表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界とは愛すべき者達の居る世界  作者: かみのみさき
一章 異世界とはケモ耳幼女が居る世界

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/405

5話 異世界の現実.1

異世界とは

【5話 異世界の現実.1】


 ミルンに追われて、一体どれ程の時間が過ぎたのだろうか。


 俺は今、ボロ屋と川、森の位置から考えて、ミルンが言っていた"村"を探している。

 人種の村。

 獣族は村に入れないと言っていたので、避難所としては、最適でだろう。


「まだ股間が、ヒュンっとなってんじゃん」


 股間を押さえながら森を進むと、ふと、小麦粉の焼けた匂いが漂って来た


「こっちか!?」


 少しワクワクしながら匂いを辿り、光が差し込み森を抜けた先で躓き、目の前の落とし穴に落ちて────そのまま意識が飛んでった。


◇ ◇ ◇


 両親が死んだ。

 その連絡を警察から受けたのは、仕事での受注ミスにより、会社から『お前、クビ』と、解雇通告を受けて、家に帰っている最中だった。


 特別、仲が良いとか悪いとかといった事も無い、ありふれた普通の家族。

 きっとこのまま帰ったら、呆れられた後に、背中を押してくれるだろう。

 そんな普通の家族だ。


 そんな時に、両親の訃報。


 二人で買い物中に、薬物中毒で頭が飛んでいる奴が、母に襲い掛かり、それを護ろうと父が庇って、結果二人共が亡くなった。


 周りの人は、何もせずただ見ていただけ。


 残ったのは、多額の保険金。

 寄って来るのは、マスコミ、知りもしない親族、金を貸してたと宣う糞。

 糞な奴等と何やかんやと争った後、結果全て俺が相続する形に納まった。

 全力で、そうなるように納めた。

 

 結果、独りぼっちの、アラサーニートの出来上がりっと。

 お金があっても贅沢する気も無く、起きて飯食って、糞して、スーパー行って、飯食って、糞して、寝る。


 そんな時ふと、思ってしまう。

 生きているだけの毎日を過ごしている俺は、何も残せずに死ぬのだろうと。


◇ ◇ ◇

            

『おいっ、起きろ!』


 遠くで、おっさんの声が聴こえる。

 俺は薄っすらと目を開けて、直ぐ閉じる。


『あっ、こらっ起きろって!』


 遠くで、おっさんの声が聴こえる。

 俺は薄っすらと目を開けて、直ぐ閉じる。


「起きろって言ってるだろう!!」


 ドンッ────「痛っ、何しやがる!?」


 このおっさん、俺の腹に何やったっ、糞痛いしっ、痣になったらどうすんだ。


 俺は身体を起こし、周りをみる。

 前には鉄格子。

 側面には壁。

 後ろにも壁。

 ニ畳程の広さに、角には小さな臭う穴。


「……牢屋じゃん」


「ようやく起きたか。あと少しで村長が来る。お前が何処の誰かは分からんが、失礼の無い様にしろよ!」


 おっさんが、棒を俺に向けながら注意しきたけど、さっきの痛みっ、その棒で突きやがったのか。


「おい、Mに目覚めたら、責任取らせるぞ!」


「Mって何だ……っ、尻をこっちに向けるな! 気持ち悪い!」


 Sに目覚めても責任取らせてやる。


 俺は心の中でそっと呟いた。




 村長とは、読んで字の如く村の長と言う。


 イメージとしては、杖をつき、棺桶に下半身を突っ込んでいる様な、よぼよぼしおしおの、おじいちゃんだ。


 目の前の生物を見る。


 目算二メートルの高身長。

 短髪で刈り上げられた頭。

 筋骨隆々でたっぷりと日焼けした肉体。

 歯がやたら白く常に笑顔を向けてくる。



「やあ、はじめまして!」


────ムキィッ(手を後方で組み)


「私がこの!!」


────ムッキィッ(爪先立ちで)


「ラクレェル村のぉおおお!」


────ムキッムキッ(大胸筋が歩いている)


「村長…ふぅぅぅむんっ!!」


────ムキッムキッ(ゆっくりとポージング)


「ヘラクレスゥゥゥウ! ヴァント!!」


────ムッキィ!!(両腕を前に持ってきて)



 俺は牢屋に居る為、逃げる事が出来ない。

 だからこそ、余計な事は言わず、無心に徹さなければならない。

 でも、コレだけは、ハッキリ伝えよう。


「気持ち悪い奴だ!!」


ピンポンパンポーン(上がり調)


レベルが2上がりました(気持ち悪い奴だ!)


