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15話「再会×巨木の奥に眠る遺跡」

前回登場した可憐な少女セラとの再会。

そこで提案される次なる冒険。

 アルマとレイは、一心不乱にサイロの元へ走った。

 呼吸が荒くなる。

 鼓動が激しく。叩きつけられる。


 アーセナル建物内。レガリア測定室。

 横たわるサイロが目に入る。


「サイロオォー!」


 胸部には包帯が巻かれていた。

 摘出された。血濡れの銃弾。


 無事なのか――生きているのか。不安と恐怖がアルマの脳内を過ぎる。


 包帯が赤く染まっている。

 こちらを見るイゼンが静かに頷く。安堵の表情から、サイロが一命を取り留めたと理解する。


「サイロ、無事なのか?」


「はい、体内に入っていた銃弾は、今全て摘出を終えたところです」


「良かった…サイロが無事で…」


 声に反応したのか、弱々しくサイロの目が。ゆっくりと開く。 

 飛び込んでくる、アルマとレイの顔。

 

「おぉ…アルマ、レイ、終わったんだなぁ、アーセナルを守ってくれてぇ、ありがとうな」

 

 サイロは声を。振り絞りながら言った。


「何言ってやがる、元はといえば…俺達のせいだ…すまねぇ」


「僕と兄さんのせいで――ごめん」


 二人は唇を噛み締める。

 拳を強く握る。肩が震える。


 アルマもレイも、言葉が出ない。自分達のせいで――サイロが深手を負ってしまった。


 ――巻き込んでしまった。未熟な自分達を許せないのだ。


 サイロは、優しい眼差しを二人に向ける。

 ほんの僅かに、口角が上がる。


「なんてぇ、顔してやがる…お前らのせいじゃねぇ…俺が油断したぁ、それだけだろうが」

 

 アルマの目が見開いた。

 ――目に熱いものを感じる。


「……サイロ――すまねぇ、生きててくれて、ありがとう」


「…次は、絶対もっと上手くやる」

 

 胸の奥が――締め付けられる。

 

 悔しい。俺達はまだ、誰かを守る為の戦いが――できていない。


「すぐ良くなるからなぁ…待っとけよぉ」

 

 サイロはゆっくりと目を閉じる。

 ――寝息が。聞こえる。


「レイ、俺達もっと強くならねぇとダメだな」


「うん」


 二人の視線は眠るサイロを見つめていた。


「ここに居たらサイロを疲れさせちまうな、俺達も宿を取りに行くか」


「そうだね」

 

 コツ、コツ。

  

 規則正しいヒール音。やり取りを見守っていたイゼンが近寄ってくる。


「アルマ様、レイ様、この度はアーセナルを守ってくださり――ありがとうございました」


 イゼンは。深々と頭を下げる。


「いや、元々…俺達のせいみたいなもんだ、気にしないでくれ」


「もし、宿をお探しであれば、アーセナルが保有している冒険者の宿がありますので、そちらをご利用ください」


「流石に、これ以上はタダで世話になれねぇ、“アレ“を渡してくれるかレイ」


「うん……イゼンさん、一つお願いがあるんだ」

 

 レイは、鞄から“ある物“を取り出す。

 イゼンの前に、差し出す。


 【大鬼の毛髪】

 そこら辺の刃では、切ることすらできない。

 そう――キュクロの毛髪だ。


「これを、宿代にあてて、冒険者の宿をお借りするってのはどうかな?」


 キュクロの毛髪ともなれば、繊維にしたり楽器の弦にしたり様々な需要がある。

 頑丈さが高い事から、売れば高額な値段がつく代物だ。


「アルマ様…レイ様…承知しました、こちらは宿代として受け取っておきます、宿は商店街を抜けて、宿が立ち並ぶ、宿街にあります」


 イゼンから帝都、その周辺の地図を受け取る。

 初めての帝都ともなれば、地図なしでは目的地に辿り着く事すら難しかっただろう。


「何から何までありがとうな」


 イゼンに見送られながら、馬車に乗り込み宿街を目指す。


――


 夕暮れ時。

 アーセナル前の大通りを、真っ直ぐ進む。

 道端には、宝石、食べ物、服、色々なものが並んでいる。商店街だ。


 そして――宿の前。


 【冒険者の宿シーカーキャンプ


 木製の看板が、夜風に揺れる。

 ギィ、と小さく鳴る。


 灯りが、暖かい。

 外の喧騒とは違う、落ち着いた空気が流れていた。


 馬車が止まる。


「ここかぁ…」


 アルマが見上げる。

 どこか、ホッとしたような顔だった。


「入ろう」


 レイは短く言う。


 扉を押す。


 カラン――


 鈴の音が鳴る。


 中は、賑やかだった。

 酒の匂い。焼いた肉の匂い。

 笑い声と、怒号と、椅子の軋む音。


 さっきまでの戦場とは、別の世界のようだった。


「いらっしゃい!」


 店主が声を張る。


 アルマとレイは顔を見合わせる。


 ――日常だ。


 さっきまで、命のやり取りをしていたのに。

 胸の奥が、少しだけざわつく。


「部屋、二つ」


「はいよ、イゼンさんから飛ばされてきた連絡ワシの手紙で内容は知ってる、二階が宿になってる、部屋は好きに使ってくれ」


 鍵を受け取る。


 コツ、コツ


 階段を上る。足が、少し重い。



 部屋の前。古ぼけた木製の扉。

 レイは、扉を開けて室内に入る。


 部屋の真ん中には窓が一つ、窓を挟むようにベットが二つ、ベットの両脇に木製の机。机の上には、ランタンが置かれている。

 

