真珠
教会の傍らにある暗い森の中に煉瓦造りの小屋がある。暖炉が炊かれた部屋にはテーブルを挟んでソファが向かい合っており、それらに座った魔女と従者が話し合っている――
「彼女はもう霊として生きるしかないわ」
「…なんでそんなことになったんですか?」
「自身を操る線を断って自由になりたいからよ」
「わかってますよ。彼女は因果を断つ契約をあなたと交わした。妖女の仲間入りです」
「ならばそれでいいじゃない」
「よくない。よくないですよ」
「何が不満なのかしら?」
「彼女をあなたは救えたはずです」
「いいえ。そのはずはない」
「彼女があなた方の仲間入りをする必要はなかった」
「必要はあったわ。彼女から求めたのだもの」
「死人も同然に黄昏を彷徨うのが彼女の意志でだとも言うのですか?」
「逆に問うわ。彷徨うのをやめないのはなぜかしら?」
「諦めがつかないからでしょう?」
「違う。日の中で諦念を極め全てを諦めている。彼女にあるのは一つの意志よ。天からの呼声に答えているだけ」
「むなしいじゃないですか……」
「彼女は直に次第に幸せになれるわ」
「我が弟は一人の少女と結ばれていたんですよ? なのに彼女は死ぬはめになったのか」
「小鳥達は眠らないわ。夜の前に日は全てを圧し潰すけれどだから誰も眠れないのよ。なぜかしら?」
「知りませんよ、戯言は大概にしてください」
「そうね。じゃあね。川の話をしましょう。終わりなき川の話を」
「その話は聞きました!」
「……。怒鳴ることはないじゃない」
「あなたのような人間は嫌いです」
「あらあら。喧嘩腰だこと」
「でもあなたのことは尊敬しています」
「わかってるわ、それはね」
「わかってますよね? 私だって自身がおかしいって思ってますよ。私達を養ってもらっていましたが、文句はいいたい。見限られただけで文句を言ってはいけないのですか?」
「私はまだ見ているわ。見限っていない」
「見ているなら救ってください」
「見限ってるならばあの世に送ってる。あなたには、あの子の話をしたら殺すとはいったけれどね」
「なぜほっとくのですか?」
「あの娘は教室に何かを置き忘れたのよ。魂に変わる何かを。だから教室に取り付いているの」
「私の弟は今どこにいますか?」
「川に向かっているわ」
「私の弟に何をさせているのですか?」
「何もさせてないわ」
「見捨てる気ですか?!」
「私はあなたの弟さんに何もするのもさせてないわ。何もするなをさせているわ」
「あなたは彼に何をしたのですか?」
「仕事を与えただけよ。私はでも…周りを見ろといったわ」
「なぜそのようなことをしたのですか?」
「爆ぜたのは仕方がないわ。彼女は針をさしたように彼は全身で感じていたわ」
「何を言っているのです?」
「彼女は押し入れに閉じ込めた。彼は外を見なくなった。まるでもぐらの結婚式よ。少女の方としては葬式かしら?」
「ですから何が言いたいのですか?」
「天国に声は届かないわ。鉄が冷えきっている。芥子のにおいは眠りを呼び覚ます」
「もっと分かりやすく話してください」
「終わらなき川の話をしましょう。川は終わりなく流れていく」
「聞きました! たぶんあなたの言っていることはわかってますよ。混乱させないでください!」
「落ち着きたいなら私を信じて。私を信じて落ち着きなさい」
「落ち着けません!」
「何が不満かしら?」
「私が言いたい文句とは、あなたが勝手にことをすすめることです。何をしたいのですか?」
「天に至るのよ」




