたあああ──!


 おっと、おっさんBが、腹を押さえながら立ち上がりいいいっ、拳を振りかぶるがあああ残念っ、空振ったあああ!!

 それを逃さず、村長のカウンターが────入ったあああ──っ!!


 試合終了おおおおおおおお!!


 カンッカンッカーンッ。


 俺は、お茶請けの食べ欠けパンを村長に向けて、和かに聞いてみる。


「今のお気持ちをどうぞ、村長!」

「流くん。君は何をやってるんだ」


 額の汗を拭い、村長が睨んできた。

 俺に言われても、どうしようも無い。

 ミルンが俺の肩から降りて行く。


 光るおっさん共を縛り上げる村長。

 それを見て、疑問を聞いてみる。


「腕……何処で盗んで来たんだ、村長?」


 ミルンが光る装備を剥いでいる。


「流君。腕を盗むとは何なのだ」


 呆れたように言われたよ。

 冗談の通じない筋肉め。


「腕、どっかに在庫があるのか、村長?」


 ミルンが光る装備を剥いでいる。


「私は土人形か!?」


 突っ込みがヌルいぜ村長。


「聖女様だ」


「んっ、今なんて?」


「この腕は、聖女様に治して頂いた」


 異世界あるあるの聖女!?

 聖女居るの!?


「こやつ等は、その聖女様のお連れの者達だ。私が聖女様と、面会をしている間に、消えていたがね」


 ミルンが光る装備を剥いでいる。

 尻尾をフリフリ可愛いなぁ。


「それじゃあ……俺に何かしようとしてきたのは、聖女なのか? こいつ等、大司教がどうのこうのって、言ってたんだけど」


「いや、聖女様は関係無いだろう。」


 疲れた顔をしながら、ハッキリ言う村長。


「何でそんな事分かるんだ?」


「会えば理解する」


 村長が、光るおっさん共を縛り上げ終わる頃には、おっさん共は、その輝きを丸ごと全て、失っていた。


「ぴかぴか!!」


 傍のミルンの手によって。


 素材の剥取りだな。

 弱肉強食の、狩のマナーだね。





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