 暖かい光だ。

 ふと、窓の外へ視線を向けると暗くなっていた。


 扉を閉める。

 ――静かだ。


 外の喧騒が、遠くなる。

 持ってきた庭おろし。二人はベッドに、腰を下ろす。


 少し硬い手触り。

 ギシ、と音が鳴る。


「はぁ……」

 

 アルマが、大きく息を吐く。

 体から力が抜ける。

 そのまま、天井を見上げる。


「……なぁレイ」


「なに」


「俺さ」


 言葉が、詰まる。


「……弱ぇな」

 

 拳が、自然と握られる。

 サイロの姿が、頭から離れない。


 血。

 倒れる音。

 遅かった。


「守れなかった」


 ボソッと、漏れる。

 レイは、少しだけ目を伏せた。


「……うん」


 否定しない。それが、余計に刺さる。


「でも」


 レイが顔を上げる。


「兄さんは、ちゃんと戦ってた」


「僕も」


 短く言う。それ以上は言わない。

 でも、それで十分だった。


 アルマは、目を閉じる。

 拳を握る。


「強くなる」


 小さく、呟く。


「絶対に」


 空気が、少しだけ変わる。決意が、そこにあった。



 コンコン


 扉が鳴る。

 二人の視線が向く。


「……誰だ」


 応答はない。

 アルマが立ち上がる。

 ゆっくりと扉に近づく。レイに目で合図を送る。

 レイは扉の横に立ち、軽く剣を握る。


 恐る恐る、扉を開ける。


 ――そこにいたのは。


「……あなたたち」


 ローブを被った女。

 見覚えがある。


「セラじゃねぇか」


「うん、だから物騒なものをしまって」


 セラはレイの方へ、視線を送りながら言った、

 フードが、ゆっくりと下がる。

 白い肌、淡い白銀の髪、蒼銀の瞳。


「どうやって、ここが分かったんだ?」


「あなた達の馬車と身なりを聞いて回ったら、すぐに分かったわ」


 セラは静かに、二人を見つめる。


「入ってもいい?」


「……ああ」


 静寂。


「あなた達、無事にタニアの中に入れたのね」


「あぁ、セラのお陰だ、あのオルグスって奴が色々良くしてくれた」


「そうなのね、それは良かったわ」


「セラさん、オルグスさんとはどういう関係なの?」


「まぁ、元同僚みたいなものね」


 セラは、アルマとレイを見渡しながら少し驚いた。


「二人とも、凄い防具を手に入れたわね」


「そうなんだよ、アーセナルのサイロが良くしてくれたんだ」


「そうなの、じゃあ、なぜ浮かない顔をしてるの?」


「それは…」


 誰かに聞いて欲しかったのだろう。二人は話し出した。サイロのこと、カマンのこと、謎の存在のことを。


 セラは顎に手をやり、考えこむように話しだした。


「謎の存在、気になるわね」


「そうだね、現れるまで兄さんと僕が全く気づかなかったんだ、只者じゃないよ」


「俺達がもっと強ければ…サイロもよ、傷つかなくて済んだんだ」

 

 アルマの拳が握り込まれるのを、セラは見逃さなかった。


「あなた達の戦いを見たわけじゃないから、どれくらいの強さなのか分からないけど…もし強くなりたいなら、私から提案があるの」


「提案?」


 少し考えたのち、セラは静かに口を開く。


「このタニアから少し離れた場所に完全攻略されていない、遺跡があるんだけど…一緒に攻略しない?」


「遺跡…?」


 アルマは少し興味がありそうだ。レイは少し考えているようだった。


 セラさんとは、帝都までの道中を一緒に過ごしたくらいの関係だ。なのに何故、オルグスの件といい僕達の為に良くしてくれる…?


 レイの疑念の矛先がセラに向く。

 セラはレイの疑念を察したのか更に続ける。


「ま、私もタダで遺跡の場所を教えるつもりはないわ、遺跡で手に入れた素材の七割は貰うわ」


「七割!?」


 思わずアルマの声が上滑る。


「えぇ、あなた達にはタニアまで送って貰った恩もあるし、話を持ちかけただけよ」


「ま、まぁ仕方ねえ、今は地図買う金も勿体ねぇしな」


「うん、行こう」

 