ピンポンパンポーン(下がり調)


            


 俺は牢屋から出されて、なぜか村長宅にお邪魔している。


「あっはっはっは! あんなに真っ直ぐに、気持ち悪いと言われたのは、妻以来だぞ!」


「あーっ、はいはい。ご馳走さん」


 気持ち悪い筋肉の癖に、嫁さん居るのか?

 嫁さん……凄い奇特な人なんだな。


「改めて。ラクレル村の村長をしている、ヘラクレス、ヴァントだ」


 普通に握手を求められた。

 若干汗ばんでるっ、触りたくねぇ。


「俺は、小々波、流だ。流で良い」


 嫌な気持ちを、顔にも態度にもだしながら、握手をする……やっぱり生温かい。


「はっはっは、宜しくな流君!」


 ────ミシィッッッ!!


「手を握り潰さんばかりに握ってくんな! 痛てぇよ離せこの野郎! 湿ってるんだよ!」



 俺が何故、あの牢屋に居たのかの理由を、村長が話してくれた。

 俺は、村人が作った罠にかかり、頭から突っ込んで、尻を半分出した状態で、見回りの人達に見つけられた。

 様相から、他国の間者じゃ無いのかと、念の為牢屋に入れられていたらしい。


「で、何で牢屋からだしたんだ。間者かどうか、普通調べるだろ?」


 俺の問いに村長はこう答えた。


「弁明をする訳でも無く、私の自己紹介に対して褒める事もせず、逆に貶してくるのだから流くん、君は他国の間者では無い」


 歯をキラッとさせるな。

 仰る通りで、間者では無いな。


「しかし、この国の人種と言う訳でもない。さて、流くん。君は一体何者なのかね?」


 異世界人です!

 そう言っても、信じてくれますか? 

 無理? 

 無理だよねーははは。


「ここが何処だか分からないし、何で来たのかも知らん。俺は唯のおっさんだ……」


 村長が、何を考えているのか分からない笑顔で、ずっと見つめてくる……暑苦しい!


「ふむ。一先ずは、そう言う事にしておこうか! 見た感じ、悪意がある訳では、無さそうであるしな!」


 はっはっは!と笑いながら、村を見て回っても良いとまで言われ、なんとか追求されずに済んだ。


「行く所が無ければ、村の出入り口の直ぐ近くに、空家がある。そこを使うと良い!」


 住む場所まで用意してくれんの?

 この村長、何を考えてんだ?


         

 この村の名前は、ラクレル村。

 国の名前は、ジアストール国と言うらしい。

 王都まで馬車で3日。

 ラクレル村は、家屋が30戸、人口凡そ100人程の、そこそこ大きな村だ。

 ラクレル村は、高さ五メートル程の木の塀で覆われており、いわゆる物見櫓と思われる建物が、村の四方に設置されていた。


「異世界って言っても、のんびりしてるなぁ」


 散策がてら村の中心に来たのだが、さっきからずっと、村人達の視線を集めている。


 聞き耳を立てると────「ふむふむ」


 見慣れない顔。

 赤い服。

 赤いわ。見慣れない。

 どこか怪我。

 頭がおかしい。

 頭おかしい?

 おかしいのね。


 聞こえてますよ? そこの奥様方。


「誰の頭がおかしいだゴラァアアアアアア!!」


 俺は颯爽と村長宅へ戻り、お願いする。


「村長! 服を脱げ!!」


「何を言ってるのだ流君!?」


 村人A装備セットを手に入れた。


 うん、さっきまでとは違ってそこまで視線を集めていないな。


「それじゃあ、使っても良いって言っていた空家を、見に行くとしますか……?」

 

 空家の場所が分からん。

 出入り口近くにあるって言っていたよな?

 無いぞそんなもん。


「どうした、そんな所で立ち止まって?」


 俺がそわそわしていたので門番さんが来ちゃいましたね。


「すみません。村長から、空家を使って良いと言われて、見に来たんですけど。空家って何処にあるんですか?」


 門番さんに丁寧に聞いてみる。


「空家?」


 門番さんが首を傾げ、周りを見ている。

 空家無いのか?


「あぁ…あの家か!」


 良かったあるのか。


「ほら、あれだ」


 門番さんの指の先、確かに建物はある。

 あるんだけど、何でアレ?

 アレって、普通に邸宅って言うよな。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