 レイは行く事にした。しかし、胸の奥の疑念に明確な答えは見つからないままだった。


「決まりね、じゃあ薬草や食料…まぁ一週間分ってところね、あと帝都の周辺地図を見せて」


 セラは広げられた地図に集合場所の印をつける。


「じゃあ、明日の昼までに印の場所に来て、門の外で落ち合いましょう」


 セラは、そう言い残し部屋を出ていった。


「兄さんどう思う?」


「んー?セラは悪い奴じゃねぇ、大丈夫だろ」


「そうだね」


 長い一日が終わり、ようやく二人は眠りにつく。


 朝。


 アルマとレイは商店街で、探索用に食糧や薬草を購入した。


「よし、これで準備は大丈夫だ、門の外へ向かおう」


 レイは地図を広げた。門から少し離れた場所に印が書き込んである。

 アルマは地図を覗き込む。


「結構、離れてるな」


 門を出て、来た時とは反対側の森の奥を進む。

 腰まで伸びる草。巨大な木、ツタが巻き付いている。


 緑生い茂る森の中。

 

 セラが立っていた。


「二人とも準備してきてくれた?」


「もちろんだ!色々買ってきたぜ!」


 レイはアルマに視線を向ける。

 どうやら一日寝たからか、アルマはサイロの一件が吹っ切れているように元気だ。


「ところで、遺跡の入り口はどこだよ?」


「まだ、この先よ」


 奥に進むにつれ、背丈の高さまで生い茂る草。

 三人は草をかき分けて進む。


 ――そして。


 辿り着いた。


 巨大な木。

 巨大なツタが巻き付いている。


「ここよ」


「とんでもない大きさだ」


 巨木を見上げるレイ。


 大きすぎて空が見えない。

 なんて巨大な木なんだ。


 巨人を遥かに超える、巨大な木。

 高さは百メートルを超えている。

 根の部分に立つ、アルマとレイが粒のように見える。


 あまりの大きさに言葉を失う二人。

 セラがゆっくりと口を開く。

 

「この巨木の根の奥に、遺跡の入り口があるわ」

 

 アルマとレイは、正面に視線を落とす。


「この、でっけぇのが根っこ!?城の壁くらいあんぞ!」


 目の前に大きく横たわる根は、まさに自然が作り出した城壁のようだった。


「進むわよ」


 セラが先導し、巨木の根の隙間を進んでいく。

 

 幾重にも折り重なる巨大な根の中は薄暗い。

 そして、土の匂いがする。

 日が当たらないせいか、少しひんやりする。


 ――どれくらい進んだだろうか。


 到着する。


 巨木の根の最深部。


 根に囲まれているが、目の前には土の壁が見える。その土の壁に大きな穴が見える。

 穴を塞ぐように、鉄格子の扉がしてある。根がのし掛かっている影響か、鉄格子の扉は少し歪んでいる。


「この扉の先よ」


「うぉー!小屋の下に滑り落ちて行った以来だなあ!」


「あの時は…地下なのにとんでもない広さの世界があったよね」


 三人は鉄格子の扉を潜り、土の壁を掘り抜いた薄暗い穴を進んでいく。


「まるでトンネルのようね」


 セラは松明で周りを照らす。

 暗闇に、光が刺す。


 三人は薄暗いトンネルの中を歩き続ける。


 ――あっという間に時間が過ぎた。


「お!光が見えるぜ!」


 正面から――光が差し込む。


 トンネルの終わり。

 遺跡の中に。足を踏み入れる。


 外。


 崖に立つ。


――その瞬間。


 三人は目を見開いた。


 世界が変わる。

 

 吹き抜けていく“風“。

 風圧で前髪が、後方へ引っ張られる。


 正面、上、下。周囲には。


 空しかない。


 自分達が立っている崖。背中には歩いてきたトンネル。足元の崖は立っている場所部分にのみ足場がある。

 まさに――断崖絶壁だ。


 目の前に飛び込む。上空へと続く何本もの巨大な木と枝。

 

 アルマは巨大な木の根元へと視線を向けた。


「うぉー!全く地上が見えねぇ!一体、この木どんだけでけぇんだ!」


「さっきまで居た世界とは分離されたような世界ね」


 生まれた時から、この世界には遺跡があり遺跡の中には、もう一つの世界がある。


 この世界の当たり前を、頭では分かっていても――理解が追いつかない。

 まるで次元が切り離されたように。広大な世界が目の前に広がる。


 レイは目の前に生えている、巨大な木々を見つめる。

 巨大な木の枝の先には、部分的に草が生い茂っている。まるで、“鳥の巣“が沢山あるように見える。


「とりあえず迷わないように、小まめに枝に印を入れながら進みましょ」


「この巨大な鳥の巣みたいな枝草を足場にすれば上にいけるかもね」


「じゃあ、頂上を目指すって事でいいのか?」


 アルマは聳え立つ木々の、遥か上空を見つめる。

 

 まるで空の一部から突如、切り離されたような世界。

 

 雲の上まで続く巨大な木々の先。

 

 一体、その先には何があるのか。



――遥か上空。



 地を揺るがすような。“巨大な咆哮“。



 巨大な木々が震える。


 大気が震える。


 “巨大な何か“が木々の間を飛び回る。


 三人は。まだ知らない。



 巨木の頂上に――“君臨する古代生物“の存在を。

空の一部に迷い込んだような世界。

この木々の先に一体何が存在するのか。

三人を超絶最難関の試練が待ち受ける。

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